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『破天荒フェニックス』レビュー

毎日投稿がしばらく空いてしまった。ここから気合を入れて、毎日投稿を再開したいと思う!

『破天荒フェニックス』は、破産寸前のメガネ屋「オンデーズ」の経営再建に臨む田中修治さん(オンデーズ社長)の実話をもとに作られた“フィクション“であり、「小説」形式なのでとても読みやすかった。
しかし、とにかく長く、どのエピソードも手に汗握る展開で読み飛ばすこともできず、数日かけて熱中して読み込んでしまった。
本書だけでなく、カンブリア宮殿や、YouTubeでの田中さんのインタビューもいくつか見た。
そこで感じたのは、田中さんは、

・ 若い時から、“事業経営“というものを、息を吸うようにしている
・ 他人から見れば“破天荒“、“リスキー“であることに向き合っても、ストレスや不安にならない
・ しかしその根底には、「根拠のない自信」や「楽観性」以上に、自分のリアルな経験に裏打ちされた「自信」や、「具体的な勝算」が存在している

という経営者だということ。

一見「破天荒」「無謀」「ギャンブル」「運がよかっただけ」に見える彼の経営の裏側にある、「根拠」「戦略」「思考」について、まとめてみたいと思う。

1. この本を一言で

20代に様々なビジネスを経験した田中修治が、人生をかけた大勝負として、借金14億を抱える破産寸前のメガネ屋「オンデーズ」を買い取り社長となり事業再生を目指す話。
「資金ショート」が毎月訪れる、という厳しい現状に直面しながらも、「世界一のメガネ屋になる」という目標に向けて、大胆だが強烈な打ち手を繰り出して、会社を着実に成長させていく過程が、本人の言葉で生々しく語られている。

2. 3つのポイント

① 会社経営では「資金繰り」が生命線
会社経営・起業と聞くと、ビジネスモデルやマーケティングを最初にイメージしがちだが、事業活動を続けるためには「資金調達」「資金繰り」が欠かせない、たとえ黒字でも「資金ショート」が命取りになる(黒字倒産してしまう)ということが1冊を通じて刷り込まれるように納得させられた。
下の図におけるピンク色「運転資金」が必要、ということである。

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14億の借金を抱える「オンデーズ」は、銀行への返済に追われる状況で、融資を受けることはかなり困難、という状況だった。

そこで「オンデーズ」は、
・ 支払い延期
・ 返済延期
・ 株式発行により出資を募る
など手を打ちながら、時には事業売却の道しかない、という状況に追い込まれながら、なんとか倒産を免れつつ、大胆な海外投資により事業を成長させ銀行からの信頼を回復させていった。

② 「大胆な選択」「無謀なビジョン」を成功に導くのは、経験に基づく「現実主義」
田中修治は、大胆かつ無謀とも思われる選択を繰り返し、倒産寸前の「オンデーズ」を業界TOPレベルの会社へ成長させていった。
1つ1つの選択や発想は破天荒で、他人から見ると「危険な賭け」に見えるが、その裏には、

① 勝算を確信できる現実的な根拠
② 選んだ「選択」を「成功」へ導くために、具体的な策を打てる、という自信

の2つがあることがわかる。

①は、「全体観」である。
たとえば、

「14億の借金がある会社を買収して経営する」
⇨ 14億の投資を受ける、ということはそれほど価値があるということ。このような会社をゼロから個人で作るのは難しい。0円で社長になれるのは大きなチャンス
「売り上げ20億を40億に倍増させる」
⇨オンデーズの売り上げを20億を、「1時間あたり」「1店舗あたり」に換算すると、「1時間に1本」という計算になる。逆にいうと、「1時間にもう1本だけ多く売る」ということができれば、売り上げ2倍になる。

大胆に見える目標だが、デタラメではない計算根拠に裏打ちされている。

しかしだからと言って、「1時間あたり1本売れるとしたら・・・」という積み上げで掲げられた「売り上げ2倍」という目標ではないことがミソだと思う。
「売り上げ2倍くらいにはしたいよね」というビジョンが先にあり、それを成り立たせるためのロジックを、頭がちぎれるくらい考えて「現実」に変えていく、という発想なのだろう。

「可能/不可能」という境界は、絶対的なものではなく、それを「可能」する力があればあるほど、「実現可能」の領域は広がっていく。
そして、田中さんは「この世に不可能なものはない」という感覚を持っているのだと想像できる。
それは裏返せば、「どんな難度の高いチャレンジも、それを乗り越えるための戦略と打ち手を自分の中から捻り出せる」という自信がある、ということなのだろう。

②は、「具体を実行し切れる力」である。
これは、

・ 過去に直面した「絶望的な状況」とそれを乗り越えた「成功体験」があることによる自信
・ 「全てのこと(他人に任せている全ての業務)を1度は自分で経験したことがある。いざとなれば自分1人でうまく回せる」という細部のコントロール可能性や勝ちパターンが具体的に見えていること

という、「成功体験」に裏打ちされる自信が横たわっていることがわかる。

③ 「人」へのこだわりと見限り
田中さんは、「人」を大事にするが、同時に「やる気のない人」に対してはとても冷徹である。
そこには、

・ やる気のある人を、スキルや知識の面でサポートすることはできるが、やる気のない人のやる気を出すことはできない
・ やる気のない人に構っていても時間が無駄

という考えがある。

やる気のない人に1人1人向き合って「やる気」を上げようとはしない一方で、「組織全体」としてやる気を出すためのポイントはしっかり掴んでいる。
それは、「結果を出す」こと。
会社全体の雰囲気が悪くても、結果が出た瞬間に風向きが変わる。前向きになる社員が増える、という力学をつかんでいるように思える。

メンバーからの風当たりが厳しい時こそ、自分の信念を曲げて阿るようなことはせず、最速で結果を出すことにこだわることが、結果的に組織全体のマインドをポジティブに変えることにつながるのだ。結果を出し続けるリーダーが、強いリーダーなのだ。

3. 個人的に刺さったところ

田中社長が大失敗して、すべてを諦めようとする場面がいくつかある。

・ 社運をかけた新店舗、高田馬場店に客が全く入らず大失敗した時
・ 資金ショートを回避できず、オンデーズが買収されてしまいそうになる時
・・・

こういう時に限り、周りのメンバーや取引先の社長が、文字通り「自分の人生をかけて」救ってくれる。
「運は準備している人にやってくる」
という言葉があるが、自分ではどうすることもできないピンチに遭遇した時、「この人に賭けてみたい」「この人を助けたい」と強く思ってくれるたった1人の存在が、そのピンチから救ってくれるのだと思った。

4. 最後に

田中さんはまさに「破天荒」な「不死鳥」である。自信に満ち溢れ楽観的。どんなピンチな状況でも、大胆なアイデアで乗り越える。
でもそれは彼が、根拠のない自信家というわけでも、生まれつきの天才肌というわけでもないことがポイントだと思う。

過去の経験=「どん底の失敗経験」×「華麗な成功経験」

この振り幅の大きさと経験の数がすべて「自信」となり、次の大きな挑戦への原資となり、まさにギャンブルのように倍々ゲームで大きな成果を生んでいくのだろう。

成功でも失敗でも糧になる。「自分にとっての限界」を超えた次の1歩をどれだけ大きく踏み出せるかが、「短い人生でどこまで大きなことを成し遂げられるのか?」という命題に対する重要な変数になるのだと思った。

明日も引き続き田中さんの著書、『大きな嘘の木下で』を読みたいと思います。


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