1位は27.6%!?介護職の離職率を調べてみた
今回の記事のポイント
・介護職の離職率の調べ方がわかる
・介護職の離職率ランキングがわかる
・離職率が高い理由がわかる
今回は介護職の離職率についてです。
介護職の離職率はどうやって調べればいいの?
介護職の離職率は、介護労働安定センターが公表している「介護労働実態調査」で調べることができます。毎年8月頃に1年前の調査結果が公表されます。
各都道府県別の介護労働実態調査は支部のお知らせ欄から確認することができます。
今回は全47都道府県の介護労働実態調査をデータ化して調査しました。
都道府県別の離職率を調べてみた
早速ですが、まずは都道府県別の離職率を調べてみましたので、ランキング形式で見てみましょう。
ランキング1位は沖縄県。離職率27.6%と非常に高い数値でした。
最も離職率が低いのは富山県で9.5%でした。都道府県ごとに離職率が大きく異なっていることがわかりますね。
なぜ離職率が高いのかを調べてみた
なぜ沖縄県は離職率が高いのでしょうか。
介護労働実態調査では、離職防止の取り組みや、職員の就職理由についてなど、さまざまな項目を調査しています。
調査項目の中で、離職率と関係がありそうな項目を一つ一つ分析したところ、最も離職率と関係が深い項目を見つけました。
それは、「賞与」です。
横軸に「賞与がない施設の割合」をとり、縦軸に「離職率」を取りました。
右に行くほど、県内に賞与がない施設が多いことを示します。上に行くほど、離職率が高いことを示します。
沖縄県は賞与がない施設の割合が18.8%でトップです。
また、賞与額でも同様の傾向がみられます。
横軸に「平均賞与額」をとり、縦軸に「離職率」を取りました。
右に行くほど平均賞与額が大きいことを示します。上に行くほど離職率が高いことを示します。
沖縄県の平均賞与額は「37万6千円」で、47都道府県中、最も低い平均賞与額でした。
沖縄県が特に目立ちますが、沖縄県を除いた都道府県で見ても緩やかな関係性があることがわかります。
2つのデータの関係性は相関係数を用いて調べました。相関係数は絶対値が1に近いほど、2つのデータに関係性があることを示します。
参考までに各項目の相関係数を見てみましょう。
まずは給与関連の相関係数です。
ご紹介した通り「賞与なしの施設の割合」が0.6であり、比較的1に近いことがわかります。
通常の月額賃金よりも、賞与額の方が離職率と関係しているということは意外でした。
続いて、離職防止の取組みの相関係数です。1に近いほど、離職率低下に効果があることを示しています。
離職防止に効果があると考えられる項目トップ3は以下の通りでした。
1位 残業を少なくする、有給休暇を取りやすくする等の労働条件の改善に取り組んでいる
2位 能力や仕事ぶりを評価し、賃金などの処遇に反映している
3位 職場内の仕事上のコミュニケーションの円滑化を図っている
いずれも大事な項目ですね。
続いて、人材育成の取組みの相関係数です。1に近いほど、離職率低下に効果があることを示しています。
「能力の向上が認められたものは、配置や処遇に反映している」という項目がわずかに離職率低下に関係がありそうです。
また、「いずれも行っていない」がマイナスの相関があることが印象的です。マイナスの相関があるということは、人材育成の取組みを行っていない場合、離職率が高い傾向にあることを示しています。
その他の項目はほぼ0に近いため、離職率との関係性は確認できませんでした。
決定版!介護職不足に苦労する都道府県
先日、介護職不足に関する記事を書きました。
この時は離職率については考慮していませんでした。
最後に、離職率も考慮して介護職不足に苦労する都道府県を考えてみたいと思います。
横軸に「介護職の不足率」を取り、縦軸に「離職率」を取っています。
介護職の不足率は厚生労働省のデータをもとにしています。詳しくはこちらの記事をご参考ください。
右上のエリアが、最も介護職不足に苦労するエリアと言えるでしょう。
代表的な県は、「沖縄県」「千葉県」です。
沖縄県は離職率が高いだけでなく、介護職の不足率の高い為、かなり介護職不足に苦労することが考えられます。
千葉県は離職率は少し高い程度ですが、介護職の不足状況が深刻なため、苦労することが考えられます。
右下のエリアは、離職率は低いものの介護職の不足率は高いエリアです。
代表的な県は「福島県」と「京都府」です。
この2つの都道府県は介護職不足は深刻ですが、離職率は低い為、沖縄や千葉に比べれば、まだ良い状況と言えるのではないでしょうか。
左上のエリアは、離職率が高く介護職の不足率が低いエリアです。
このエリアでは、下付近にいくつかの都道府県があるものの、特に目立った都道府県はありませんでした。
そもそも介護職不足が起きていない都道府県では、離職率は高くならないのかもしれません。
左下のエリアは、最も介護職不足に苦労しにくいエリアと言えるでしょう。離職率が低く、介護職の不足率も低いエリアです。
代表的な県は「石川県」「島根県」です。
今回使用したデータについて
今回使用したデータはこちらにまとめております。データのダウンロード等、興味のある方は見てみてください。
おわりに
今回は、「1位は27.6%!?介護職の離職率を調べてみた」と題して、以下の事を説明しました。
・介護職の離職率は「介護労働実態調査」で調べることができる。
・介護職の離職率は「沖縄県」が圧倒的に高い。
・離職率には「賞与の有無」が関係している。
今回の記事を含めて、「病院・介護施設の市場調査ができるようになるnote」シリーズでは、病院・介護施設の市場調査の方法を紹介しています。
取り上げる調査項目は以下の7つです。
今回の記事は、項目4の「医療職・介護職の需給状況」になります。
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