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これは、ただの本づくりの本じゃないと思った本

最近、本をつくりたい人が増えているらしい。
今年の4月、私の友人はデザイナーだけど自費出版で本を出した。
11月には、歯科医の友人が自費出版で本を出す。

私は本屋で本を売っているが、本を”つくる”ことに、あまり興味がない。

そんな私が今年の7月、浅草で行われたブックマーケットで手にしたのがこちらの本

『いつもよりも具体的な本づくりの話を。』

本屋をするにあたって、やはり作り手のことを知らなければ話にならんのではないかと思い購入。

(いや、格好つけました。本心ではあるのですが、一番の理由はデザイナーで自費出版した友人の小林 ひかりがやたらすすめて来る「せいいっぱいの悪口」を出版した百万年書房という出版社の代表・北尾修一さんが著者だったからです。友人のすすめるものは、広くなるべく試してみる派)

読んだ感想は、率直に言うと「私も本をつくりたくなった!」とは、思わなかった。

ただ、この本はただの本づくりの本じゃない。
むしろ、出版業界だけでなく他の仕事でも活かせるんじゃないか?
タイトル、『いつもよりも具体的な仕事の話を。』でも全然いける気がする。
北尾さんを筆頭に、ここに登場する名だたる編集者さんたちのお話が超有料級なのだ。

「え、税込2,200円でこんないい話を教えていただいていいのでしょうか?」
と何度も思った。

やっぱり本っていいな。
他者の経験を教えてもらって、自分では経験できない、感じ取れない感性に触れられる。

この本に書かれていた
・著者に手紙を送る
・著者と揉めた時などなど
グッと来た。

しかしながら、表紙の帯に書かれている

「本なんて誰でもつくれる。だから、めちゃくちゃおもしろい。」

に疑問を感じていた。
(ちなみにこの帯のことばは、この本の編集者イースト・プレスの中野さんが考えられたそう)

私が編集者なら絶対言えない。
だって、自分と著者が必死に作り上げているものを、大した経験もない、何も知らないハナタレ小僧に「本なんて、誰でもつくれる」
なんて言われたら、張り倒したくなるだろう。

「ざけんじゃねぇぞ、てめぇ」だ。

本文に(私なりに解釈した)答え的なものが書かれていた。

本書のもとになったシリーズイベントを立ち上げた時、自分なりにコンセプトを固めました。それは「自分の本のつくり方は過去の遺物なので、ここから先は通用しない。だから、自分よりも年下で、現在進行形で良い本をつくっている編集者たちをゲストに迎え、私自身が教えを乞うている姿をお客さんたちに見てもらおう」ということです。

いつもよりも具体的な本づくりの話を。P.35

これほどまでに、
実ほど頭を垂れる稲穂かな
が似合うシーンはここ数ヶ月、出会っていない。

また、こんなことも書かれていた。

作家、編集者、デザイナー、カメラマン、イラストレーター。どれも資格が必要ない職業です。だからこそ、たまに「自称」みたいな人が混ざっているのですが、そのいい加減さもまた本づくりの現場の面白さです。頭の良い人が集まって頭の良さような本をつくるのもいいし。頭の良くない人が集まって頭の良くない本をつくるのもまたいとおかし。少し話が脱線しますが、今の大手出版社の編集者は一流大学卒業者ばかりなのがつまらないので、これからますます既存の出版業界が崩壊して「最終学歴・中卒です」とか「普段はホストやってますけど、本もつくります」みたいな人が増えたら楽しいだろうなあと期待しています。

いつもよりも具体的な本づくりの話を。P.26

もう天晴れですね。
私、おもしろい世の中にしたいと言っている割に、まだまだ頭が固く、可能性を狭める考えと行動をしているかも。と少し反省。

ただ、本は誰でもつくれたとしても、
それが”おもしろい"と思われるかは、また別の話だ。

これから本をつくりたいと思っている方へ
どうせつくるならおもしろい本を
読んでくれた人に何かを届けられる本を
伝えられる本をつくりたいんじゃないかと思います。
そういう本がつくりたい方はぜひ、この本を読んでみてください。
アマチュアでも可能性を広げるサポートしてくれるかも知れません。

タイトル:いつもよりも具体的な本づくりの話を。
著者:北尾修一
編集:中野亮太
定価:2,200円(税込)
+送料185円
発行所:株式会社イースト・プレス

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