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40代目前。半年間の休職が教えてくれた「ウェルビーイングな働き方」【前編】野口結生さんのLife journey

「働き方」それは何歳になっても永遠のテーマであり、ライフステージやキャリアアップなど、様々な状況によって変わるものかもしれません。そんななか、最近では「ウェルビーイング(Well-being)」という概念が、自分に合った働き方を考える上で新たな基準として用いられるようにもなってきました。

2023年10月。株式会社ブライド・トゥー・ビーの取締役COOを務める野口 結生さんは、向こう10年の働き方を考えるために半年間の休職をすることを決めました。

「もともとウェルビーイングに生きてこれたとは思いますが、それがなぜなのかは言語化できていなくて」そんな休職前を振り返る野口さんは、一体どんな時間を過ごしていたのでしょうか。休職中の体験や挑戦、学びから得た気付き、そして再確認したウェルビーイングな働き方についてお聞きしました。

野口 結生/株式会社ブライド・トゥー・ビー 取締役COO
新卒にて(株)インテリジェンス(現パーソルキャリア)にて人材紹介に従事。2009年ブライド・トゥー・ビー入社。プランナー、エルダンジュナゴヤ支配人を務める。2015年東海エリアを中心とした地域のブライダル関係者の情報交換を主催する「東海ブライダル交流会」を立ち上げ。2017年より取締役COOに就任。2021年より愛知ウェディング協議会理事に就任。




これからの10年の働き方を考える


━━野口さんは、今回なぜ休職することに?

野口さん(以下、敬称略):一言で言うなら、休職前の僕は仕事に対して自分の内側から湧き出るものがなくなってしまったんです。

コロナ禍、会社がブライダルがメインの事業をしていたこともあり、一気に売り上げが落ち込んだ時期があったんですね。「なんとか守らないと」それだけを想って働き続けていました。

その時期が空けてようやくコロナ前よりも業績が上がった時、安心感はもちろんあったけれどやり切った感というか、出しきった感覚もあって。スポンジを絞ってもなにも出なくなってしまった感覚というか。今のままだと、会社や後輩に与えられるものがない自分の状態に危機感を感じたんですよ。

同時に、少なくともあと10年は働く自分を想像した時、個人とか会社の枠を越えた「社会の役に立てること」をやっておきたいと考えるようにもなったんです。


━━会社に不満はないけれど、このままの自分ではいられないと。これからの働き方を模索するために”動くなら今だ”と思ったんですね。とはいえ「取締役が休職」という知らせに驚いた社員もいたのでは?

野口:会社のほぼ全員、当日まで知らされていなかったので驚いた人もいたと思います。でもみんな口を揃えて「僕らが頑張るので安心して行ってきてください!」と送り出してくれて。すごく頼もしかったですし、嬉しかったですね。

2023年10月のキックオフにて
見送ってくれる会社のみんながいたから、安心して休むことができました。

━━ちなみに、野口さんが利用された自社の「永年勤続制度」とはどんな制度なんでしょうか?

野口:これは、会社から長く勤めてくれている人に「お祝いをギフトする制度」なんです。例えばオーダースーツを作ったり、ミシュランのレストランに行けたりと、勤続年数によってどの体験にするかは選べるようになっていて。

制度の背景として、これは今の時代と考え方が逆行するかもしれませんが、やっぱり会社にとっては長く働いてくれる人というのは財産だと思っていて。そこで、長く尽力してくれている人に良い時間、経験を贈ろうという意図が含まれているんですね。…といっても、僕みたいに半年間休職を選ぶ人はほとんどいないと思うんですけどね(笑)


自分の原点を辿る/家族と過ごした一ヶ月のニュージーランド生活


━━休職期間は、何をされていたんですか?

野口:最初の一ヶ月はニュージーランドへ行っていました。というのも、休職することが決まった時に尊敬する経営者から「休職100選でも作ってみたら?」と提案を受けて、一番最初に思いついたのが”家族とゆっくりニュージーランドに行くこと”だったんです。

学生時代に一度、ワーキングホリデーで訪れたこの国は、自分の原点というか第二の故郷のような場所なんですよね。

一日おおよそ200kmほど車で走り、街を点々としながらキャンプサイトやログハウスに泊まりました。移動距離はおおよそ5,000km。家族と自然と共に過ごす時間はとても豊かでした。
湖がとにかく美しかったです。サーフィンが好きな僕は、ずっとその好きな理由が分からずにいましたが、今回NZに行ったことで”自然のなかにいる時間が好きだからだった”ということに気付きました。


━━「原点」や「大きな影響を受けた」と話していましたが、それはどんなことでしょう?具体的にお聞きしたいです。

野口:僕は割と何に対しても客観的に物事を捉えられる方だと思うのですが、その原体験はニュージーランドで圧倒的に内省の時間を取っていたからだなと気付いたんです。これまでもいろんな人と生活を共にしてきたけれど、あんなに一人で過ごす時間って人生で初めての経験だったので。

ワーホリに訪れていた当時


野口:
異国の地でマイノリティになる時間に自分と対話し続けたことで、今の自分の強みでもある「俯瞰する力」が培われたんだと思います。

改めてこの一ヶ月を今振り返ってみると、帰国してからいろんなことがリセットできたなという感じがありますね。ゆっくり立ち止まって自分のルーツに目を向ける時間にもなりました。


━━ここでの時間は、自分にもご家族にも向き合う時間だったのではと思いますが、家族の方との関係性には何か変化はありましたか?

野口:特になかったですね、良い意味で。確かにこんなに一緒に過ごすことは今までなかったけれど、それぞれの人生を尊重するという家族の価値観というか、大切にしたいことはこれまでと変わらないんだなぁと思いましたし、その関係性が安心でもありました。

家族とのNZ暮らしは
休職中の大切な思い出のひとつです。


理想の働き方の実現に向けて


━━一ヶ月の海外暮らしを終え、帰国してからは何をされていたんですか?

野口:
複業を始めました。もともとこの期間中には、自己実現に向けて何か新しいことを学ぶか働きたいと考えていたんですけど、ちょうど休職直前、前職の友人と話す機会があって。

以前から、その人が代表を務める会社の事業に興味を持っていたんです。話を聞くなかで改めて挑戦してみたいと思い、その意志を伝えたところ受け入れて頂けることになりました。


━━そこではどんな事業を?

野口:チームメンバーと一緒に地域や行政の間に入って地域課題を解決したり、スタートアップと事業会社の間に入って新たなエコシステムを作ったりしていました。

野口:社会の役に立つことをやりたいと思っていた僕にとって、この事業はまさに日本の未来を一歩でも二歩でも良くするために進めていく実感がして。楽しくもあり、同時に難しさもあり、新卒の時のように学ぶことも多くて新鮮でしたね。

関わる人もこれまでとはまた少し違って、みなさんの野心を持って前のめりの姿勢がすごく刺激になりました。

地域が継続的な発展をしていくためのエコシステムについて考えるプロジェクトを支援


野口:
もちろん、今働いている会社に不満はありませんし、むしろ他の働き方を経験したからこそ改めて自社の環境の良さにも気付くことができたり、どちらの魅力も再確認する経験でした。


━━会社のため、社会のため。どちらも野口さんの「これからの働き方」を考える上で大切なもので、そのどちらでも自身の能力を発揮する場所ができたんですね。

野口:そうですね。もう一度いろんなものを吸収できた感じはありますね。もうひとつ、休職期間にFOLKEで学んだことも、まさにこのタイミングで必要なことだったんだと思います。

FOLKE…「幸福学×対話」を通して本当の自分で生きるを実現するウェルビーイングスクール



ウェルビーイングに生きてきた人生の裏付け


━━FOLKEはどういった経緯で?

野口:受講するきっかけは、代表の桜子さんや若曽根さんにお声掛け頂く機会があって。僕はこれまで比較的ウェルビーイングに生きてこれたと思うんですけど、それがなぜかは言語化できていなかったんですね。

自分と向き合う時間が持てたこの休職期間だからこそ、それを体系的に理解することができれば、もっと誰かの役に立つと思って学ぶことにしたんです。

FOLKE代表の喜多桜子さん(右下)と
若曽根さん(中央)

━━「働き方」の軸にもなる「自分の生き方」への解像度を上げていたんですね。

野口:そうですね。僕はこれまでを振り返ってみると「困ること」「悩むこと」があまりない人生だったんですけど、それができていた理由として2つ理由があったと解釈していて。

ひとつは、自分のことが客観的に見れて自分との対話ができていたこと(これは旅暮らしもあってより深まりました)。あとは心身の健康に加えて、良い人との繋がりがあったことでした。

もともと一時的な幸せ(ドーパミン)を求めることが少なかったからこそ、そこが基盤になって悩まない人生だったんだなと思います。

他にも、FOLKEでの学びのなかに「自分で選択をすると幸福度は上がる」という言葉が印象的で。僕は、今の人生は自分で選択してきたってすごく思えているので「やっぱりそこだったのか」と今までの生き方に確信を持つことができましたね。

FOLKEでは沢山の良い出逢いにも恵まれました。


━━人生で大切にし続けてきた価値観が、より確かなものになっていったんですね。野口さんはもともと、自身の強い価値観(美意識)をお持ちのようですが“頑固さ”ともまた違うように感じるのはなぜでしょう…?

野口:それは恐らく、今の話と矛盾しますが人生は自分で決められることばかりじゃないとも思っているからだと思います。だから自分が決められる選択肢から選び取り、それでよかったと思えるようにするだけなんだろうなと。

例えば、僕には今【取締役】という役職があるけれど「なりたい」と思って目指したわけではないんですね。その機会が提示された時、思ってもいない道だったけれど「そう言われるということは、何かあるはずだからやってみよう」とその役割を担うことに決めたんですよ。

そもそもその選択肢は自分で選べるものばかりではないけれど、あるもののなかで自分が決められることもある。そこからきちんと取り組んでいくことで「自分の道」が続いていくんだと思います。

自分が想像もしていなかった場所にいるのは
ある意味偶然でもあり、選んで決めた先に必然的にあったものだとも思っています。


━━もしかすると「できるかも」と思えたり、且つ先の未来に向かって「これをやったら良いことあるかもしれない」という、未来への希望を持ってみえるのかもしれませんね?

野口:そうかもしれません。どういう状況でも、今の取り組みがちゃんとしたものであれば良い未来に繋がっていくと思っています。だから、自分で決められないところも、決められるところも含めて計画的偶発性というか。遠い先の目標があってというよりも、今の積み重ねが”より良い今”の自分を作っているなという感じです。

━━全てが想像できているわけではないけれど、そこに何かあるはずだという直感のような信念がある。キャリアにおいても、人生においてもそれが野口さんの軸として選択する際に大切にしてきた価値観だったんだろうなと思いました。




この休職期間、様々な”はじまり”がある一方で、区切りをつけたものもあると話す野口さん。半年間を経た今、改めて考える「ウェルビーイングな働き方」とは?

後編へ続く



一人一人にその人にしか語れない人生がある。いろんな人の人生や想いを遺すことで、誰かの人生が誰かの勇気や励みになる。その活動に活かさせていただきます🕊