【読書感想】はずれ者が進化をつくる　～生き物をめぐる個性の秘密～

※　再読・感想を改めて書いた記事も投稿しています！（2022.10.25投稿）

「個性」「ふつう」「らしさ」……。最近、これらは大事だと言われることが多くなりましたが、そもそも「ふつう」とはなにか？　「らしさ」とはなにか？　と言われるとすぐに答えられる人は少ないかも知れません。

著者の稲垣氏は雑草をはじめとする生物の生き方を例に挙げ、人間の生き方を改めて考えるきっかけを教えてくれます。

「個性」とは？

生物にとって「個性的」であることは生き延びるための戦略の一つです。同じ色の花でさえ、葉の大きさや草丈を変えることでその環境下で生き延びることができ、種を残せる。
もし個性がなかったら、環境の変化などで全滅してしまうかもしれません。そういう意味ではひとつひとつが「違う」必要があるといいます。

それは人間にも言えることです。
もし「個性」がなくみな同じだったら、生きやすい反面、新しい発想も生まれないかも知れません。それこそ環境の変化に適応できず、滅びる恐れもあるのです。
おなじＤＮＡを持っていても、環境によって個性も変わるため、同じ個性の人間はいないそうです。

「ふつう」とは？

人間の脳は、バラバラなものやよく分からないものは理解しづらいらしく、そのため序列を作ったり、数字の大小で判断したりしたがるそうです。
例えば野菜を商品化するための基準を設けるために「平均値」を割り出し、それを満たした大きさのものに価値があることにする。しかし本来、野菜自体に優劣はないし、普通もありません。だから大きすぎるものも、小さすぎるものも、決してはみ出しものではないのです。

もちろん、現代社会において私たちは人が作り出した「普通」という尺度の中で生きていかなければなりません。しかし人は本来、バラバラ＝違うのが自然な姿であることを忘れてしまっています。集団を管理しやすくするためには基準も必要ですが、もっと「違い」を大切にしてほしいと著者は言っています。

「らしさ」とは？

自分らしさとは、他人から言われた自分の姿ではなく、ありのままの自分のことです。
「男らしく」「女らしく」「兄らしく」「小学生らしく」……。というのはまさに「そうありなさい」という周りからの押しつけであり、本来の自分ではないことも多いのです。
そうすることに疑問や息苦しさを感じているとしたら、一度「らしさ」を捨ててみましょう、と著者。そうすることで、本当の「自分らしさ」が見えてくると言います。

負けたからこそ進化した

現存する生物は、今の地球環境でのナンバーワンです。と同時に、棲む場所を追われた敗者でもあります。ある場所での生存競争に敗れ、ほかの場所で生き延びる道を選んだからこそ今、その種は残っているわけです。

人も「違い」や「個性」を活かそうとするなら、誰もが目指すものではなく、そこからちょっとずらした「ニッチ」なもので勝負することです。そのためには、生物が進化してきたように苦手なことにも挑戦し続けることが大切なのだと言います。

違いを活かす時代

日本は特に「和」を重んじる国で、みんなが同じであることが理想とされてきました。人と違うことは良くないこと、空気を読むことが大事という風潮は今もなお根強いでしょう。
しかし、だんだんその流れも変わってきています。
それぞれが違うことを知り、それぞれの違いを認め合う。そしてその違いを、個性を磨いて活かす時代になってきています。

人の一生は、樹木のように長くはありません。せいぜい百年くらいです。
しかし、一つの命を短くしたことには意味があるのだそうです。
それは、個々の命が全力で天寿を全うできるようにするため。
百年の間には環境も変化していきます。その変化の中でも人という「種」を残していくための戦略なのだそうです。

私たちは、命に限りがあることを知っています。本当にやりたいことを我慢している時間などないはずです。

「誰かがこう言ったから」
「～すべきだから」
「～するには能力が足りないから」

そうやって周りに言われたことを信じ、自分の可能性を狭める必要はないはずです。
能力が足りないのではなく、戦う場所が悪いだけかもしれないのです。そう考えを改めて自分の才能が活かせる場所を探すのです。
そのようにして「ニッチ」を探す時間はきっと楽しいものに違いない、と私は思います。
それはまさに自分探し。本当の自分に出会えたら、その瞬間は間違いなく幸福なものになるでしょう。

自分の好きを伸ばし、工夫を凝らし、日々進化していく。生きるということはその積み重ねなのかもしれません。五年後、十年後に、自分は成長したと思える生き方をしていきたいものです。

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