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SS【人々を苦しめているもの】


時は2050年。

この世からお金と呼ばれる物が無くなり、代わりに登場したのがライフポイントである。

それを失えば人は生きていけない。

ライフポイントは生命エネルギーなのだ。


誰しも生まれた時点で30〜100ポイントを保有している。

国からは毎月一人一律7万ポイントが死ぬまで支給される。

国は個人の保有ポイントを把握しているようだ。


質素な暮らしをすれば毎月7万ポイントだけでも生活はできる。

それでも多くの人は働いてポイントを稼ぎ、ある者は家を買い、ある者は趣味に使う。


ライフポイントは譲ることも相続することもできないため、死ねばどんな大富豪も0になってしまう。

病気になり体力が落ちると、それに比例してライフポイントは減り続ける。

30を下回れば自分の足で歩くことは困難だ。


現在ぼくの保有ポイントは10万ポイント。

十五歳の時から四十年間働き続け、老後のために蓄えたライフポイント。

しかし原因不明の病気に苦しめられ、働いても働いても、穴の空いたバケツに水を注いでいるかのように貯まらない。


病は年々悪化し、ついにポイントは貯まるどころか減り始める。

いよいよ明日にはポイントが無くなるという時、行きつけの病院から、「病名が分かったので来てください」と連絡が来た。


藁にもすがる思いで先生の元へ駆けつけると、先生はため息をつきながらこう言った。


「数種類のウイルス感染が確認されました。中でも特に毒性の強いものが、所得税、消費税、住民税、固定資産税です」


「先生!! なんですかそれは??」


「昔から姿形を変えながら人々を苦しめるウイルスたちですよ。今からでも遅くありません。早速ウイルス対策を始めましょう!!」

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