英国に10年暮らした女医

イギリスの医学部を出た後に日本に帰国し、医者になった女医。3人の子供の子育て中。

英国に10年暮らした女医

イギリスの医学部を出た後に日本に帰国し、医者になった女医。3人の子供の子育て中。

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人と暮らすということ

私はイギリスにいた10年間、家族以外の人と一緒に暮らしていました。しかも、毎年メンバーは変わります。正直、楽しいことばかりではありませんでしたが、今でも仲の良い友達も何人もいます。日本でも「フラットシェア」というコンセプト出てきてそれが可能な物件も出てきてはいますが、まだまだ学生でも上京して下宿したり一人暮らしをしたりする方が普通なのではないでしょうか。 イギリスではなぜフラットシェアが普通なのか? ズバリ、家賃が高いからでしょう。 私がイギリスに住んでいたのは2000年か

    • 英国医学部入学までの道のり#3

      さて、インターネットで情報をかき集めて、それぞれの場所へ足を運びました。1999年秋、今から25年前の話です。 1:英国留学専門エージェント 当時はマンションの一室で個別相談会のようなものがありました。母と二人で伺ったのですが、この説明会でイギリスの教育制度の概要なども教えていただきました。このエージェントは、イギリス留学に特化しているため、コネクションも多く、良い学校に行けるオプションが色々ありました。ただ、エージェントへかかるお金がそれなりにかかるということで、断念。の

      • 英国医学部入学までの道のり#2

        前回の続きになります。中学時代の話です。少しイギリスが見えてきます。 さて、小6夏ごろに燃え尽き症候群のようになっていた私。それまでは週に5日通っていた塾を辞めます。(というか、母が辞めさせます)でも、地元の中学にそのまま進むのはやっぱり嫌だった。この状態で中学受験をします。 過去問などほとんどやらない状態で、4校受験します。第一志望の合格はありませんでしたが、第二志望(過去問一回も解いていない)に晴れて合格。塾に夏から通っていない状態で、第二志望に合格しているのはかなり

        • 英国医学部入学までの道のり#1

          全3回でイギリスの教育制度の話をあげてきました。 今回はイギリスで医学部に行った私の子供の頃からの体験談をまとめてみます。今回は日本にいた子供の頃、中学生までのお話です。 この記事でも書いているように私の教育背景はこんな感じです。 小学生の頃から、勉強がよくできた真面目な子供だったと思います。聞き分けも、たぶん相当良かった。両親から「あなたは医者になるのが良いと思う」ということは幾度となく言われたことがあります。 幼稚園の頃の夢は「おはなやさん」。自分がそう言ったのは覚

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        人と暮らすということ

          読書感想文 52ヘルツのクジラたち

          8月になりました。我が家の小学生3人はそれぞれ夏の読書感想文という宿題が出されていますが、毎年私の宿題のような状態になっていてやや憂鬱です。そんな親御さんもいらっしゃるのではないでしょうか。 子どもたちのに取り掛かる前に、自分の読書感想文を書いてみようと思います。とても久しぶりに読んだ小説。元々読書は好きなのですが、医者業、母親業、妻業をやりながらだと、なかなか読書の時間を確保するのが難しい。というか、読み始めて夢中になってしまうと他のことが疎かになってしまうのがわかってい

          読書感想文 52ヘルツのクジラたち

          イギリスの教育制度#3

          前回はAレベルについての記事を投稿しましたが、今日は「大学」についてです。イギリスの大学はどんどん変わっています。なにがかというと、「学費」です。3人の子供を育てる親として非常に気になるポイントです。 円安の流れもあり、日本人感覚からするとイギリスは全体的に物価が高いのですが、教育費は中でもぶっちぎりに高いです。そのイギリスの大学の学費ですが、1998年までは無料でした。1998年から2006年までは年間1000ポンド、2006年には年間3000ポンドに引き上げられました。

          イギリスの教育制度#3

          イギリスの教育制度#2

          前回の続きとして、本日はイギリスのAdvanced-levelsとはどういうものなのかをお届けします。 前回の投稿では、イギリスの義務教育期間についてお話ししました。 さて16歳でGCSEを取得した後、大学進学したいと考えている生徒は12年生と13年生の間にGeneral Certificate of Education Advanced level(Aレベル)というものを取得します。扱いとしては”資格”になります。2016年にこのAレベルが大学入学の資格に値すると日本の

          イギリスの教育制度#2

          イギリスの教育制度#1

          日本でも小学校一年生から外国語の時間があり、2018年には文部科学省の委託を受けIB教育コンソーシアムが設立されています。間違いなく日本の教育はグローバル化してきています。しかし、まだまだ日本の義務教育の良さもあって、それ以外の教育制度に積極的に乗ろうという人は実際には少ないのではないでしょうか。そもそも、日本以外の教育制度がどういうものなのか知らない人も多いのでは。今回からは我が家にゆかりのあるイギリスの教育制度について紹介していきます。 我が家の教育背景 私(日本人)

          イギリスの教育制度#1

          <日本小児科学会雑誌から思うこと>

          毎月送られてくる小児科学会雑誌。この場で考えをまとめることで自己研鑽になればと思っています。今回は2024年5月号です。 Vol.128, No.5(2024)767-776 小中学校・特別支援学校教職員を対象とした「教育と医療の連携」に関するweb調査 私は日々、発達障害の診断やフォローアップの外来を行っています。そこで必ず聞くことは「学校で困っていることがあるか」ということです。もちろん不登校や登校しぶりが原因で、外来受診に結びつく児もそれなりの数がいますが、いずれに

          <日本小児科学会雑誌から思うこと>

          イギリスのNHSとは#4

          過去3回で、イギリスのNHSのシステムについて患者の立場から、そして医師の立場から、少し考えてみました。イギリスを離れて15年になる私ですが、医師の働き方改革がはじまって、今感じていることをまとめてみます。今回が最終回です。 完璧な医療制度をつくるのは不可能に近い 私は日本とイギリスの医療制度しか良く知りませんが、二つを比較検討してみても完璧ではありません。なぜならニーズに合った形で「制度」というものが発足したとしても、社会の変化とともにそのニーズは日々変化していくからで

          イギリスのNHSとは#4

          イギリスのNHSとは#3

          前回はイギリスの医療制度で医師が就職するときのジレンマについてお伝えしました。今回はイギリスの医師の1日がどのようなものなのかお伝えします。 医学生から見た初期研修医の1日 病棟の朝は早く、7時半ぐらいにはじまります。8時ぐらいからチームでのラウンドがはじまるので、その前にチームの持ち患者さんの夜から朝の状態のチェックをして、ラウンドの時にプレゼンができる状態にしておきます。(ちなみに医学部生は、ワゴンからチームの持ち患者さんのカルテを出し、ラウンド中はカルテ運びをしなが

          イギリスのNHSとは#3

          イギリスのNHSとは#2

          前回はイギリスの医療制度のプライマリーケアであるGPのシステムについて患者の立場から考えたトピックを立てました。今回は医師の立場からNHSとはどのような医療制度なのかという点からお話します。 医師の立場から 日本では専門医制度が確立されつつありますが、イギリスではすでに統制されていています。私はイギリスで医師として勤務したことはないのですが、医学部生としての研修中、そして就職活動中、大学の同級生からの話などからこの記事を書いています。医師として勤務する際にこんなふうに違う

          イギリスのNHSとは#2

          イギリスのNHSとは#1

          先月から、医師の働き方改革がはじまりました。それもあってイギリスの医療制度について質問されることがちょこちょこあったので、改めて日本とイギリスの医療制度を比較してみました。 患者の立場から 日本では比較的最近乳幼児医療費の自己負担が0割になりましたが、イギリスでは年齢問わず、自己負担が0で有名な医療制度、NHSがあります。そこだけ切り取ると「いいじゃん」と思うかもしれませんが、実情はだいぶ違います。 まずは日本で話をしても、あまりピンと来ないGPのシステムです。GPはg

          イギリスのNHSとは#1