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140字小説【大盃】

私たち若夫婦はああ言えばこう言うお猪口だった。建設的な議論は期待できなかった。私たち中年夫婦は価値観の違う平盃だった。傷つくくらいならと仮面を被っていた。私たち夫婦が高齢者と呼ばれるほど歳を重ねた頃、お互いを受け入れる大盃が完成した。別れる気配など、霧の中の一粒の水滴ほどもない。


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