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SS【カラスのロボット】
ぼくは出張で家族と離れ遠い土地へとやってきた。
アパートを借りて一人暮らしをしているが、最近嫌がらせを受けている。
遠隔操作されたカラスのロボットが、ぼくの部屋の窓をつつくのだ。
窓ガラスが割れそうな勢いでつつく。
見た目はカラスそのものだが、ぼくが近づいても反応が遅い。その気になれば捕まえれるのではないかと思うくらいだ。まるで警戒心が無い。
だから誰かが遠隔操作しているロボットなんだと思う。
目の部分はカメラになっていて、こちらの様子を伺いながら嫌がらせしてるに違いない。
ただ、ぼくには嫌がらせをされるような心当たりは無かった。
毎日やってきては窓をつついて、出てきたぼくの顔をしばらく眺めてからどこかへ飛んでいく。
ある日の夜、酔った会社の人たちが押しかけてきた。
働き盛りの営業のおっさんに、若い経理の女の子、それに資材に入った若い新入社員の青年だ。
窓際に座ったのは経理の女の子。
おっさんが買いこんできたビールをみんなで飲み始めると、また例のカラスがやってきた。
いつもより激しく窓ガラスをつついて、ついには割れてしまった。
と、同時に電話が鳴る。
奥さんからだ。
「ちょっと!! そこに居る若い女は誰よ!!」
ぼくはため息をついた。
「なんだ君だったのか。カラスを遠隔操作していたのは・・・・・・。」
奥さんはギャーギャーと喚きたてたが、ぼくがカラスを部屋に入れて酔っぱらったみんなの姿を見せると、やっと誤解が解けた。
カラスは現在、たまに充電しながら部屋の中で飼っている。
終
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