見出し画像

#64 この人に出会うために離婚したのかもしれない、と思える恋をした|伊佐知美の頭の中

世界一周を始めた時、私はまだ既婚者だった。世界一周の途中でそのラベルを外し、海外も日本もフラフラと満喫しながら旅を続けて、沖縄の端っこに行き着き、そして今は二度目の結婚と、初めての「母親」を始めたところ。

その間、今の夫ではない人と、何度か大きな恋をした。

ううん、本当は数えるくらい。恋はたくさんしたけれど、恋をしている間も、心のどこかに忘れられない人がいた。

ただひとり。こうやって気持ちや言葉を濁さないと、過去の想いと焦がれの強さに引っ張られて引き戻されてしまって、真っ直ぐ立てなくなりそうになるくらい。
思わず、あなたがいるであろう方向に今すぐ足先を向けて走り出して電車に乗って、日本に今いないなら、同じ大陸にいないなら、飛行機にでも船にでも乗って会いにいくよ。本当に今この瞬間から。荷物なんか持たなくたっていいから。それをするために毎日パスポートだって持ち歩くから。

そういう風に、半ば狂ったように、忘れられない人がいた。

スペインにいても、モロッコにいても、アブダビにいても、京都にいても、どこにいたって。あの角から、その波の向こうから、「やっぱり会いたくて」と現れてくれないかなって、追いかけてくれる日は来ないかなって。どの街の交差点を歩いても、その姿をいつも探してしまう。

ここから先は

1,753字 / 5画像

この記事は現在販売されていません

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?