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病院の機能性を徹底解説|経営分析のキホン

記事のポイント

・病院の機能性(病床利用率、平均在院日数など)とは何かがわかる
・病院の機能性のベンチマーク(比較データ)がわかる
・病院の機能性分析ツールの使い方がわかる

最後には分析ツールも紹介していきますので、ぜひ合わせてご覧ください。

機能性とは

経営資源を有効に活用しているかを判断する為の指標です。

様々な指標があり、定義もやや曖昧ではありますが、この記事の中では以下の指標を機能性指標として、紹介していきます。

・外来/入院比
・病床利用率
・平均在院日数
・紹介率
・逆紹介率
・職員1人あたり入院患者数
・職員1人あたり外来患者数
・患者1人1日あたり入院収益
・患者1人1日あたり外来収益

外来/入院比

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外来/入院比とは、外来患者数と入院患者数の比率のことです。1日平均外来患者数を1日平均入院患者数で割ることで計算します。

1以上であれば、外来患者数の方が多いことを示し、1以下であれば入院患者数の方が多いことを示します。

外来/入院比で分かることは、その病院の機能が外来中心なのか、入院中心なのかということです。

病床機能別にベンチマークを比較してみましょう。

外来入院比1

一般病院は1.7倍、療養型病院は0.5倍、精神科病院は0.3倍です。

一般病院の方が外来機能を担っており、療養型病院や精神科病院は入院機能を担っていることがわかります。

入院基本料別にベンチマークを比較してみましょう。

外来入院比2

例えば、一般病棟入院基本料においては、看護配置基準の多い病院ほど、より多く外来機能も担っていることがわかります。

病院ごとにも特徴が分かれてきますので、自身の病院とベンチマークを比較して外来機能と入院機能のどちらがよりメイン機能となっているのか、確認してみてはいかがでしょうか。

目指している方向と、実態としての機能が異なる場合は、戦略の見直しが必要になるかもしれませんね。

病床利用率

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病床利用率とは、病床がどの程度利用されているかを表す指標です。1日平均入院患者数を稼働病床数(許可病床数の場合もあり)で割ることで計算します。

病床利用率が低ければ、病床を十分に活用できていないことを示し、病床利用率が高ければ、病床を十分に活用できていることを示します。

ただし、病床機能によって適切な病床利用率は異なりますので注意が必要です。同じ病床利用率85%でも低いと考える場合と、高いと考える場合があります。

病床機能別にベンチマークを比較してみましょう。

2病床利用率1

一般病院の病床利用率は80.4%が平均です。急性期を担当しやすい病院だからこそ、入院患者の入れ替わりも多くなります。結果として、他の機能の病院と比較して、病床利用率は低くなりやすい傾向にあります。

療養型病院の病床利用率は92.0%が平均です。慢性期を担当しやすい病院だからこそ、入院患者の入れ替えは少なくなります。結果として、他の機能の病院と比較して、病床利用率は高くなりやすい傾向にあります。

入院基本料別にベンチマークを比較してみましょう。

2病床利用率2

ざっくり傾向を掴むとすれば、一般病棟入院基本料は80%以上が望ましく、地域包括ケア病棟・回復期リハビリテーション病棟は85%以上が望ましく、療養病棟入院基本料・精神病棟入院基本料は90%以上が望ましいと考えられるかもしれません。

平均在院日数

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平均在院日数とは、患者が入院してから退院するまでの平均的な日数のことです。在院患者延べ数を”(新規入院患者数+退院患者数)の2分の1”で割ることで計算します。

平均在院日数は、病院の治癒力を示す指標と考えることもできますし、入院患者の性質を示す指標と考えることもできます。

病床機能別にベンチマークを比較してみましょう。

3平均在院日数1

病床機能によって、大きく平均在院日数が異なりますね。

一般病院の平均在院日数は22.9日で約3週間で患者が退院していることがわかります。

一方で、療養型病院の平均在院日数は131.7日で約4ヶ月で患者が退院していることがわかります。

入院基本料別にベンチマークを比較してみましょう。

3平均在院日数2

入院基本料別で見ても大きく平均在院日数が異なることがわかります。

入院基本料の算定要件にもなっていますので、常にチェックしておく必要がある指標ですね。

紹介率

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紹介率とは、初診患者のうち他の病院やクリニックから紹介されて来院した患者割合のことです。

(紹介患者数+救急患者数)を初診患者数で割ることで計算します。分子は純粋な紹介患者数とすることもありますが、経営管理指標の算出においては、救急患者数も分子に含んでいます。

紹介率が高ければ、他の病院やクリニックからの紹介が多いことを示します。逆の見方をすると、紹介率が低ければ、直接来院する患者が多いことを示しているとも言えますね。

病床機能別にベンチマークを比較してみましょう。

4紹介率1

一般病院の方が紹介率が高く、療養型病院の方が紹介率が低い傾向にあります。

個人的に意外なのは精神科病院も紹介率が高い傾向にあることです。半数以上が他の医療機関からの紹介(及び、救急患者)で構成されています。

入院基本料別にベンチマークを比較してみましょう。

4紹介率2

一般病棟入院基本料、地域包括ケア病棟、回復期リハビリテーション病棟のいては、上位の基本料を算定しているほど紹介率が高い傾向にあります。

より専門的な機能に特化しているため、他の医療機関からの紹介が多いという見方もできるのではないでしょうか。

逆紹介率

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逆紹介率とは、初診患者のうち他の病院やクリニックに紹介している患者割合のことです。逆紹介患者数を初診患者数で割ることで計算します。

逆紹介率が高ければ、他の病院やクリニックとの連携が多いことを示しています。

病床機能別にベンチマークを比較してみましょう。

5逆紹介率1

一般病院の方が紹介率が高く、療養型病院の方が紹介率が低い傾向にあります。また精神科病院も高い傾向にあります。

紹介率の傾向と近いものがありますね。

紹介率と比べてみると、紹介率の方が基本的には高く、逆紹介率の方が基本的には低いという傾向も見て取れます。例えば、一般病院の紹介率は58.8%であり、逆紹介率は25.8%です。

入院基本料別にもデータが出ていますので、ご自身の入院基本料とベンチマークを比較してみてはいかがでしょうか。

5逆紹介率2

職員1人あたり入院患者数

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職員1人あたり入院患者数は、1日平均入院患者数を職員数で割ることで計算します。

職員1人あたり入院患者数で分かることは、職員の生産性ともいえるかもしれません。

職員1人あたり入院患者数が少ない場合、職員の力を十分に発揮できていない可能性があります。職員が多い可能性もあるともいえるかもしれません。

逆に、職員1人あたり入院患者数が多過ぎる場合、職員への過剰な負担がかかっている可能性があると考えられるかもしれません。

病床機能別にベンチマークを比較してみましょう。

6職員1人あたり入院患者数1

一般病院の職員1人あたり入院患者数は0.5人で、療養型病院の職員1人あたり入院患者数は0.9人です。

一般病院の方が医療的な処置を多く行う必要がある為、職員1人あたり入院患者数は少なくなります。一方で、療養型病院の方が、医療的な処置が少ないた為、職員1人あたり入院患者数は多くなります。

入院基本料別はこちらです。

6職員1人あたり入院患者数2

また、職員1人あたり入院患者数は、「医師1人あたり」でみたり、「看護師1人あたり」でみたりすることもあります。

具体的な数値は、最後に紹介している分析ツールから確認できますので、気になる方はそちらもチェックしてみてください。

職員1人あたり外来患者数

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職員1人あたり外来患者数は、1日平均外来患者数を職員数で割ることで計算します。

数値の見方は、職員1人あたり入院患者数と同様です。

病床機能別のベンチマークはこちらです。

7職員1人あたり外来患者数1

職員1人あたり外来患者数は、どれだけ多くの外来患者数を見ているかに依存しますので、外来/入院比と近しい傾向になっていますね。

入院基本料別のベンチマークはこちらです。

7職員1人あたり外来患者数2

患者1人1日あたり入院収益

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患者1人1日あたり入院収益とは、1日あたりの入院単価とも言えます。入院診療収益を、(在院患者延べ数+退院患者数)で割ることで計算します。

患者1人1日あたり入院収益も病床機能によって大きく異なります。

経営視点では、医療資源を投入するにはコストもかかりますので、適正な入院単価と比較し、自院のギャップを把握しておくことも必要ではないでしょうか。

病床機能別のベンチマークはこちらです。

9患者1人1日あたり入院収益1

入院基本料別にベンチマークはこちらです。

9患者1人1日あたり入院収益2

患者1人1日あたり外来収益

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患者1人1日あたり外来収益とは、外来単価とも言えます。外来診療収益を、外来患者延べ数で割ることで計算します。

数字の見方は、患者1人1日あたり入院収益と同様になります。

病床機能別のベンチマークはこちらです。

9-2患者1人1日あたり外来患者数1

入院基本料別のベンチマークはこちらです。

9-2患者1人1日あたり外来収益2

分析ツールの使い方

今回の病院の機能性に関する指標は以下の分析ツールにまとめています。

分析ツール1

上のタブでページの切り替えができます。ラジオボタンで指標を切り替えることができます。

分析ツール2

(複数比較)と書いてあるタブでは、複数の指標を同時に比較できます。

例えば、病床利用率と平均在院日数を同時に見てみると、平均在院日数の少ない病床機能ほど、病床利用率が低いことがわかります。

このように、2つ以上の指標の関係性を見たい場合に活用ください。

おわりに

今回は、「病院の機能性を徹底解説」というテーマで以下の事を説明しました。

・病院の機能性(病床利用率、平均在院日数など)とは何か
・病院の機能性のベンチマーク(比較データ)
・病院の機能性分析ツールの使い方

今回の指標は厚生労働省が公表している病院経営管理指標をもとに作成しています。

データが古く平成29年度のものなのですが、まもなく平成30年度が出来上がるはずだと思いますので、また平成30年度がでましたらアップデートしていきたいと思います。

他にも、「病院経営のキホン」として以下の記事を書いています。

1 医業経営のための調査資料6選|経営分析のキホン

2 病院の損益計算書(P/L)を分析|経営分析のキホン

よろしければ合わせて、ご参考ください。

今回の記事を含めて、「病院・介護施設の市場調査ができるようになるnote」シリーズでは、病院・介護施設の市場調査の方法を紹介しています。


取り上げる調査項目は以下の7つです。

調査項目リスト

今回の記事は、項目6の「基準指標」になります。

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