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それでも、ウクライナに〝正義の戦い〟を続けさせるのか|『ウクライナ戦争の嘘-米露中北の打算・野望・本音』

※戦争に関する内容の本なので、不快にさせてしまうことがあったらすいません。あくまで個人的な話ですのでご容赦ください。

戦争は残酷で残虐なビジネスである。
為政者が愛国心や、正義感で人々を煽り、その裏でソロバンを弾いているようなのが、私の戦争のイメージだ。

犠牲になる人と、利益を得る人が違う。

だからこそ、犠牲者を増やすな、と民意として主張することも大事な一方で、感情に引きずられることなく冷静に何が起きているかを把握することも大事だと思ってる。

この本はNHKワシントン支局長の経験を持つ外交ジャーナリスト・手嶋龍一と、外務省のラスプーチンと呼ばれる元外務省首席分析官であり在ロシア大使館に勤務していた経験のある佐藤優の、ロシアのウクライナ侵攻以降続く戦争に対する対談形式の書籍である。

佐藤 ウクライナは、ソ連が崩壊した後の1991年12月28日に独立国家となり、ロシアとも西 側諸国ともバランスを取る中立政策を標榜して出発しました。しかし、実際には、その時々の政 権は、ロシア寄りになったり、EU(欧州連合)に軸足を置いたりと、揺れ動いてきた。

手嶋 ウクライナのヤジロベーといわれる現象ですね。 

佐藤 結局、ここ30年もの間、一つの国としてまとまることができませんでした。独立時に5200万人だった人口は、今回の開戦時には4400万人程度まで減少していました。西欧などへ 人口が流出していったことを窺わせています。とりわけ高等教育を受けた労働人口の多くが外国 に活路を求めていきました。ウクライナ戦争の前に、すでに「破綻国家」に近い様相を呈していたのです。

手嶋 いま「一つの国としてまとまることができなかった」という指摘がありました。第2章で、ウクライナという国は、ロシアに近い「東ウクライナ」、首都キーウを中心とする中間地帯、反ロシア色が濃い「ガリツィア」の三つに分断されている、その実情を紹介しました。加えて、軍の統制も取れていない。それがウクライナという国の素顔でした。

『ウクライナ戦争の嘘-米露中北の打算・野望・本音』

手嶋 超大国アメリカとしては、民主主義と相いれない価値観を持つ「ブーチンのロンア」と直に戦争を構えなくても、ロシアの国力をおおいに殺ぐこととができると思い至ったということですね。

佐藤 しかも、アメリカが現地に送っているのは兵器のみで、自らの将兵の血を流すことはありません。戦争で死ぬのは、両軍兵土とウクライナの民間人だけです。誤解を恐れずに言えば、アメリカは、ウクライナをけしかけて戦わせることで「ならず者」ロシアの弱体化を実現することができるわけです。フランスの歴史人口学者であるエマニュエル・トッドは、「ロシアに対する経済制裁によって、ヨーロッパ経済、とくにドイツ経済が麻痺していくととについても、ひそやかに満足感を昧わっていることでしよう」と『第三次世界大戦はもう始まっている』(著・エマニュエルトッド、翻訳・大野舞、2022年、文春新書) のなかで指摘しています。ドイツはウクライナ支援のための軍事支出を増やさなければならないのみならず、ロシアから得られなくなった天然ガスに相当するLNG(液化天然ガス)をアメリカから高い値段で買わなくてはなりません。との戦争によってドイツが弱体化するというトッドの指摘は鏡いと思います。

『ウクライナ戦争の嘘-米露中北の打算・野望・本音』

ニュースでは語られない、それぞれの国の事情、文化、思惑の一端を知ることが出来る1冊。


専門家、と言える2人の共著

著者は 手嶋龍一

外交ジャーナリスト作家。9.1同時多発テロ事件ではNHKワシントン支局長として中継を担う。ハーバード大学フェローを経て2005年ににNHKより独立し、インテリジェンス小説『ウルトラ・ダラー』『スギハラ・サバイバル』がベストセラーに。近著に 『武漢コンフイデンシャル』の他、佐藤優氏との共著 インテリジェンスの最強テキスト」などがある。

『ウクライナ戦争の嘘-米露中北の打算・野望・本音』

佐藤優

1960年東京都生まれ。作家・元外務省主任分析官。英国の陸軍語学学校でロシア語を学び、在ロシア日本大使館に動務。2005年から作家として活動。著書に『国家の罠』『自壊する帝国』『私のマルクス』『修羅場の極意』『ケンカの流儀』『嫉拓と自己愛』などがある。手嶋龍一氏との共著に『独裁の宴』『米中衝突』『日韓激突』『公安調査庁』がある。

『ウクライナ戦争の嘘-米露中北の打算・野望・本音』

手嶋龍一さんは初めて読みましたが、佐藤優さんは過去に何冊か読んでいます。

最初は西原理恵子さんとの共著。
どれが最初だったかな…ナンバリングがないからわからない…

佐藤優って、誰?って状態で読みましたが。
今思えば、西原理恵子さんは割と知り合いとか、友達の為に共著を出したりする傾向のある方なので、この本もそうだったのかな、と。(とはいえ、佐藤優さんが出所してから作家として活動し始めてしばらく経ってるけど)
2人のテイスト違いすぎる(笑)。

しかもこの共著の出版社は新潮社。
中瀬ゆかりさんが絡んでるのか……?

その後、池上彰さんとの共著も読んでます。

何冊か読んでいますが、この本が1番印象的。
本職の人の情報収集の力は凄いな、と。

ちなみに、佐藤優さんの著作の1部はKindleUnlimitedでも読むことが出来ます。


出版社は 中央公論新社

掲載誌・レーベルは 中公新書ラクレ

発売 2023年06月
シリーズ本として『イスラエル戦争の嘘』がある。


とにかく、知っている人の話が聞きたかった。

ロシアがウクライナに侵攻して、戦争が始まって。
とにかく佐藤優さんの本が読みたかった。
 
佐藤優さんを信用している、というよりは私が彼しかロシアに関するスペシャリストを知らなかったからである。

少なくとも読んだことのある人の本なら、今までと論調が違えば察することが出来るかもしれないし、こういうタイミングは(コロナの時もそうだったけど)いたずらに不安を煽るような得体の知れない“専門家”が増えるのもわかっていたからだ。

大前提として、言うまでもなくこの戦争は他国に侵攻したロシアに非があることは明白なんですけど。

それを踏まえて。

私のこの戦争に関する疑問点は2つ。

1、何故、ウクライナはロシアと戦うことを選んだのか
2、何故、アメリカとNATOは武器を供与することを決めたのか

1、はロシアが侵攻してきたから、と言えばそこまでだが、それでも戦争になった当初のロシアとウクライナのGDPは10位と50位以下、とかなり差があった。
戦争にはお金がかかる。勿論、お金の有無やその他の力量をこれだけで計るのは浅はかかもしれないけど、単純に国力に差があるように思えた。
他国に助けを求めるものだと思っていたが、戦うことを選んでいた。

2、に関しては、私はてっきり諸外国は仲裁にはいるものだと思っていたからだ。
思惑があって侵攻してきたロシアと、今正に銃を突きつけられた状態のウクライナに「仲良くして」というのは無茶な話だ。
しかし、諸外国はそれを止めに入るのだと思っていた。実際はウクライナが戦うことを支持していた。

純粋に、なんて残酷な、と思った。
世界はウクライナの人たちを守るのではなく戦うことを支持するのか、と。

「話し合いで解決できる、なんて平和ボケしてる」と言われるかもしれない。
でも、当事者ではないからこそ出来ることはあると思っていた。

この本は、私の上記の問いに答えてくれている。
思った通りのこともあったし、知らなかったこともあった。

全てを鵜呑みにすることは出来ない。
そして、知識を元に今ある戦争を分析する、ということに嫌悪感を抱く人もいるかもしれない。
けれど、考える一助にはなると思う。


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