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最後まで握っている力がなければ、いかに大事なものでも手を開いて落ちるに任せるしかない。|小説『タマリンドの木』
『タマリンドの木』は池澤夏樹による恋愛小説。
生きていく場所が違う2人のラブストーリー
東京の一流企業で船舶用のエンジンの営業をしている野山は、タイの難民キャンプで働く樫村修子と出会う。
2人が出会ったのは、野山勤める企業の会議室。
企業が新聞社と協賛で、難民キャンプに小型汎用エンジンを寄付する、という企画の為だった。
野山はそのエンジンを選定する役目として。
修子は受け取る側の難民キャンプの現場の人間として。
小さな出来事を積み重ね、2人は惹かれ合う。
そして、修子の短い日本滞在が終わろうとした時に、野山は修子に「日本で一緒に暮らして欲しい」と告げる。
しかし、修子は「わたしは本当にあなたが好き」と言いながらも
「でも、それはやっぱりできない。 辛いけれど、中途半端な答えをしてはいけないでしょ。 今のわたしには日本に戻ってあなたと一緒に暮らすということはできません。 あっちでは目の前にたくさんすることがあって、子供たちがいて、毎日に手応えがある。 気持ちが広々となって、とっても自分らしくやっていける。 本当に運がいいことに、わたしはそういう場所をみつけた」
と、野山の申し出を拒んだ。
答えが出せないまま、別れる2人。
野山は出張の途中でタイに立ち寄り、修子の働く難民キャンプを見に行った。
お互いを思う気持ちは変わらない。
しかし、2人が一緒に暮らす道は、簡単には見えない。
「あなたを捨てたなんて、そんなつもりはないわ。わたしが捨てられたの。あの園庭のタマリンドの木が影を落とす範囲から一歩も外へ出られないわたしが、外の世界を自由 に歩きまわるあなたに捨てられたのよ」
生きる世界が違う2人は、どんな道を選ぶのか。
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池澤夏樹、初の恋愛小説
著者は池澤夏樹
1945年、北海道生れ。埼玉大学理工学部中退。
二十代から世界各地を旅し、ギリシャ、沖縄、フランスで暮らす。現在は、札幌在住。公式サイトは[cafe impala]http://www.impala.jp
1988年「スティル・ライフ」で芥川賞を受賞。詩、小説、随筆、翻訳(英・ギリシャ語)、書評と執筆は多岐にわたる。広く深い文学的教養と理系的知識を土台に、自然と人間の関わりについての示唆に富んだ作品を多く著している。
ワープロ原稿で芥川賞を受賞した初めて作家でもあり、9.11をきっかけに毎日メールマガジンを通じて意見を表明する(『新世紀へようこそ』に収録)など、早くからデジタル・メディアの活用に関心を持つ。2014年からは株式会社ボイジャーと共同で自身の著作の電子アーカイブ化にも取り組んでいる。
主な著書に『母なる自然のおっぱい』(読売文学賞)『マシアス・ギリの失脚』(谷崎潤一郎賞)『ハワイイ紀行』(JTB出版文化賞)『花を運ぶ妹』(毎日出版文化賞)『すばらしい新世界』(芸術選奨文部科学大臣賞)『イラクの小さな橋を渡って』『憲法なんて知らないよ』『言葉の流星群』(宮沢賢治賞)『静かな大地』(親鸞賞)『パレオマニア』等。2003年、著作活動全般について司馬遼太郎賞、「池澤夏樹=個人編集 世界文学全集」の編纂で朝日賞を受賞。
東日本大震災の後は被災地に通い、『春を恨んだりはしない』『双頭の船』『アトミック・ボックス』を執筆。震災をきっかけに日本と日本人について思索したいとの思いから、「池澤夏樹=個人編集 日本文学全集」に取り組み、2014年末から刊行開始。
出版社は文藝春秋
発売は1999年1月
鈴木さんが、オチが現代的、って言ったから
これもきっかけはラジオ『ジブリ汗まみれ』で鈴木敏夫さんが面白いと紹介したから。
恋愛小説として、新しい、と。
(何が新しいかはお楽しみ)
池澤夏樹にとっては初の恋愛小説だそうなのだが……
インパクトがあったのは2人の出会いのシーン。
樫村修子は毛利の横に立った野山の脇をすりぬけるようにして廊下へ出た。 その時、一瞬だけ、野山は爽やかな花か何かの匂いを嗅いだように思った。
匂いから入るのは、あまり女性の感覚ではない、男性的な表現に感じた。
話は基本的に野山の視点で語られ、辻褄が合っているように見えて、たまに飛ぶ。
山あり谷あり、ではない、大人の恋愛小説が楽しめる一冊です。
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