鍵の音

夜が明ける瞬間がいちばん暗闇だって

あなたが教えてくれた

いつもここで目が覚める

いつものようにあなたはベッドを下りる

つま先を2回叩いて靴を履く

まぶしいスマホを覗いてポケットにしまった

鍵の音のしない扉

そっと指をはさんで静かに閉める

その仕草がきらいだった

煙草の匂いがきらいだった

酔うと方向音痴になるところも

指に絡まる細いくせ毛も

ご機嫌取りの簡単な嘘も

ぜんぶきらいだった

足音がきこえなくなるまで

ずっと扉を眺めた

そっとそっとそっと

鍵を締めたら

もう2度と開かないように

そっとチェーンを締めた

あなたが好きだといっていた

ほくろが消えていたことに気がついた


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