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SS【最後のサメ】551字


ぼくが小学六年生の時、友人たちの間でサメってゲームが流行ったんだ。

休み時間になると体育館のステージ前にあるひな壇に集合するんだ。ひな壇は三段あった。

じゃんけんで負けた一人がサメ役になってひな壇の上を逃げ回る人に下から飛びかかったりしてタッチする。

そしたらタッチした相手とサメ役を交代する。

サメはひな壇を踏むことはできない。

まるで船の上の人間に襲いかかるようにタッチするからサメって名前が付いたんだ。

でも一人だけひな壇の最上段だけを移動する奴がいた。サメは最上段にもギリギリ手が届くけど、最上段だけを移動されたらタッチするのはほぼ不可能。

だから楽しむためにワザと危険な下段に降りてきてサメを挑発したりする。左右に逃げたり下段に降りてサメを誘ったり、ギリギリの駆け引きがおもしろいのさ。

数えきれないほど遊んだのに最上段だけを逃げ回っていた奴はたった一度しかサメにならなかった。卒業間近の最後だけだよ。

みんながそいつを力ずくでサメの前に押し出したのさ。みんな密かに不満がたまっていたんだろうね。

この前三十年ぶりに同窓会があってね。みんな見た目はけっこう変わっていたけど面影があって、いつも一緒に遊んでいたメンバーはすぐに分かったよ。

みんなもぼくのことをしっかり覚えてた。



「あっ!! 最後のサメだ!!」って。


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