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印西市市民活動支援センターで「市民活動スタートアップ講座」を実施しました

印西市市民活動支援センター主催「市民活動スタートアップ講座」の講師をIRODORI代表の谷津が務めることになりました。

「こんなことやりたいな」というイメージを持っている方や、「地域で何かをやってみたい!」と感じている方を対象にした講座です。

全3回を通じて、自分のできることと地域資源を活かした地域での活動のおこしかたについて学び、一歩目を踏み出すことを応援していきます。

こちらの記事では、講座1回目の様子をお伝えします!

市民活動スタートアップ講座2022:詳しくはこちら

センター長の北村さんからご挨拶いただきました

市民活動支援センターは、その名の通り市民活動を支援する施設です。市民活動に関するさまざまな情報提供や各種相談の窓口、そして会議室等の貸し出しや各種講座などを開催しています。

IRODORIメンバーの影山さんは複数の自治体でNPO支援センターのコーディネーターを担われていて、印西市も影山さんが担われているエリアの一つです。

千葉県印西市について

印西市は人口108,922人(令和4年7月時点)。全国住みよさ総合評価1位を獲得したこともあるエリアです。都心や成田空港へのアクセスも良く、通勤通学に便利とされています。

印西市内も様々なエリアがあり、千葉ニュータウン中央駅の周辺は新興住宅街でファミリーの移住も増えており、他には田園・山林の風景が広がるエリアもあります。市街地と自然環境が共存しているまちです。

講座のはじめに、参加されている方々の自己紹介を行いました。

小学生の娘さんがいて、子ども食堂に興味があって勉強のためにきた、という方。

印西市に移住して数年。山村エリアに住んでいて、あまり子どもたちの姿を見る機会が無いことが寂しく、未来のために何かできないかと考えている方。

地域活動を行い始めたけれど、自分が貢献できている実感が持てずヒントを探しているという方。

そして、別の地域では活動しているけれど、自分が暮らしている印西市では活動ができていないので何かきっかけがつかめればという方も複数名いらっしゃいました。

子育て、就労支援、文化振興、食、スポーツ、芸術などなど。多様な背景を持ち、それぞれの興味関心を持った方々が集まってくださいました。

地域におけるスタートアップとは

そしてここからは谷津による講座です。最初に今回のテーマである「地域におけるスタートアップ」の定義について、理解を深めていきます。

一般的なスタートアップの定義はこう言われています。「急成長をする組織のこと。わずか数年間で数千億円の価値評価が付く会社や、数十年で世界を変革するような事業を行おうとしている会社などをさします。急成長をする組織であれば、組織の規模や設立年数などに関わらず、スタートアップに該当します」

なかでも「世界を変革するような事業を行おうとしている」という部分。地域の課題を解決するような取り組みこそ、地域におけるスタートアップです。

今回の講座で目指すのは、自分が持っている素材を可視化し、自分たちからできることからスタートして活動を起こしていくこと。それが結果的に地域が良くなる取り組みが生まれてくるというアイディアを考えることです。

印西市には、どんな課題がある?

では、印西市の「地域の課題」は何でしょうか。参加者の皆さんに聞いてみると、様々な声が挙がりました。

  • 子どもがコロナ禍で居場所が無く、寂しいおもいをしている

  • 地域間でつながりが薄くなっている

  • 文化が育まれる環境が乏しい

  • 印西市内でも地域ごとに差がある(買い物・交通の便・教育施設・人口など)

  • 働く場所の多様性が無い

  • 交流の場に行くための足が無い

  • 外国人が日本語の習得が難しくコミュニケーションがとれない

  • 情報が遅れている

  • 祭りが欲しい

  • 商業施設内の空き店舗が増えている

バックグラウンドが違えば見えてくる景色が違い、課題と感じるものも変わってきます。

VUCAの不確実性の時代に必要なエフェクチュエ―ション

こうした課題に対して自分に何ができるんだろう、と考える際に参考にしたいのが「エフェクチュエ―ション」という考え方です。

インド人の経営学者サラス・サラスバシー氏が、著書「エフェクチュエーション:市場創造の実効理論」のなかで提唱した実行理論です。

現代の優れた起業家に共通する意思決定プロセスや考え方を発見し、体系化されたものとのこと。それは「自分が持っている手段から新しいゴールを発見していくこと」とされています。

これまでは「先に目標を決めてアプローチをする」という目標制定型が主流でした。人口が増えていき、未来の予測がある程度できる時代においてはこれが有効でした。

しかし、現在は不確実性の高いVUCAの時代。自分が持っている手段から新しいゴールを発見していく問題解決型アプローチが「エフェクチュエ―ション」なのです。

自分の手持ちの手段とは、「3つの資源」として下記のように分けられます。

1つ目の「自分が誰であるのか」は、自分の特質・能力・属性のことを指します。2つ目は「何を知っているのか」。どんな教育を受けてどんな専門性を持っているか、どんな経験をしてきたかのことを指しています。

そして最後3つ目は「誰を知っているのか」。協力を仰げそうな人のネットワークは、自分の活動を後押しするものとなります。

身の回りにすごい活動をされていると感じる人たちも、よくよく活動の成り立ちを追ってみると、まずは自分ができることから取り組んでいるというのが見えてくるのではないでしょうか。

実際にIRODORIで伴走支援している福島県矢祭町の地域おこし協力隊の事例をご紹介し、理解を深めていただきました。

マンダラートで自分が持つ資源を整理しよう

では、この3つの資源を可視化していくワークを行います。「マンダラート」というフレームワークを活用して、これまでの自分の人生を振り返りながら「自分が持っている材料を棚卸し」していきます。

マンダラートは、自分のたな卸しをする際に非常に有効なフォーマットです。中央のマスに自分の名前を。その周辺のマスに自分のキーワードを9つ挙げて、それぞれを深掘りしていきます。

ここで自分と向き合い、個別に作業をする時間をとります。みなさん夢中になって取り組んでくださいました。

しばらく行っていただいた後、グループになって共有し合います。マンダラートを通じて3つの資源を共有し合うことで、自分では普通だと思っていたけれど、実は貴重な経験やスキルがあるということをグループメンバー同士で可視化することができます。

自分が当たり前に持っている知識も「知らなかった!」と言ってもらえると自信になります。また、「これもできるんじゃない?」という自分では思い付かなかったアイディアをもらったり。

これまで人のサポートに回ることが多かった、と言って控えめな様子だった方も、圧倒的に情熱をかけられるものがあって、挑戦してみたらどう?と背中を押す言葉をもらえている場面もありました。

ある参加者の方の例をご紹介します。その方はこれまでキャリアコンサルタントや産業カウンセラー、障害を持つ人のサポートなどのご経験がある方でした。

プライベートでは旅行が好きで、その地域でお酒を飲むことが楽しみといいます。そこで、グループで話して出たアイデアが「人生相談バーテンダー」をやってみてはどうか?でした。

大好きなお酒とこれまでの経験を活かして、人の人生相談に乗る活動です。旅行しながら居酒屋へ行ってやるのもよいのでは?など、想像が広がりました。

自分ができることが、地域課題の解決につながる

まちづくりにおけるスタートアップとは「地域の課題を解決するような取り組み」という話をしました。では、人生相談バーテンダーはどうつながるのでしょうか。皆さんから出てきた地域課題と照らし合わせてみます。

つながりがなくなっているという課題については、居場所づくりにもなります。空き店舗が多いという話もあり、場の活用にもつながるかもしれません。

自分が誰であるのか、何を知っているのか、誰を知っているのかを洗い出す。そして人と対話することでアイディアが広がり、自分ができることや想いが思いもよらぬところで、地域の課題解決につながることが分かりました。

参加者の方々から、こんな前向きな感想をいただきました。

「自分の活動を振り返ると、実はやっていることがあったと気付いた」「自分にもできるのではと思えるようになった」「地域の課題解決は自分が持っているものからアプローチができるとわかった」などなど。

次回までの宿題は、マンダラートを完成させることです。続いて、より一歩を踏み出すために「人を巻き込む方法」などについて触れていきます。

また今回、千葉ニュータウンケーブルテレビのらーばんねっとさんに取材をしていただきました。印西市で市民発の新たな挑戦は、まちぐるみで応援されています。

私たちIRODORIも理念に据えている「誰もが持っている自分にしかない色を活かした、
多様な挑戦ができるまちをつくる」を推進するために、地域で暮らす多様な人たちの挑戦を、引き続き支援していきたいと思います。