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イギリスの教育制度#3

前回はAレベルについての記事を投稿しましたが、今日は「大学」についてです。イギリスの大学はどんどん変わっています。なにがかというと、「学費」です。3人の子供を育てる親として非常に気になるポイントです。

円安の流れもあり、日本人感覚からするとイギリスは全体的に物価が高いのですが、教育費は中でもぶっちぎりに高いです。そのイギリスの大学の学費ですが、1998年までは無料でした。1998年から2006年までは年間1000ポンド、2006年には年間3000ポンドに引き上げられました。そしてなんと2012年には年間9000ポンドに!アメリカと同様に大学に進学する学生は多額の学生ローンを組んでやりくりしていきます。日本では高校や大学の無償化の声が上がってきているので、正反対の動きですね。日本では大学生を社会人ととらえることはないかと思いますが、イギリスでは大人の扱いの年齢ですから、一社会人として自分の学費の責任を持ちはじめるというのは当然なのかもしれません。

さて、お金のことからはじまってしまいましたが、大学の学費の高騰化が妥当かどうかについての議論はおいておき、イギリスの大学生活について検討したいと思います。

まず、日本の一般の大学が4年なのに対し、イギリスは3年です。3年で学士号が取得できます。その後の大学院ですが、日本は2年でイギリスは1年です。1年で修士号が取得できます。アメリカの大学や大学院は日本と同じですので、最短で行くとイギリスでは22歳で修士号まで取得できてしまうことになります。若い頃は2年もはやく終了できるなんてお得!と思っていましたが、中年になった今、その2年の差は重要ではないと感じます。(合計の学費のことを考え出すとやっぱりお得なのか?)

私は日本で大学生をしていないので、イギリスと日本の大学の直接比較はできないのですが、イギリスの大学生は基本「勉強しています」。勉強していない子は、いつの間にかにいなくなっています。大学側に進級させてあげようという考えが全くないので、授業に来ない/レポートを出さない/試験に通らない学生のサポートはあまりないという印象です。そして、留年というよりは退学です。もちろんAレベルの資格を使用して他大学や学部に入り直すということはできますが、あまり聞いたことがありません。勉強しているからといって、遊んでいない訳ではありません。イギリスの大学生の遊びで、ナイトクラブイベントは外せません。社交場的な役割も果たし、そこから友達になることも多かったように思います。(私も主人との初対面はナイトクラブでした。)クラブイベントのために20時ぐらいから友達とワイワイ用意をして、23時ぐらいまでにクラブに入り、3時過ぎまで踊る。。。そして翌9時のレクチャーにはみんな来ている。という状態でした。(体力お化け)多くても月に数回程度だったので可能だったのでしょうが、みんな翌朝ちゃんとレクチャーに来ているのはすごいでしょと思います。(他学部は違っていたのかもしれませんが)

授業の時間数は週20時間程度でしょうか。正直はっきり覚えていません。他学部はそれよりは授業数は少ないですが、レポートの提出がかなりあったのではないかと思います。医学部は他の学部と一緒に学ぶ機会があまりなかったので、基本ずっと同じメンバーで同じ講義やtutorial、解剖実習、病理実習などに出席していました。日本と最も違うと思われるのは、ポリクリがはじまる前は出席は一切確認されないという点です。1日も出席していなくても極論レポートを提出し年度末の試験に通れば進級できます。これは医学部に限ったことではなく、他の学部でも同様です。興味があれば、他の学部のレクチャーに出席しても全くバレませんが、それをしている人に出会ったことはありません。

ロンドンの大学生の生活ですが、大半の学生が1年目は寮、それ以降はフラットシェアをしています。一人暮らしは高すぎてできません。イギリスは社会人ではフラットシェアをしている国ですから。いろんな国や学部の子と住むことになるので、とても良い社会勉強の機会になり、私は自分の常識がことごとく覆されました。ロンドンに住んでいた7年の間、毎年引越しをし、10人以上の人とフラットシェアをしたのですが、これが面白くもあり同時に大変でもありました。私は金融業界にいる社会人とフラットシェアをしていた時期もあったので、学生のうちに違う畑の人たちと知り合えたのも良い勉強になりました。

さて肝心な学業の中身なのですが、私が医学という専門職にいるからか、イギリスの大学を出てよかったというメリットをとても感じているかというと、そうでもありません。日々の臨床でイギリスでの経験が役立っているかというと、大学で学んだことというよりは、イギリスで暮らしていたときに学んだことが生かされているという感覚があります。臨床医としては、どこで医学を学んだかより、どれだけ社会経験を積んだかの方が味を深めるのかな、なんて思っています。ただ、研究職に進むDrはイギリスの大学を出ておいた方がその後の研究室との繋がりなどを考えると大きなメリットとなります。研究においてはまだしばらくは英語圏が中心となっていくでしょう。

医学部以外の学部についてはどうやら様子が違うようです。他のフィールドで今日本で働いているお友達と話していると、ほぼ100%「イギリスの大学の方が良い」という声を聞きます。海外大学出身の人と一緒に働きたいと口を揃えます。私より彼らの方がイギリスの大学で学んだことを「良かった」と感じているのは間違いないと思いますます。残念ながら私にはそれ以上の考察はできず、「日本の国立の医学部は、なんてコストパフォーマンスが良いのだろう」と思ってしまいます。イギリスの大学で学んで良かったことを一つだけ挙げろと言われたら、「世界中に知り合いがいること」というかなぁ。


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