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病院の損益計算書(P/L)を分析|経営分析のキホン

記事のポイント

今回は、病院の損益計算書(P/L)を分析します。

・病院のP/Lの仕組みがわかる
・病院のP/Lのベンチマーク(比較データ)がわかる

損益計算書(P/L)とは

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損益計算書(P/L)とは、どれだけ利益をあげることができたのかという経営成績を明らかにするものです。

損益計算書によって、収益・費用・利益を確認することができます。

実際の病院の損益計算書はこんなイメージです。

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病院で注目したい5大費用区分

損益計算書には様々な項目があり、どこから見ていいのかわかりにくいのが難点です。

そこで、今回は5大費用区分にポイントを絞って病院の損益計算書を図解します。

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この5つの費用を見ることで、病院の特徴が見えてきます。

一般病院と療養型病院の違い

厚生労働省では毎年、病院経営管理指標で病院の平均的な損益計算書(P/L)のベンチマークを公表しています。

そのベンチマークから違いを見ていきましょう。

分かりやすくするために分析ツールで図解しています。(分析ツールについては最後に紹介させていただきます。)

一般病院はこちらです

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療養型病院はこちらです

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左側の医業収益からはじまり、右に進むにつれて各費用が引かれていくイメージで作成しました。最後に残ったのが利益です。

5大費用の売上に占める割合を比率で表現しています。

どこに違いがあるかわかりますでしょうか。

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一般病院と療養型病院の違いは、材料費に表れています。

材料費に注目して見てみましょう。

一般病院はこちらです

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療養型病院はこちらです

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一般病院の方が、より多くの医療的処置の必要な方が入院しますので、材料費が多くかかる傾向にあります。

また、材料費等の影響もあり、療養型病院と比べると一般病院の方が利益率が低い傾向にあります。

入院基本料によるの違い

続いて、入院基本料による違いを見てみましょう。

例として、急性期7対1(現在は、急性期一般1)と、急性期15対1(現在は、地域一般3)を比較して見ましょう。

急性期7対1はこちらです。

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急性期15対1はこちらです。

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どこに違いがあるかわかりますでしょうか。

・・・

急性期7対1と15対1の違いは、人件費に表れています。

人件費に注目して見てみましょう。

急性期7対1はこちらです。

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急性期15対1はこちらです。

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急性期7対1と15対1では、人件費率が10%以上も違います。結果として、利益率に大きな差が出ています。

ここで少し疑問も感じるかもしれません。

急性期7対1は、患者7人に対して1人の看護師配置です。

一方、急性期15対1は、患者15人に対して1人の看護師配置です。

そのため、単純に人件費の金額を考えると急性期7対1の方が高そうです。

なぜこのような結果になるのでしょうか。

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人件費で比較したときに差が出るのは、収益に差があるためです。

急性期7対1は、手厚い医療が必要な人が入院しており、看護師を多く配置する必要がありますが、その分、多くの収益を得ることができるようになっています。

一方で、急性期15対1は、そこまで手厚い医療は必要ない人が入院しており、看護師は少なくてすみます。しかし、そこで削減される人件費以上に収益が下がるため、人件費率は大きくなってしまっています。

急性期15対1は、ベンチマークの指標で医業利益率▲6.7%ですので、経営は相当に困難です。

急性期15対1を取るのであれば、療養型に転換するなど、病床機能を変えて欲しいという診療報酬の意図が感じられます。

黒字病院と赤字病院の違い

最後に、黒字病院と赤字病院の違いを見てみましょう。

一般病院の例で比較して見ます。

黒字病院はこちらです。

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赤字病院はこちらです。

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どこに違いがあるかわかりますでしょうか。

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黒字病院と赤字病院の違いも、人件費に表れています。

黒字病院はこちらです。

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赤字病院はこちらです。

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黒字病院と赤字病院では人件費率が10%も違うのですね。

病院の費用の内、半分以上を人件費が占めています。各病床機能に見合った適切な人件費と出来るかどうかが病院の黒字、赤字の肝とも言えるかもしれません。

分析ツールの使い方

病院経営管理指標を図解化した分析ツールを公開しています。

今回、紹介した事例以外にも、様々な病床機能や入院基本料で比較ができますので、気になる方はぜひ触ってみてください。

ご自身の病院のデータと比較することで、経営課題も見えてくると思います。

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おわりに

今回は、「病院の損益計算書(P/L)を分析」というテーマで以下の事を説明しました。

・病院のP/Lの仕組み
・病院のP/Lのベンチマーク(比較データ)

ぜひ、各病院のP/Lと、ベンチマークを比較して、経営課題を探してみてください。

今回の記事を含めて、「病院・介護施設の市場調査ができるようになるnote」シリーズでは、病院・介護施設の市場調査の方法を紹介しています。

取り上げる調査項目は以下の7つです。

調査項目リスト

今回の記事は、項目6の「基準指標」になります。

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