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私に仕事を教えた100人 音楽業界編#1 「オレの責任」

ふむふむ、キミが新しくADになったやまだくんだね。

最初っから何かやらせてもらえると思ったら大間違いだよ。

これからしばらくキミは音楽的発言は一切しちゃいかん。

若いディレクターが音楽的な知識もあまりないくせにスタジオでアレンジに対する提案とか言ったりすると、ほかのプロの人に失礼だとか、そういうことじゃないんだよ。

万が一それがいいアイデアで採用されちゃったりするのが一番よくない。

いいか、このアルバムはオレの責任で制作してるんだ。

売れても売れなくてもオレの責任だ。

キミにはまだその責任はないし、自分の意見が一度くらい採用されただけで、いい気になって制作チームの輪の中に入ってしまうのがよくない。

キミはオレのやり方を横で客観的に見て、いいも悪いも、観察し続けろ。

アーティストがどういう発言をするか、ひとりひとりの意見の違いは何か、オレやエンジニアがアーティストの意見にどう反応するかをつぶさに見て、今、何が行われているのかを何しろ見届けろ。

最初っから、その輪の中に入ってしまうと「見る」ってことができなくなるからな。

それで、ああ、このやり方はまずいな、とか、無駄な時間使ってるな、と思っても、それは言わずにちゃんとメモしておけ。

ただし、暗い顔はするなよ。

キミをそこに座らせといて、スタジオ内のムードが悪くなっちゃ困る。

「なんだ、あの暗いヤツ」とか思われたらこの業界はオシマイだ。

わかったな。

もう一度言うが、当分キミにはクリエイティブなことは何もやらせない。

そのかわり、がんばれば本当にやらせて貰えるときが来る。

そのときに、今までやらせて貰えなかったときにためたパワーと英知が洪水のように溢れてくるはずだ。そのときにそのパワーを使え。今は使わないでよろしい。

ただし、給料払っている以上、キミにもやって貰うことがある。

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