見出し画像

27 「遠くへ行きたい」の正体

ぎゅうぎゅう詰めになったものは解き放ちたくなる。

貯まったお金をパーっと使ってしまったり、着ない服をまとめて捨てたり、人混みから開けた場所に抜け出したり。

今朝、満員電車に乗ってわりかし長い時間電車に揺られていた。だんだん乗客が減って、車両がガラガラになると窓から外が見えた。

少し高い所を走っているようで、川が見えたり、団地の頭がいくつも流れて見えた。

雲の少ない、あったかい写真の青みたいな空が広がって、時折赤と白の煙突が見える。

「ああ、遠くへ行きたいなあ」と思った。

あ、出た、この気持ち。なんで朝電車に乗っていると遠くに行きたくなるんだろう。考えながら、煙突がどんどん小さくなっていくのを見ていた。

あの煙突と、あの団地と、あの川が、自分のまったく知らない場所のもので、僕は全然別の場所にいる。そこでゆっくり時間を過ごして、何も考えずにぼーっとしている。

そんな想像をしていたら、ふと気づいた。僕はきっと、時間を解放したいんだ。

気に入ってくださいましたら、ぜひお気持ちを!