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スタジオジブリ・高畑勲監督のドキュメンタリー作品|映画『柳川堀割物語』

掘割、とは連続的な切土により周囲の土地より低くして水路。

高度経済成長時、水道が整備され、生活用水を各家庭にもたらす為の役割を終え、排水やゴミで汚れた掘割はコンクリートで覆われその役目を終えようとしていた。

ドキュメンタリーの舞台である、福岡県柳川市でも悪臭の原因にもなっている掘割をコンクリートで覆う工事を国の補助を受けて行う計画を進めていた。

そこへ柳川市役所へ異動してきた一人の係長が、掘割を無くしてはならない、共存していくべきだ、と異議を唱えた。

その熱意に迷った市長は、その係長に半年間の猶予を与え、みんなを説得できたら工事の計画を見直すことにした――。

https://filmarks.com/movies/26659


説明しないけど、見れば価値がすぐわかるスタッフ陣

監督・脚本 高畑勲

製作 宮崎駿

多分、ジブリの教科書『天空の城ラピュタ』でこのドキュメンタリー映画の存在を知ったのですが。

『風の谷のナウシカ』で得た収益を作品で還元したい、という宮崎駿監督の意向を受けて、高畑勲監督が以前より興味のあった柳川市のドキュメンタリーを作った、という経緯のある作品。
ついでに、高畑勲監督のお約束で、途中で予算が足りなくなり、『天空の城ラピュタ』の製作が決まる、というとこまでが1ターン。

主題歌 間宮芳生「柳川堀割物語」

撮影 高橋愼二

製作会社 二馬力

配給映画 「柳川堀割物語」配給委員会

公開 1987年8月15日

上映時間 165分


自然を活かした、ここで生きてきた人たちの知恵が詰まった掘割

なぜ、柳川には掘割が細かく、網の目状に張り巡らされているのか。

なぜ、掘割を覆ってはいけないのか。

柳川市は有明海に近く、“潟”のような場所が多い。
諫早干拓事業、“ギロチン”でニュースになった諫早湾もこの近くだ。

水害も多く、掘割が水を溜め込んでくれて、水害を軽減してくれる働きをしてくれているらしい。

それを覆ってしまうと、水の逃げ場がなく、生活圏の多くが水没してしまう、と。

更に“潟”(の近く)なので、粘土層の部分が多く、コンクリートで覆ってしまうと、粘土層が乾燥して収縮し地盤沈下を起こしてしまう。

そして、その沈下してしまったコンクリート部分に水が溜まって水没してしまう、と。

掘割は、この地に生きてきた人たちの知恵の結晶だったのだ。

しかし、掘割との生活は簡単なものではなかった。

みんなで使う水路の為、水を綺麗に保つためのルールがある。

冬には掘割の水を抜き、溜まった泥などを取り除き(泥は畑の肥料になる)管理をしなければならない。

それは1人でどうこう出来るものではない。
共同体として、みんなで協力しあわなければ成り立たない。

以前読んだ塩野七生『海の都の物語』のヴェネチア共和国も“潟”に出来た国だった。

近くにあり、同じ海運業をしていたジェノバが個人単位で事業を行っていたのに対して、ヴェネチアは組織で行っていた。

もしかしたら、その辺はこの柳川市と同じように“潟”という協力しあわなければ生きていけない土地で培われた共同体としての意識から来るものなのだろうか。

とても興味深く、おそらく貴重な映像が沢山詰まったドキュメンタリー映画だったのだと思いますが。

情報量が多い!!多すぎる!!!

高畑監督、凡人の私には2時間40分一気に情報を流し込まれても入り切らないですよ!

中盤あたりから、情報量の多さに溺れそうになりながら観ました。

もう1回観たい、と思う映画ではありましたが……
百聞は一見にしかず、とは言いますが……

ちょっと本にしてもらって、ゆっくり読ませてもらって良いですか? と言いたくなる映画でした……。

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