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キナリ杯は「多チャンネル」

正直、 #キナリ杯 は「ちらっと見る」ぐらいで、すこし距離を置こうかと思っていた。

結果発表が始まるまでは。

なぜかというと、
岸田奈美さん的な「おもしれ〜note」——しりひとみに始まり、パン子さんのレーザー脱毛が超無限優勝に輝き、ヨッピーさんを外すわけにいかないような——とか、「ハートウォーミングな家族もの」とかは、好きな人は多いだろうけど、今はまあ、量は要らないかなと思っていたから。

でも「そればっかりじゃない」ことを悟ったのは、特別リスペクト賞③でSaeさんが入った辺りからだ。

テーマ的に岸田さんにヒットする部分はあったにせよ、4000件超の中からよくこの硬派な作品をこぼさず拾うよなあと思った。ピックアップの幅が広い。

そして、優勝の西先生。

優勝という語を冠した賞が多数ある中で、最も「正統的」な『優勝』2作品のひとつとして、最後に発表されたこの作品は、本当に優しくて、穏やかで、率直な文章だと思った。これが「締め」に来る多彩さ。

岸田さん個人が選ぶ賞でありながら、「チャンネル」の数が多い。昔BS-5chだったWOWOWが、今は「プライム」「ライブ」「シネマ」の3チャンネル構成になっているらしいけれど、そんな感じ?好きなチャンネルを主に受信したらよくて、気分次第で他のチャンネルにも合わせられる。

幸いにも、好きなチャンネルがあったみたいだ。

そんなわけで、「イチオシの受賞作」を3本紹介したい。

🍰

瀧波わかさんの7500字。さらっと読めてしまった。ぐいぐい引き込まれた。

私は、ロンパードの閉店よりも、開店していた時間に、精いっぱい敬意を払って、わずかでも恩を返さなかった自分自身に失望していた。

喪失感がすごい。そして、「だから、いま、伝えなきゃ」というメッセージの説得力。思い出の語り方として、聳え立つお手本になった。

👴

飯尾早紀さんのおじいちゃんの話。これが単なる家族ストーリーにとどまらないのは、臨床検査技師という専門性から「命」をとらえる視点があるからだと思う。

おじいちゃんは、今が亡くなるベストなタイミングだ。

家族の命だからこそ、プロの知識と経験を通じて緻密に見ることができる。読者はそれを追うことができる。家族の死を「美しい」と描写することに、説得力があった。

西先生自身の文章も面白いし、界隈ではナースあさみさんを思い浮かべるけど、このご時世とくに医療職の方が綴る文章はとても興味深い。

📚

氷壁にアイスアックスさんの15000字(!)。

私が狙っていた「あなたもホンシェルジュ」賞の受賞作は、《完全に計算し尽くされた》クオリティで脱帽だった。おもしれー方向に本当に練られている。コンテストの遊び方として、強く印象づけられた。

🐦

最後に加えるなら、結果発表は夜22時からのツイキャス配信がよかった。リアルタイムでずっと聞いていて、喋って動く岸田奈美さんの人柄がよくわかった。ものすごいスピードでコメントを拾って、人物と作品を結びつけて喋っていた。どういう回路してるんだ。。

↓アーカイブが残っている


そんなわけで、岸田さんが自分にとっても面白いものを拾い上げてくれる可能性がけっこうあるので、後夜祭とか来年のとか、有料マガジンとか、もう少し追ってみようと思う。

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