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みかんが宙に舞うだけ。どうしてこんなに美しい?

みなさんは「芥川龍之介」と聞いて、真っ先に思いつく作品はなんですか?

真っ先に思いついたのが「羅生門」という方は多いのではないでしょうか。

老婆と盗人のやりとりから善悪のせめぎあいの様が苦しいほど感じることができる、もはや国語の教科書の定番といっても差し支えないほどの作品です。

今回感想文として題材にするのはこの羅生門…ではなく、同作者の「蜜柑」という作品です。


記事タイトルの通り、この作品内では「蜜柑」が空高く舞うシーンがあります。これが1番の見どころ、読みどころなのです。

主人公は心に余裕がありません。常日頃から怠さ、つまらなさを抱えています。そんな主人公は列車内で、みずぼらしい少女と出会います。

話の流れとしては本当にこれだけ。場面も移ることはありません。ですが、大きく変わるものがあります。

それが主人公の心情です。主人公は、「蜜柑が舞うこと」でその気持ちが変化していきます。

「蜜柑が舞う」。ただそれだけでどのように鬱々としている主人公の気持ちが変化していくのか?

該当シーンでは主人公の気持ちの移り変わりやオブジェクトの描写、何から何まで温かみを感じる美しさで溢れています。どの文を切り取っても、脳がその情景を補完するのをやめてくれないほど読者の頭の中にはジオラマのようにその背景が広がります。

芥川自身の体験を元ににした物語なので、よりそのリアリティをひしひしと感じることができるのではないでしょうか。

15分程度で読めるため、老若男女問わずさまざまな方に読んでいただきたいのですが特に、


・芥川龍之介読んでみたいけどどこから手をつけたらいいか分からない方
・羅生門はなんだか肌に合わなかった方
・小説を読むと、物語が脳内で鮮明に流れる方

ここに該当する方に対しては、より一層胸を張っておすすめ!と言えます。

羅生門と比べ、後味が爽やかを極めておりすっきりまとまっているので「こんな物語もあるのか!」と衝撃を受けるはず。

読書中に、「色」「映像」をこれでもかというほど食らったのはこの作品が初めてでした。ぜひ。

また、2022年10月1日からこの「蜜柑」をテーマにした絵画コンクールが応募開始されるそうです。

このようなコンクールが開催されるのも、やはりこの作品の持つ「情景を想像させる力」が大きいのだろうと感じました。

ご覧くださりありがとうございました。



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