Clarity2021に参加してきました。
こんにちはデザイナーのおーじです。今回は10月の後半にオンライン開催されたClarityというデザインカンファレンスに参加してきましたのでそちらのレポート記事になります。
Clarityとは?
Clarityとはデザインシステムのカンファレンスです。2016年に始まって以来毎年開催されています。開催場所はサンフランシスコ、ニューヨークなどで、2020年からはオンラインという形になっています。
デザインシステムのカンファレンスということでもちろん実装や製品開発の話も多くありますが、基本的には「良いチーム作り」という文脈で語られるセッションが多かった印象です。
Clarityの哲学
デザイナーやエンジニア間での協業をはじめ、多様な個人でのコラボレーションがチームの結果を最大化させるという理念のようです。
Clarityについて
「本当の意味でのチームの成功はメンバーのビジョンや言語が揃った時に生まれます。デザイン、開発、プロダクトへの多様な視点が揃うことでさらに議論に参加することができます。Clarityではインクルージョン、エンパシー、テクノロジー、クリエイティビティーそしてコラボレーションを通じてスキルをあげることを目的としています。」
“Real success comes when people align around a shared vision and language. Diverse perspectives for design, development, and product unite so more people can be a part of the conversation. At Clarity, we elevate our skills through multi-faceted inclusion, empathy, technology, creativity, and collaboration.”
引用:Clarityサイトより
セッションをいくつかご紹介
1: Dysfunctional Systems: Digital Products and Addiction
(異常なシステム:デジタルプロダクトと中毒性)
デザイナーのJohn Vossさんは多くのデジタルサービスの中毒性について警鐘を鳴らしています。習慣化を促す有名なThe Hook Modelなどに習って設計されたプロダクトがもたらすカスタマーへの影響を一度立ち止まって考えるべきだと言っています。
ユーザーが好むものが本当に正しいの?
Johnさんはデジタルプロダクトへ依存することへの影響をユーザーに任せにしてはいけないと言います。依存は個人の選択によるものですが、環境的、社会的な要因も絡んでいると。
もちろんユーザーは永遠にスクロールができることを好むし、すぐに気づける通知を好みます。デジタルプロダクトを使っている瞬間の体験はユーザーにとって良いかもしれないですが生活全体への影響は計りしれません。
「ユーザーのエンゲージメントを図る手段はユーザーの生活全てに及ぼす影響までは測りきれていない。」
“What we use to measure engagement is not the full measure of our impact on people's lives”
感想
デザイナーとしての持つべき倫理観について考えさせられました。当たり前かもしれないですが、我々は「サービスの向上」のために、もっと大きなユーザーのデータや多くのアクティブユーザーを求めます。しかしユーザーにとって何が本当に良いことなのかを見失いがちです。
私の担当しているデジタルプロダクトはBtoB製品ということもあってあまり、「中毒性」を意識するということはないかもしれません。ただ、業務の効率化以上の価値を求められるようになってくれば無意識的に「中毒性」を取り入れた設計になってくるかもしれません。生活の一部だけでなく生活全体を見て、本当にそれがユーザーにとって良い影響を与えるのかという倫理観をデザイナーが持っておく必要があると思いました。
2 : Cross-Device: The Future of Design Systems
(クロスデバイス:デザインシステムの未来)
デザイナーのJen Cottonさんはデバイスの多様化に合わせてデザインシステムも進化していく必要があると言っています。様々なデバイス感での体験を前提としたクロスデバイスな世界を意識することがこれから大切だそうです。
クロスデバイスとは?
クロスデバイスと似たような概念としてマルチデバイスという言葉があります。マルチデバイスとは「複数のデバイスからサービスを利用できる状態」を表します。クロスデバイスとは「一人のユーザーが複数のデバイスを利用する際に、閲覧したサービスやコンテンツの情報が引き継がれる状態」を指します。(例えば、スマホで見ていたNetflixの動画の続きを家のテレビで見れるなど。)
デバイスの種類と操作方法の多様化
アメリカの1家庭につき最低でも5個のデバイスの利用状況。年々増えている。上位4つはテレビ、携帯、PC、タブレット。コロナの影響もありタブレットやTVなどの需要が増えたそう。
デバイスの操作方法も多様化しているようです。例えばボイスUIなどはそれの最たる例で、身体に障害のある方、視覚障害の方だけでなく、高齢の方などには非常に重要な存在になっています。アメリカの高齢者の20%がスマートスピーカーを持っていて、そのうちの半数が毎日使用しているというデータもあるそうです。
クロスデバイスに対応したデザインシステム
一つのサービスが複数のデバイス、そして複数の操作方法で体験することが当たり前になってくるともちろんスマホだけでなく、タブレット、スマートスピーカー、さらにはウェアラブルデバイスにも対応したデザインシステムを整備する必要が出てきます。しかし、すべてのデバイスに対応したデザインシステムをいきなり作るのはさすがに難しいと思います。
そこで、まずはできるところからとJenさんはおっしゃっています。
例えば、ユースケースで分けて体験別に作成してみる。
・フィットネスの文脈でのデザインシステム(iPhone, Apple Watch, Airpods)
・音声操作系のデザインシステム(Alexa)
・エンターテインメント系のデザインシステム(TV, Speaker, Tablet)
デバイス毎で分けるのでなく、ユーザーの体験文脈で分けていくと連続性のあるデザインシステムを整備することができます。
そして何よりもこれから増えるユースケースに対応できるように進化させていくことが重要であり、デザインシステムには終わりがないと言っています。
感想
複数のデバイスを横断したデザインシステムなんて考えたこともなかったので自分にとっては非常に新しいコンセプトでした。
自分の生活を振り返ってみても同じサービスを環境に応じて違うデバイスで体験しているなとつくづく思いました。
BtoBの製品というとどうしても会社やオフィスで使用するイメージなのでPCやモバイルがメインのユースケースです。しかし、在宅が増えていることなども考えると家や移動中の車などプライベートな状況で使用するユースケースも増えると思いました。家のスマートスピーカーから会社の同僚に返信をすることが当たり前になる未来を考えるとクロスデバイスに対応したデザインシステムの整備なども近い将来ありそうだと感じました。
次回はClarityに一緒に参加したAmiちゃんから「Design Technologist」についてレポートしてくれています!
日本で最初のDesign Technologistかも??お楽しみに!
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