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ショートショート【代償】

この世には信じられないような特殊能力を持つ者がいる。

生まれ持っている者、中には訓練で能力を開花する者もいた。

2050年になると、一部の能力は他人に渡すことができるようになり、高額で取引され始める。

渡した人間は能力を失ってしまう。

能力を欲する者は多く、犯罪に使う者も現れ始めた。



窃盗の常習犯だった男は、犯罪仲間からある情報を仕入れる。

なんと! 透明人間がいるというのだ。

男はその能力を上手く使えば稼ぎ続けられると考えた。

男は今まで他人から盗んで貯めたお金で能力を買い、透明人間になった。

もう二度と元に戻ることはできない。


前の能力者だった人は善人で、ずっと自分を苦しめてきた能力を手放せたことと、大金が手に入ったことで幸せな第二の人生をスタートできた。


ある日、能力を得た男は、犯罪仲間とともに地元でも有名な資産家のマンションへ侵入し、大金と高価な宝石を盗みだすことに成功した。

男はマンションを出て、近くの公園の駐車場で待つ仲間と合流するために早足で歩きだす。


突然、ドンッ!! っという大きな音とともに、男の身体は宙に舞い道路に叩きつけられた。

男は大金を手にしたことで気が緩んだのか、車の接近に気づかなかったのだ。

脚が折れ、血まみれになった男は助けを求めるが、周囲の人々はキョロキョロするばかりで誰も男に気づかない。


身動きのとれない男の視界に、前方から近づく大型トラックの姿が見えた。



「うわあ あ あ あ あ あ あ あーー!」


誰も居ないはずの道路に断末魔の叫びが響き渡ったと思ったら、ガコンッ! という音とともに静かになる。


駐車場で待っていた仲間は、男に裏切られたと思い腹を立てて帰っていった。


その後、道路にはなぜか多くのカラスが群がり、道行く人々が不思議そうにその様子を見ていた。




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