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地下ジャズ最前線「ToeJazz(爪先ジャズ)」入門/V.A - The Shape Of ToeJazz To Come [Ulyssa]

Artist: Various Artists
Title: The Shape Of ToeJazz To Come
Label: Ulyssa
Genre: Jazz, Fusion, Funk
Format: Cass
Release: 27th May 2022


アメリカ合衆国インディアナ州に拠点を置く実験ポップス・ジャズレーベルUlyssaより、ToeJazz(爪先ジャズ)なる聞きなれない言葉のジャズの入門編。

ToeJazz(爪先ジャズ)とは一体何なのだろうか?

実際に聞いてみれば、誰しも聞いたことがあるような、身に迫るような息遣いを感じる迫力のあるものであったり、大人の社交場を彩るムーディーなものであったりと、生音と奏者の競演芸術、そういったものとは一線を画してかけ離れている。

業務用スーパーやショッピングモールの惣菜コーナーで流れていそうな、MIDIキーボードでのベタ打ちをそのままジャズにしたようなスカスカさ、近年目覚ましく成長しているDTMの技術革新とは程遠いチープ感、そういう脱力的というか、一種の電波ソングのような中毒性をほのかに香らせるジャズのように感じる。骨の髄までジャズに魅了されている人からすれば、大いに邪道なのかもしれない。

では、結局、ToeJazz(爪先ジャズ)とは何なのだろうか?

ライナーノーツによれば、Miles Davisの1986年作「Tutu」とゲーム機メガドライブで1981年に発売されたアクションアドベンチャー「ToeJam & Earl」のサウンドトラックに影響を受けたジャズミュージックとされている。何とも非常に限定的でマニアックな影響と言うべきか…。

Miles Davis - Tutu


ToeJam & Earl


本作は、ToeJazz(爪先ジャズ)の入門編とも言えるようなコンピレーションアルバムで全21曲。しかもフォーマットはカセットテープ。ジャズはレコードで聴いてこそというのは重々承知しているが、カセット特有のLo-Fi感、音の解像度が低いが故のクリーミー感が絶妙な味わいに感じさせる。

最も驚くべきことは、こんな辺鄙な(?)音楽を創るToeJazz作家が21名もいることだろう。

日々、こうして奇妙で得体の知れない音楽が生まれているということにただただ驚くばかりである。

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