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SS【ゲームオーバー】
顔に刺さる強い陽射し。
背中に当たるゴツゴツした感触。
耳に届く打ち寄せる波の音。
ぼくは仰向けで倒れていたらしい。
「ここはどこだ?」
身体を起こしたぼくの目に映ったのは、果てしなく続く大海原。
よく晴れた青空の下、ぼくは照りつける太陽と、その暑さから逃げるように海とは反対方向へ歩きだした。
木々の間を通り抜けながら、数分の間にどんどん標高が高くなってくるのが分かる。
息を切らしながら早足で登り続けると、見晴らしの良い場所に出た。
どの方角を見渡しても見えるのは海。
ぼくが立っているのは小さな島。
おそらく無人島だ。
建物はおろか人の気配すらない。
意味が分からずその場で座り込む。
うつむいたぼくの視線の先にあったのは、上着のポケットから顔を出すメモ用紙。
そこにはこう書かれていた。
(お疲れさまでした。あなたは賞金一億円のゲームに負けて、罰ゲームを受けることになりました。罰ゲームの内容は、ゲームの記憶を消され無人島へ島流しです。ゲーム終了までにあなた以外の参加者全員が死亡した場合は、敗者復活であなたの勝利となります。そうでない場合は一生ここで生活して下さい)
ふと空を見ると小型のドローンがホバリングしている。
どうやら罰ゲームの様子を誰かがどこかで観ているらしい。
ドローンには大きく赤い数字が表示されている。
最初は二桁だったその数字は、時間とともに減っていき、ついには1になった。
それから一時間後、一機のヘリが海岸に着陸した。
ぼくに近づいてきたのは、目つきの悪い屈強そうな男たちを従えた白いスーツの男。男は自分がゲームの主催者だと言った。
「おめでとうございます。あなたがゲームの勝利者になりました」
ヘリに乗り込んだぼくに手渡されたのは、ケースにぎっしり詰まったお金。一億円あるらしい。
高速で本州に向かうヘリの中で、ぼくの脳裏にゲームの記憶が蘇ってきた。
「そうだ、このゲームは家族で参加していた。奥さんや娘たちと一緒だった。だからぼくにとってはもうゲームオーバーなんだ・・・・・・。」
「タバコありますか?」
ぼくがタバコをくわえると、白いスーツの男はさっとライターを取り出し火をつけた。
「本当は禁煙ですけど特別ですよ」
ぼくはケースを開け、しばらく札束を眺めたあと火をつけた。
「メーデー!! メーデー!!」
機内に煙が立ちこめ視界は失われた。
コントロールを失った機体は海へと墜落した。
ゲームオーバー。
終
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