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LINDBERG XVの新品最終在庫を買った

題名通り、LINDBERGの最後にリリースしたLINDBERG XVを先月に買ってしまった。新品では最終在庫であったようでプレミア価格となっていて、なんと、そのお値段は?

9,477円也

うおー❣たけー❣

ちなみに、LINDBERG XVの収録曲は、2023年12月現在、YouTubeで全て聞けるので、あえてCDを購入する必要はあまりない。
でもせっかくなので、聞いてみた各曲の感想などを綴ってみようと思う。
また、このLINDBERG XVは過去のLINDBERG曲の続きを描いた歌詞が多いらしいので、どの過去曲の続きなのかも予想してみたい。


Teenage Blue

名曲揃いのLIDBERG IVの中でも屈指の名曲「SUNSET BLUE」のその後を描いた曲と、公式でも発表されている。

「SUNSET BLUE」と聴き比べると、渡瀬マキの声があまりに弱々し過ぎて、当時のファンには悲しいものがあるが、これはLINDBERG XIVとLINDBERG XVの全曲に言えることなので、もうここには書くまいと思う。

結局「SUNSET BLUE」の二人は結ばれなかったわけで、そりゃまあそうだよなと思うが、曲の中の登場人物なんて聴き手からすれば架空の人物なんだから、せめて曲の中だけも結ばせてやれよ、とも思ってしまう。
「SUNSET BLUE」に比べて歌詞の雰囲気も軽い感じなっているのは、渡瀬マキの歌詞作家としての筆力が落ちたわけではなく、登場人物の年齢が上がって余裕が出たのを表現しているのだろう。

ドーナツ ラブ

恋愛経験の少なそうというか、あまり頭がよろしくなさそうな女子の失恋を描いた歌。
特に過去作の続きを描いたようには思えないのだが、ノリはLINDBERG VIIIの「水着とBeachとBoys」や「どうしてこっち向いてくれないのかな」に近いものを感じる。

誕生日にドーナツにロウソク立ててお祝いしていたり、「スゴク恋だった」と、普通であれば「すごく好きだった」と書けばいいものを、わざとバカっぽく書いている歌詞に何か意図があるのだろうけど、筆者には分からずじまいだったので、何も言う事なし。

It's too late

シングルリリースされた最後の曲

某個人サイトで悪い評価をつけられていたが、個人的にはそんなに悪いとも思わない。
おそらく、渡瀬マキのソロアルバム「double berry」に収録されている「Nobody changes your mind」のその後というか、同じ状況を数年経って改めて作り直した曲と思われる。

YouTubeのコメントにも書いたが、仮に同じ場面でも「Nobody changes your mind」が感傷的で衝動的なのに対して、こちらはだいぶ冷静で分析的な歌詞になっている。

「電話しても出てくれないから来ちゃったんだ」ってことは男は電話で一方的に別れを告げて、その後は電話にも出なくなったのだろうと思われ、さらにバスまで乗ってこの男性の元を訪れても「もう好きじゃない」とはっきり言われてしまい、この女性は踏んだり蹴ったりの酷い扱いを男から受けて、終いには女性の方も「来なきゃよかった」とまで漏らしているのだが、それでもまだ好きらしい。

この辺りは、LINDBERG IXのヒットを最後に急激に人気を落としてしまった、LINDBERGがファンから受けた仕打ちとも、どうしても重ねて見てしまう。

それでも、相手への恨みつらみを一切口に出さないのが、渡瀬マキ作詞の特徴だ。渡瀬マキは、曲内の歌詞では自分の環境と周囲の人間から、自分がどう思ったが、どうしようとしたいかしか語らない。
相手がどうあるべきか、相手がこうだった、さらには世の中こうあるべきだ、こんなもんだということはめったに言わない。
渡瀬マキはインタビューの中で、LINDBERG中期の代表曲の一つである「GAMBAらなくちゃね」という曲についてこのように語っている。

先方から“頑張れ”というメッセージ、ワードを入れてほしいという要望があったんですね。でも私としては一方的に頑張れとは言いたくなかったので、「“頑張れ”という言葉は使いたくない」ってディレクターを困らせたんですよ。それでいろいろ考えた結果、“頑張れ”とは歌えないけれど、“頑張らなくちゃね”だったら歌えるなって。

【インタビュー】LINDBERGが30周年のアニバーサリー・ツアーを開催! 渡瀬マキ「すべての年代の人に楽しんでもらえるライブにしたい」

他人には「がんばれ」という、応援歌としてはあたりまえの言葉ひとつかけられないのが渡瀬マキの詩なのだ。
できるのは「がんばらなくちゃね」という自分の姿をみせることだけで、それを見たリスナーがどう思うか、どう思うべきかまでは押し付けようとはしないのだ。
渡瀬マキがLINDBERG解散後、天然キャラタレントとして活動したが、天然キャラも一皮むけばこれほど繊細なパーソナリティを持っていた。
このあたりが、LINDBERGの活動を通して音楽性を大きく変えながらも、変わらずに一貫性を保った特徴の一つなのだが、90年代の競争激しい日本の音楽業界で比較的長い期間活動を続けながらも、この繊細さがメジャーになり切れなかった原因だったようにも思う。

適齢期

LINDBERG IIIの「MODERN GIRL」と「YOU BELONG TO ME」のその後のように思える。
男性側の歌詞なので「YOU BELONG TO ME」のその後ではなかろうか。多分、この2曲以外に友達以上恋人未満の男女関係を描いた歌詞のLINDBERGの曲はないのでは。

渡瀬マキと同年代の男女とすると、20歳前後で際どい関係までいったけど、結局進展ないまま適齢期の30歳も過ぎちゃったってことか。
サビで「なんだかんだいっても結局は ボクたちたぶん似たもの同士」と言っているのが、未練がましい。

「女性の恋は上書き」と誰が言ったか知らないが、女性は一度離れた恋は綺麗さっぱり忘れるというが、私の貧しい経験からすれば全くそんなことはないし、渡瀬マキの歌詞には失恋しても未練がましいのが多いのも特徴ではある。

ちなみに、上の「Teenage Blue」のシングルのC/Wには「Modern Woman Weekend」という曲が収録されており、これが「MODERN GIRL」のその後と思われる。
「MODERN GIRL」では「She says彼女は決めているの きっと手に入れるわHigh Life」とか「寂しさに負けるほど Baby私弱くない」と、発表当時のバブル期を思わせるような強気な女性像を描いているが、この「Modern Woman Weekend」ではすっかり無くなっている。
仕事で頑張っているのに寂しいと、2002年の不景気をもろに反映したような弱気モード全開になったのも、時代だなーとしみじみと感じられるようになっている。
この「適齢期」の相手の女性が「Modern Woman Weekend」の女性だとすると、曲中で「一番声を聞きたい人がいないよ」と、この「適齢期」の男性はアウトオブ眼中のようで、なんとも悲しいすれちがいの話ではある。

Cola

あえて言えばLINDBERG Xの「Sugar Free」のその後っぽいが、すると、「Sugar Free」から数年は経っているはずなのに、いまだに失恋を引きずっていたんかい!と突っ込みたくなる。
いや、特に失恋を引きずっている描写は歌詞にないのだが、行間からどうにもそういう匂いを感じてしまう。

退廃的な歌詞と演奏が渡瀬マキの弱々しい声と合っていて、むしろ良曲になっている。
このアルバム内ではかなり聞き応えのある曲。

Traveling

LINDBERG XV収録曲の中で最大の問題作。

歌詞の内容は、空想に逃げている空虚な女性の社会人を描いていて、これも「Cola」と同じく、当時の弱った渡瀬マキの声と絶妙に合っているのだが、問題はそこではない。

「Traveling」という曲名、このアルバムがリリースされた前年の2001年の11月に宇多田ヒカルが同名の曲をシングルリリースしていて、2002年にヒットチャートで堂々の1位を獲得しているのだ。
曲名被り自体は珍しくはないが、流石に同年の最大ヒット曲にぶつけてくるか?という大問題作なのだ。
LINDBERGのファンだからといって、みんながみんな、宇多田ヒカルのアンチってわけでもないだろうし、これを聞いて嫌な思いをしたファンも多かろうと思ったが、このLINDBERG XV、インディーズ落ちしたLINDBERGが最後に少数生産で出したアルバムであるため、ここまで着いてきてくれたファンなら何しても許してくれるだろうと、思い切ってしまったのだろうか。

好意的に受け取れば、解散はするけど実力的にはまだまだJ-POPシーンの一線でやれるんだぞという、当時のLINDBERGメンバー全員の気概というか気迫や底意地のようなものを感じる。
では、本家の宇多田ヒカルの「Traveling」と比べてどうなのか、と言われると、やっぱり当時の宇多田ヒカルの勢いをひっくり返すほどのパワーはないけれど、決して悪い曲でもないという、なんともむず痒い思いをさせられる曲であった。

君がいた夏

LINDBERG XIVの名曲「you were there」を思わせる悲しい曲。

曲名だけであればLINDBERG VIの「君に吹く風」を思い起こさせるが、「君に吹く風」は恋人の別離の歌詞であるのに、この曲は露骨に死別を匂わせているので、あまり関連はなさそう。

雄物川に花火大会というと、秋田県の大曲が舞台なのだろうか。
渡瀬マキ作詞では珍しく具体的な地名が入った曲ではある。

ever green

アルバム上「Cola」から、この「ever green」まで退廃的な曲が続くが、どれも当時の渡瀬マキの声と合っていて、LINDBERGの3人の作曲者の実力と応用力の高さを思い知らされる。
思えばLINDBERGは初期の正統派ロックから、中期はポップ調に変わり、最後はダークに闇堕ちしたが、3人ともどんな曲調でも合わせて曲を作れたのは、何か奇跡的なものを感じる。
大抵のバンドは売れても数年すると「音楽性の違い」で解散したりメンバーが抜けたりするが、LINDBERGはむしろ音楽性の違いにファンがついてこれなかった稀有なバンドだったなと、改めて思う。

全体的に抽象的な歌詞なので、特にどの曲の続きとかはないと思うのだが、「もう若くはないなんて言い訳にして」とか「この夜が明けたらまた行くしかないんだ」とか年取って切羽詰まった感じなのは、LINDBERG曲の登場人物全体でその後の将来がうまくいかなかった「元」若者を描いた曲なのだろう。

僕らずっと前途有望な若者なんです

これまでの曲から一転して明るい曲調なのだが、歌詞は全く人生がうまくいっていない男を描いている。
しかし、妙に明るくて前向きなのは、人によっては励まされるのだろうか。
EXTRA FLIGHTの「DREAM FACTORY」やLINDBERG VIIの「GAMBAらなくちゃね」と内容は全く異なるが、LINDBERG応援歌として変わらない同じ基盤を感じる。

Bad boys,Good friends

LINDBERGの本当に最後(復活後を除く)の曲。

LINDBERGブレイク前の様子を綴った曲であるらしい。
ロードムービーに合いそうな、軽快で心地いい曲である。

個人的には歌詞の以下の部分が、当時、芸能界や音楽界でパッとせず燻っていたメンバーを集めて始まったLINDBERGというバンドが、商業的な成功とは別にメンバー同士の絆が生まれる様子を表していて、好ましい。

BadBoy それぞれの抱えたキズ
GoodFriend それぞれの痛み
束にしたら 幸せだけ残った

傷を抱えたもの同士が、ただ集まっただけで幸せだけ残るなんてことはないのだろうから、集まってもそれぞれが「自分の力を 信じるしかない」と、メンバー全員が周りを頼らず自立していたのが、あのレベルの高い演奏力と歌唱力を維持できたし、商業的に成功もできたのだろう。

それにしても、スタジオ収録のはずなのに、特にキーが高いとも思えない2Aメロから2Bメロにかけて、明らかに渡瀬マキの声が苦しそうで出ておらず、当時ここまで渡瀬マキの喉の調子が悪かったのかと、愕然とさせられる。

サビの最後に「GoodFriend」を「Good Bye」に置き換えて、解散の挨拶を自然に入れるあたり、行儀の良さ、育ちの良さも感じた。

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