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希望はありますかというよりも、私たち自身が希望を見つけていかなければいけないのかなと思います。|『問題はロシアより、むしろアメリカだ 第三次世界大戦に突入した世界』


フランスの歴史人口学者・家族人類学者であるエマニュエル・トッドと、池上彰のウクライナ戦争を起点にした、それを取り巻く各国、主に現在のアメリカについての対談集。

アメリカはこの戦争から抜け出せないのではないか、とも言えると思います。アメリカがこの戦争から抜ける、それはアメリカにとって「ウクライナへ供給する兵器の生産力が追いつかなかった」という点で、「負け」を意味するからです。

『問題はロシアより、むしろアメリカだ 第三次世界大戦に突入した世界』

ウクライナを支えている、アメリカは昔のアメリカではない、かつてのアメリカ一強状態ではないのではないかと分析する。

1番は、アメリカの兵器の生産力だ。

アメリカのその生産面における弱さに対して、いま、「中国の参加」ということが明らかになってきたわけです。
 グローバル化した世界のなかで、例えば工作機械の分野では、中国は約30%を占めています。一方で、日本は約15%、ドイツもだいたい同じ約15%。イタリア、アメリカに至っては7%、8%なんですね。
 要するに、これは仮説ですけれども、アメリカやNATOの国々が負けるという可能性も、そこには見えてくるわけです。

『問題はロシアより、むしろアメリカだ 第三次世界大戦に突入した世界』

アメリカ自身の生産力は低く、日本やドイツに頼ることになるのではないか、とドット氏は語る。

そして、ロシアは本当に孤立しているのか?
家族人類学的な見地から分析している。

つまり、アメリカやイギリスなどのヨーロッパ諸国のように核家族構造で、自由主義で個人主義で、相続は親の遺言で決定するというところと、一方でロシアのように共同体家族構造で、権威主義的でかつ相続はきょうだい間で平等という価値観があるところの、その中間に日本は位置します。

『問題はロシアより、むしろアメリカだ 第三次世界大戦に突入した世界』

家族構造が違えば、社会のあり方が違う。
アメリカ一強の世界が終わったら、世界はどこへ向かうのか。

たとえば、私はヨーロッパが、家族システム的な面から考えても、世界から孤立するのではないかと考えて、指摘しました。ヨーロッパはその家族システムとしては、双系制で核家族構造です。ただし、これは世界で言えば約25%程度なんですね。
 一方で、世界の大半は父系制の家族システムであり、権威主義的な家族構造。そのような国が70%を超えるわけです。そういった意味でもヨーロッパは注意するべきだと私は言ってきたんですけれども、いまの状況を見ると、ますますそのような「ヨーロッパの孤立」みたいなところが浮かび上がってきていると思います。

『問題はロシアより、むしろアメリカだ 第三次世界大戦に突入した世界』 

フランス人の歴史人口学者・家族人類学者、エマニュエル・ドット

著者は エマニュエル・ドット

歴史人口学者・家族人類学者。1951年、フランス生まれ。家族構成や人口動態などのデータで社会を分析し、ソ連崩壊などを予見。主な著書に『我々はどこから来て、今どこにいるのか?』『第三次世界大戦はもう始まっている』など

『問題はロシアより、むしろアメリカだ 第三次世界大戦に突入した世界』

池上彰

ジャーナリスト。1950年、長野県生まれ。NHKの記者やキャスターを経て、フリーに。名城大学教授、東京工業大学特命教授。主な著書に『世界史を変えたスパイたち』『第三次世界大戦 日本はこうなる』など

『問題はロシアより、むしろアメリカだ 第三次世界大戦に突入した世界』

出版社は 朝日新聞出版

掲載誌・レーベルは 朝日新書

発売 2023年06月


戦争以外の話の方が興味深かった

今回、出版社が朝日新聞出版ってことで、その辺は少し解釈に加味した方が良いのかな、と思いますが。

元々読もうと思ったのは『ウクライナ戦争の嘘-米露中北の打算・野望・本音』を読んだ時に、エマニュエル・ドット氏の『第三次世界大戦はもう始まっている』の話題が出ていたから。

ロシアを代表する国際政治学者のドミトリー・トレーニンや、フランスの歴史人口学者エマニュエル・トッドも、今回の戦争に関しては、ミアシャイマーと同じような見立てをしています。彼らに共通するのは、「自由と民主主義を守る戦い」といった価値観をひとまず置いて、あくまでもリアルな「力と力の均衡」から現在の状況を見ようとしていることです。

『ウクライナ戦争の嘘-米露中北の打算・野望・本音』

で、『第三次世界大戦はもう始まっている』を読めば良いのに、池上彰さんと対談しているものだから「池上彰、抜け目ないな!」と思いながら今回この本に飛びついてしまったわけです。

タイトルや、内容もほぼウクライナ戦争を中心に語られているのですが。

エマニュエル・ドット氏本人が歴史人口学者・家族人類学者で故に政治的や軍事的に語られるというよりは(語ってはいるけど、あまり信用し過ぎてくれるなという空気を感じる)、アメリカを中心とした世界の社会のあり方を分析しているように感じます。

特に興味深かったのは、出生率の話題。

実際に出生率というのは、いまある人口が再生産していくためには「2・1」必要だと言われています。けれども、日本や中国のように「1・3」とひじょうに低い国々もありますし、ロシアは「1・5」、その敵国であるアメリカも「1・6」なんですね。

『問題はロシアより、むしろアメリカだ 第三次世界大戦に突入した世界』

日本の出生率ばかり気にしていたけど、先進国はどこもそんなに出生率高くなかったのね!

将来的に日本の人口が少なくなったら、日本人は海外へ出稼ぎに行ったりするのかしら…と思ったけど、安直な考えだったのかも。

あとは、白人種の人をどこか一括りに考えていたけど、アメリカやイギリス等のアングロサクソン系とロシア等のスラブ系は民族としてかなり違う、というのも(聞いたことはあったけど)今回の本ではっきり見えたかも。

やっぱり文化や戦争を“分析する”となると、どこかドライだったり、偏ったり見える部分もあるかもしれませんが。

歴史人口学者・家族人類学者であるエマニュエル・トッド氏のポロッと出てくる情報が興味深かった本でした。


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