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♪合唱♪4曲目「最後のチャイム」

3度目の卒業担任。
一緒に学年を組む先生と、卒業生合唱曲を何にするか話し合いました。
世の中には、卒業式にぴったりの素晴らしい曲が山ほどあります。だから、このときの話合いもすんなりと決まったわけではなく、かなり難航した記憶があります。

ちなみに、「旅立ちの日に」という曲があります。
本当に素晴らしい曲で、過去の2度の卒業担任時はどちらも「旅立ちの日に」を選びました。3度目となるこの年、「旅立ちの日に」はやめようと思いました。その理由は3つありました。

1つ目。
その前年も、その前の年も、卒業生が「旅立ちの日に」を歌っていたからです。どの先生方も、やはりこの曲が好きなのですね。その気持ちはよく分かります。

2つ目。
私自身、3度目の卒業担任で、違う曲にもチャレンジしたかったからです。「同じのがダメ」ということは決してないのですが、新しい曲にすることで、新たな発見や新たな世界が広がるような予感があったからです。

3つ目。
これは、知り合いの中学校の先生から言われた経験によります。その先生は「『旅立ちの日に』は中学生で歌わせたい。中学生の混声で歌うのがとても美しく響く曲だから。だから、中学生の卒業合唱曲として、小学校ではとっておいてほしい。」というようなことを言っていました。私はそれを聞いたとき、「なるほどそんな考え方もあるのだなあ。」と妙に納得したのを覚えています。小学6年生でも、美しい合唱になります。小学生が歌ってはいけないということなど決してありません。でも、確かに男性パートがしっかりと支える混声の感じは、小学生には出せない深みがあります。

ということで、この気持ちを一緒に学年を組む先生に伝えたところ、快く受け止めてもらい、他の曲をあたることになりました。そして決まったのが、「最後のチャイム」でした。


12月のことです。
音楽の時間に、卒業式の合唱曲を初めて6年生に紹介したときのことです。
私は、どのような伝え方をすると子どもたちの心により印象的に残るのか考え、次のような流れにしました。

①歌詞だけ見せる
まず、歌詞を拡大した模造紙を黒板いっぱいに張りました。そして、歌詞を一人一人がじっくり味わう時間をとりました。

②感想を交流する
歌詞を味わったあと、子どもたちに感想を聞きました。
「自分も同じような経験がある」という発表を聞いて、他にもうなづいている子がいました。我々がこの曲を選んだ理由の一つにこの曲の歌詞のよさがあったので、子どもたちからそういう反応があったことはとても嬉しかったのを覚えています。

③曲を聴かせる
授業が始まって半分くらいの時間が経った頃、ようやく曲を最初から最後まで聴かせました。私は現役のとき、国語や算数や、どんな授業でもそうですが、子どもたちの表情や仕草をよく見るように心掛けていました。心掛けるというか、もうそれが当たり前なので、意識しなくても子どもたちを見ます。一部の子たちではなく、全体を。全体をみるのだけど、なんとなく眺めるのではなく、一人一人を見ながら全体をみる感じ。

歌詞を見ながら聴く子。
何となく宙を見ながら聴く子。
その反対にうつむきながら聴く子。
隣の子とニコニコしながら聴く子。

思い思いの聴き方をする子たちを眺めながら、曲は最後の伴奏を終え、音が消えました。教室が、シーンとしました。そして、その後ホッとした感じで子どもたちに笑顔が見られました。最後の合唱曲として、この曲にしてよかったなあと、感じた瞬間でした。

最後のチャイム

チャイムが鳴った
最後の授業の終りを告げて
そうしていつものあいさつしたけれど

誰もがみんな
一瞬だまって顔見合わせた
ぼくたちの思い出が遠い空へと返る

はじめてとびばこがとべた日のこと
雪の日 まっ白にそまった校庭
ささいなことでけんかして
体育館のかげで泣いたこと

今 卒業のとき
胸にこみあげるものがあるけれど
まっすぐ顔をあげて
さよならの向こうには何かがきっと待っている

チャイムは 今も
こころをゆらして鳴りつづけてる
きょうの日をいつまでもとどめおきたいけれど

あだ名で呼び合って笑いすぎた日
花壇のひまわりは青空高くに
つくえのすみのイニシャルは
消さずにおいていてもいいだろか

今 卒業のとき
道はすこしずつわかれゆくけれど
勇気と希望 もって
さみしさをのりこえて明日へつよくふみだそう

今 卒業のとき
さよならの向こうには何かがきっと待っている

「最後のチャイム」
作詞:山本 惠三子 作曲:若松 歓




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