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そこで提案なのですが、本当に結婚生活を送ってはいかがですか|TL小説『侯爵令息の不本意な新婚生活』

※この作品はTL作品です。

ザクセン帝国の名家・アバロフ侯爵家の嫡子エルヴィンは半日前に皇太子の命で結婚をした。

相手はウルティマ王国とザクセン帝国の連合国軍に敗れ、地図から姿を消したリンドール大公国の伯爵令嬢レティアナ。

結婚をしたものの、エルヴィンはこの結婚を持て余していた。

それは、政略結婚で冷え切った関係だった両親が原因だった。父の浮気をきっかけに母は出ていき、父は浮気相手を後妻に迎えた。
それぞれの相手と幸せに暮らし、いがみ合っていたはずなのに現在は友好的な関係の両親だが、腫れ物に触るように扱われる自分だけが残った。

容姿も、家柄も、何もかも持っているエルヴィンであったが、どうしても結婚や家庭というものは鬼門であった。

だから、初夜の寝室で待つレティアナに結婚という義務は果たしたのだから、適度な距離を保ち相性を見極めるのはどうだろう、と持ちかけたのだ。

「ほとぼりが冷めたら婚姻の無効を申し立てればいい。殿下も実際に生活してみて駄目だったと言えば反対はなさらないだろう。きみも望んでいない結婚をするより、そのほうがずっといいのではないか」

『侯爵令息の不本意な新婚生活』

しかし、レティアナはエルヴィンの想像をしていなかった返答をした。

元より政略結婚とはそういうものであり、皇太子殿下の命令での結婚を変に取り繕うのは悪手である、と。

「つまり、取るに足らない亡国の貴族にすぎないわたしに、殿下はおそらくそれ以外の価値を見出していらっしゃる。であれば結婚をお命じになったのも単なる思い付きなどではなく、きちんとした理由がおありなのでしょう。それを、ほとぼりが冷めるまでやり過ごすといった方法でうやむやになさるのは得策とは思えません」

『侯爵令息の不本意な新婚生活』

そして、レティアナはこう続けた。

「そこで提案なのですが、本当に結婚生活を送ってはいかがですか」

『侯爵令息の不本意な新婚生活』

そうして、2人の離婚を前提とした結婚生活が始まった。

※この作品はKindleUnlimitedで配信しています。(2024-05-21現在)


まだ作品数は多くない作家さんの作品

 著者は ひなのさくらこ
TL小説を中心に活動されている作家さんのようです。

出版社 くるみ舎

掲載誌・レーベル こはく文庫

発売 2024年04月
既刊2巻。完結済。
下巻である2巻もKindleUnlimitedで配信中。(2024-05-21現在)


ティアの人柄にみんなが惹かれていくのが楽しい

レティアナは実は、帝国がずっと探していた消息不明の公女・フロレンティアなのですが。

ずっと大公国では身を潜めて暮らしてきたものの、後宮育ちのフロレンティアは機転も利くし、大胆。

初対面のエルヴィンにもグイグイ話を突っ込んで聞くし、彼の家族の信頼もどんどん得ていく。

そんなフロレンティアの人柄に侯爵家の人々も、そして仮初めの夫のはずであったエルヴィンも早々に惹かれていって。

読んでて、その過程がとても楽しかったです。

こはく文庫って、尺が短く、物足りないイメージの強いレーベルだったのですが、上下巻なのでボリュームもたっぷりで大満足。

何よ!こはく文庫!やれば出来るじゃない!

最終的にはフロレンティアに惚れ込み過ぎて、素敵な貴公子だったエルヴィンが、縋りつくわ、皇太子に楯突くわで面白かった。

この作品、是非コミカライズも見てみたいな。
きっと向いてると思うし、読んでみたい。
こはく文庫のコミカライズ事情は知らないけど、どうですかね? 是非。


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