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どうすれば「建設的な第一読者」になれるか?(フィードバックの流儀II)

「#はじめて借りたあの部屋」コンテストで、サトウカエデ『あたしの、ひとりきりの部屋から』が、審査員特別賞を獲得した。

私はこの作品に少しだけ「第一読者」として関わっている。だから、彼女の受賞は自分ごとのようにうれしい。


「第一読者」としての関わりはとても楽しいのだけれど、難しさもある。

・無批判的な第一読者 →ほめるだけでは、良くならない
・批判的すぎる第一読者 →傷つけたら、やる気を削いでしまう

そうではなくて、建設的な第一読者になるためにはどうすればいいのか?

3つの視点/3つの習慣でまとめてみた。

① 相場を読む(品質基準)

書き手と一緒にコンテストを攻略していくためには、「どんなコンテストなのか」を書き手以上によく研究することが、効く。

特に後発で提出する場合は、公式アカウントがピックアップした記事も含め、たくさんの先行作品が読める点が有利。競合分析(Competitor)だ。今回のコンテストでは、私の本命推しの一つでもあった満島エリオさんの『正しい街』(優秀賞受賞)、それと関連して嘉島唯さんのお手本作品『東京に馴染む』をかなり読み込んでいたため、これが基準になった。

本コンテストに限らず、私は昨年かなり各種コンテストの応募作/受賞作を読み込んでいたので、note界隈で「どのくらいの文章ならいけそうか」の相場観があった。note外で、プロの作家の文章に触れる純粋読書量も、効いてくる。


さらに、コンテスト主催者(Customer)の意図を予測してみる。今回は大東建託のタイアップ案件なので、ある程度は「部屋を借りる」という行為をポジティブに捉えることを隠れ要件と読んだ方がいいだろう。

こうした「相場観」は、やはり毎日noteを量読むことで培われる。できれば、仲の良いフォロワーの記事だけではなく、編集部のおすすめや、お題・コンテストのピックアップ記事を量読み込んで、自分の中で基準をもつようにしたい。

建設的な第一読者のための習慣その1、日頃からよく読むこと。


② 相手を見る(リソース)

フィードバックした相手(Company)が「どのくらい変えられるか」を見極めるのは、かなり大事だ。

今回は締切の前日だったが、「もう一段、跳べる」と判断して、大きめの構成変更を「いけるよ、大丈夫」と言ってぶち込んだ。この状況判断は、物理的な時間量だけじゃなく、諸々の都合や、体調や、エネルギー残量によって大幅にぶれる。本人に聞いて確認するのがいちばんいい。

状況判断に加え、伝え方もある。「どういう言い方をすると届くか」「傷つける可能性があるか、大丈夫か」の見極めもある。

この見極めには、日常的なコミュニケーションの量が効く。

サトウカエデとは『サマトレ』の時点で既に一往復やりとりがあったのだけれど、その後もマリナ油森の7選を勝手にマガジンにまとめる活動を一緒にやったり、twitterで毎日のように会話したりしていたので、コミュニケーション密度は高かった。知り合って半年程度しかない。ほんの数回しか会っていない。それでも十分、信頼関係の蓄積があった。

私の場合、twitterで日常的に(毎日ではないけれど、何かあれば気軽に)会話する人はたぶん数十人単位でいる。濃淡はあるけれど、コミュニケーションの癖がなんとなくわかっている人は、そこそこいるような気がする。伝えること。応答すること。twitterのコメントのやりとりでも、十分信頼関係は築ける。

建設的な第一読者のための習慣その2、日頃からよく話すこと。


③ 作戦を立て、伝える

相場を読んでインプットし、相手を見てインプットしたところで、一緒にコンテストを攻略していくための作戦をアウトプットする。

作戦は、ゴールから逆算してロジカルに整えていく必要がある。いろいろなアイデア、数々の「気づいた点」を整理して伝える必要がある。

まずはノートに書き出して整理したり、ふせんペタペタしたり、Spreadsheetでリストにしたり、見出しと箇条書きで積んだり、

↓こんな風にマインドマップにしてみたり。

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筋道を立てて考えること、雑多な情報を構造化してまとめることは、ひとつのスキルかもしれない。仕事で日常的にしている人もいるだろうし、馴染みがない人もいるだろう。ロジカルシンキングの鍛え方はいつも困っているのだけれど、結局はこれも「考える」ことの積み上げの量が効いてくると思う。

フィードバックをまとめる時点で、読み手は一瞬「書き手」になる。作戦がうまく伝われば、推進力は倍以上のエネルギーになって、作品を変えていくだろう。

建設的な第一読者のための習慣その3、日頃からよく考えること。

💐

難しいふうに書いてしまったかもしれない。

しかし「よく読んで、真摯に考え、真摯にコメントを返す」ことは、きっと誰にでもできることだ。誰にでも可能性がある。そういうパートナーを持つこと、そういうパートナーになることは、noteの世界をけっこう広げる。

だからあなたも、誰かの「建設的な第一読者」を目指してみてほしい。


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