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自作短編 第十弾 『僕と昼寝』

以前小説サイトにて書かせていただいた短編のうちの一つを書き直したものです。昼寝ってとても気持ちいいですよね……その時の気分を振り返って執筆しました。


『僕と昼寝』

 涼しい草原に来て、一人横になる。

 風を浴び、ぼんやりと空を見上げながら昼寝をする。

 最高なんだな……これが。

「君は本当に昼寝が好きなんだね」

 一人の少女が喋る。麦わら帽子を被りワンピースを纏う無邪気な人だ。

「悪いかい?」

「いえいえ、悪くないですよ」

「ここは昼寝には最適な場所だ。人も少ないし」

「私は邪魔?」

「そうは言ってないだろう……君がいても別に嫌じゃない」

「なら嬉しいけれど」

 ぼんやりと寝心地がよくて意識が曖昧になっていく。空は僕を優しく包んだ。

 …

 …

 …

「貴方は本当に昼寝が好きなんですね」

 一人の姫が喋る。活発なようで上品で、ドレスが似合う女性だ。

「姫様……貴方は身分の高いお方です。僕のような卑しい身分の人間と出会ってはいけません」

「またそういう意地悪を言う!」

「別に言いたくて言ってるわけじゃないですよ……」

「なら貴方はそんなことを気にしないで、いつも通り私とたくさん喋っていればいいのです! 貴方は私の知らないことをたくさん知ってますから!」

「王城の図書室の方が、知らないことを多く学べると思いますが」

「あそこは堅苦しい知識しかないから好きじゃないの。やっぱり貴方が語る生きた経験こそ、意味があるのよ」

「買い被りすぎですよ」

「お世辞なんて自分より下の身分には使わないわよ?」

「……ありがとうございます」

 本来は身分の違う二人がこうして一緒にいてはいけない、彼女は僕なんかといてはいけないのだ。しかし、僕は止められずにいる。この空間を、ひとときを、楽しんでしまっているのだ。

 ぼんやりと寝心地がよくて意識が曖昧になっていく。空は僕を優しく包んだ。

 …

 …

 …

「勇者様は本当に昼寝が好きなんですね」

 一人の僧侶が喋る。まだまだ未熟ではあるが努力や探究心はパーティー随一で、本当に誇るべき仲間だ。

「たまにはいいだろ? こうやってのんびりするのも」

「たまには……じゃないから怒ってるんです!! みんなで明日のルートについて話し合わないと!」

「まあまあ。怒るなよ、僧侶。それより空を見てみてよ」

「そらぁ? 空って言ったってなんにもな……わあ、きれい……!」

「星空ってなんでこんなにきれいなんだろうなあ」

「……理由は分かりませんけど、とてもきれいです」

「ああ、僕もきれいだと思う。ところでさ、僧侶」

「……なんですか?」

「魔王はさ、空を雲で覆い隠すんだよ」

「……」

「僕は決して人類が好きなわけじゃない。醜い争いばかりをするこんな人類。多くの命を奪い生態系のバランスを崩すそんな人類。ろくなことをしない」

「……」

「でも魔王が人類を滅ぼしてこの星を支配してしまったら、あの星空を、もう二度と誰も見れなくなるんだ。それは少し……寂しいと思わないか?」

「……思います」

「だから僕は諦めないんだよ、この昼寝の時間がとても好きだからね」

「私も守りたいです、この星空を」

「それで十分だよ」

「じゃあ行きますよー勇者様!」

「悪いけど僧侶、僕はもう少しここで寝ていたいや。後で行くから先に話し合っててくれないか?」

「ダメに決まってるでしょ!」

「この星空をしっかり頭に焼き付けておきたいんだ。最後かもしれないから」

「……」

「頼むよ、僧侶」

「……はいはい、分かりましたよ。あっ、一ついいですか?」

「いいよ」

「星空を眺めながら寝るのは昼寝じゃないですよね?」

「ははっ、僧侶は細かいところを気にするなあ」

「笑って誤魔化さないでくださいよ!」

 ぼんやりと寝心地がよくて意識が曖昧になっていく。空は僕を優しく包んだ。

 …

 …

 …

 涼しい草原に来て、一人横になる。

 風を浴び、ぼんやりと空を見上げながら昼寝をする。

 最高なんだな……これが。

「君は本当に昼寝が好きなんだね」

 一人の少女が喋る。麦わら帽子を被りワンピースを纏う無邪気な人だ。

「悪いかい?」

「いえいえ、悪くないですよ」

「ここは昼寝には最適な場所だ。人も少ないし」

「私は邪魔?」

「そうは言ってないだろう……君がいても別に嫌じゃない」

「なら嬉しいけれど」

 ぼんやりと寝心地がよくて意識が曖昧になっていく。空は僕を優しく包んだ。

 ふと気付く。

 こんな場面が何度もあったことに。

 そして妙に現実味のあった、あの夢たちを振り返っていく。

「昼寝の前に一言いい?」

「どうぞ?」

「僕はどんな世界でも君と喋りながら昼寝をするのが好きらしい」

「へえ……新手の口説き文句?」

「いえいえ、本当のことを言ったまでですよ」

「……あっ、そう」

 ぼんやりと寝心地がよくて意識が曖昧になっていく。空は僕を優しく包んだ。

「ありがとう」

 寝ぼけてそう言ったとか、言ってないとか。


これにて短編『僕と昼寝』は以上です。独特な世界観……楽しんでいただけたでしょうか。少しでも貴方の人生に何かを与えられたなら、幸いです。また、ここからは少しお知らせです。

毎日投稿はとりあえずこの十作目でストップさせていただきます。もちろん、これからも投稿は頻度多めに努力していく所存ですが、毎日はここで一旦……ということで。次回作も頑張りますので、気楽に待っててくれるととても嬉しいです。ではまた。

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