見出し画像

「オーバーライト」の装丁に唸る。

久々に、ライトノベルの表紙で唸ってしまった作品があります。

その作品は電撃大賞で選考委員奨励賞を受賞され4月10日にデビューした、池田明季哉先生の「オーバーライト-ブリストルのゴースト」。

画像1

躍動感あふれる表紙にハートを撃ち抜かれる

パッと目を引く蛍光グリーンのスプレー描写、にやりと笑みを浮かべる躍動感に溢れたヒロイン・ブーディシア。あまりの美しさに一目惚れしました。

そもそも蛍光グリーンは普通の印刷では出ない色。
通常のCMYK印刷(シアン・マゼンタ・イエロー・ブラック)では、この色をうまく表現できないのです。
そこで使われるのが特色インク。文字通り「特別な色」のインク。
ということは、印刷コストも余計にかかるということで。(実際に印刷会社のサイトなどで確かめてみてください。)
この作品の題材は「グラフィティ」、壁などに描くストリートアート作品です。
※バンクシーなどが有名
その魅力を表現するには、普通のインクじゃ難しかったのでしょうね。

今回私はネット購入だったのですが、実物を見た際もしばらく眺めてしまうくらいには、美しい装丁だと思いました。
「落書きじゃねえ、アートだ!」がキャッチコピーの今作。表紙も「飾りじゃねえ、アートだ!」という意志が、ひしひしと伝わってきました。

表紙とストーリーの相関

ライトノベルの表紙は、その装丁の美しさも見どころ。
実際店頭で目を惹いた作品を買う「ジャケ買い」的な買い方をされる方も多いですし。

実際、イラスト・装丁と作品本編の関係は重要で、ストーリーのイメージが表紙で決まってしまうことも多いと思うのです。
例えば、ラブコメの新作の表紙が、男性主人公だけが描かれているものだったら… あなたは買いますか?
硬派なミリタリー物を銘打っているのに、ゆるく、迫力のない表紙だったら?

といった感じで、ライトノベルにおいて受け手(消費者)に購入意欲を持たせるには、イラストと装丁の惹きは大きなウェイトを占めています。
この点のセンスが作品の明暗を分けることも往々にしてあるそうです。

また、読後にも表紙は効いてきます。
作品の余韻を見返した表紙が壊してしまうようでは、本末転倒。
そのバランス感覚も非常に重要だと考えています。

「オーバーライト」は現在読み進めている途中で、まだ読後感と表紙の相関まで踏み込んだことは書けませんが、まあその点は大丈夫でしょう。

購入から読後までを「デザイン」

装丁において求められるのは、購入から読後までを「デザイン」することだと考えています。
購入→読書→読了、この流れにおいて物語に装丁とイラストがどう寄り添っていけるか。ここがライトノベルにおける装丁の勘所ではないでしょうか。

ただただイメージに合った表紙があればよいのではなく、読者のイメージを掻き立て、逃さない。そんな表紙の作品を、これからも探してゆきたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?