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片翼の天使 - 1章

真っ白い翼を持つ
1人の天使が
地上に舞い降りた。

天使は地上にいる
草花や動物、精霊や妖精など
あらゆる者達に
触れてみたり
話し掛けてみたり
自分の知らない世界に
興味を持って接していた。

そんなある日、
天使は怪我をした人間と
出会った。

怪我をしていたのは
幼い子ども。
怪我で動けぬ様子に堪らず、
人間の前に姿を現した。

天使の仲間内では

─人間に関わってはならないよ─

と言われてたのに。

構わず、人間に

「大丈夫?怪我を見せて」

と声を掛けた。

子供は泣き腫らし
痛そうな顔で蹲っていた。

傷口からは血が流れ服が
赤く染まっている。

声を掛けると
声も出せずに震えながら
傷口を見せてくれた。

傷は明らかに
獣に噛みつかれた跡、
牙が刺さった様な所もある。

「酷い…。まってて治してあげるから」

と、天使は
傷口に手を当て治癒の力を使った。

傷口を治す天使の手からは
僅かな光と、優しい暖かさが
感じられる。

手からの光が治まり見ると
傷口が塞がっていた。
天使は子供に

「まだ、痛みはある?」

と、言うと
子供は驚いた顔で
首をブンブン振った。

子供はポロポロと涙を流しながら

「…死んじゃうって思ってた。
もぅっ、もう、助からないっ…。
……ありがとぅ」

と言った。

天使が子供を優しく撫でて居ると

「何これ?…」
「うわっ‼」

と、声が聞こえて
天使が振り返ると少女と男性が居た。

2人は天使の姿を見て
驚いていたが
天使の側に、子供が居るのに気付き

「何してるの?その子を放して‼」

と天使に言った。

天使は慌てて
子供が無事な事を伝え様としたら
先に子供が

「まって!助けてもらったんだ。
悪い人じゃ無いよ」

「悪い人って…
こんなデカイ翼がある
人なんて居ない‼人間じゃ無い‼」

「でも、怪我を治してくれた」

と言った。

「治してくれた?」

と、言われ子供は
怪我をしていた所を見せ

「ほら、傷口が塞がってる」

と傷跡を見せた。男性が驚いた顔で

「あんた、怪我を治せるのか?」

「えぇ、跡は残りますが…」

「凄いな!不思議なもんだ」

と感心していた。天使は子供に

「傷は塞いだけど痛みが暫く続くから
無理しちゃ駄目よ」

「分かった。本当に、ありがとう。
ねぇ、この森に来たら
又、会える?」

「人間と関わってはいけないと
言われてるから会え無いわ」

「もう一度だけ。会って。
怪我のお礼をさせてよ」

と子供に懇願された。
天使も根負けし

「分かったわ。もう一度だけよ」

と子供と会う約束をした。

「─ではこの酔芙蓉が咲いた日に─」

と約束をした。

あれから数日がたった。

天使が待ってると足音が聞こえた。
振り返ると、子供が嬉しそうに
走って来たので慌てて

「走らなくて良いから、
まだ、痛むでしょう?」

「大丈夫だよ!この位、
痛みは殆ど無くなったんだ」

と言って怪我していた所を見せた。
確かに傷口は
良くなっているみたいだ。

だが、
子供の顔は痛みで引き攣る表情が
隠しきれていない。

「痛いのを我慢してはいけないよ」

と子供に言い聞かせる様に言った。

「痛くても会いたかったんだ。
あ!ねぇ。名前、教えてよ。
あっ、僕はシン。あなたは?」

子供のクルクル変わる
表情が可笑しく天使は微笑む。
天使は

「私の名前はサラ」

と教えた。

其れから、
あの日現れた人間が
近所に住む女の子のアンリと、
女の子の父親のダン
と教えてくれた。

怪我して帰った時の家族の反応
傷跡を見て
母親が泣きそうだった事など
色々と話してくれた。

「それで、これを母から」

布地で覆っていた物の中から
花で飾ったカゴに
野菜や果物が入ってあった。

「こんなに沢山、私に?」

「そう。野菜や果物は母さんから
お礼に渡して来てって
花は妹が入れたんだ。
僕も何かをと思ったけど
思い付かなくて…」

「良いよ。元気な姿を
見せてくれただけでも充分よ」

と言って子供の頭を撫でた後、

「私は帰るわね。シン、元気でいてね」

「本当に、ありがとう」

そう言って
天使は空へ飛び立ち子供と別れた。

天使は帰ってから人間と会った事を
仲間に話した。
仲間は諭す様に、

「サラ、何事も無かったから
良かったけど、
人間と関わってはいけないよ」

と仲間から強く言われ
心配されてしまった。

其れから、
サラは人間に関わらない様に
気を付ける様になった。

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