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あの人は本当に 山の主なんだ|漫画『大蛇に嫁いだ娘』


「傷モノの娘だ 丁度良い お似合いだ」

『大蛇に嫁いだ娘』第1巻

そう言われて、額に傷跡の残る娘・ミヨは、500年は生きていると言われる山の主 大蛇様に供物として嫁ぐことになった。

姿はそのまま、大きな蛇。
食事は動物を丸呑みする。

恐ろしい。
村に帰りたい。

ミヨは大蛇がいない隙に家を飛び出した。

でも。

父は自殺し、母はおかしくなり、村の人々に石を投げられてきたミヨは。

村に帰ることも出来ない。

どこへ逃げているのか、自分でもわからないまま夜の森を無我夢中で走ったミヨの目の前に現れたのは。

「おや」

『大蛇に嫁いだ娘』第1巻

大蛇だった。

あ 私 死んだ

『大蛇に嫁いだ娘』第1巻

食べられる。
そう思ったミヨは。

大蛇の背中に乗せられていた。

「可哀想に大変だったね 夜の道は危ないから気をつけなさい 足もくじいて… 痛いだろう
私がおぶってあげよう さあ帰ろうか」

『大蛇に嫁いだ娘』第1巻

大蛇の背中に乗り、ミヨは家へと帰った。
それからミヨの。大蛇との結婚生活が始まったのだ。


著者の情報が少ない謎の異類婚姻譚

著者は フシアシクモ
本作以外の配信作品はないので、デビュー作品かもしれません。
本作はpixivコミックで連載している作品の書籍化のようです。

出版社は KADOKAWA

掲載誌・レーベルは ビームコミックス

発売は 2021年11月
既刊5巻。連載中。


思い切りが良い、と思った作品。

思い切りが良い。それがこの作品の第一印象。

神と人、もしくは人ではない者と人、の組み合わせは異類婚姻譚として神話の時代から存在する。

特に日本では蛇は神の化身だったりするから、(実際の数の分布はわからないけど)研究対象としても多くあった印象がある。

ただ、現代のエンターテイメントとしての異類婚姻譚は、人ではない者でありながら、(基本的に)人の姿だ。

っていうか、鶴の恩返しレベルでも、鶴は人の姿をしている。
美女と野獣だって、最後は人間の姿に戻る。

この作品の“思い切りが良い”というのは、大蛇は神の化身でもなく(作中、大蛇は「私はただの大きい蛇だ」と言っている。確かに力は強いが超能力的なものはない。)、人の姿になったりもしない。

蛇は蛇のまま、ミヨと夫婦になるのである。

言葉こそ通じているものの、それ以外はまんま蛇である。

おぅ、このまま行くのか…? と思ったけど、最新巻の5巻まで蛇は蛇のままである。
ここまで来たら、最後まで蛇だと思う。

しかも、現在5巻では、2人の間に子どもも生まれ、家族4人(?)で暮らしている。

大蛇は、蛇、という1点を除けば、良い夫である。
その1点が突き抜けているが。

更に2人の間に生まれた娘・イナと、息子・時太郎も、ただの子ども、というわけではない。

イナは人の姿をしているが、中身は蛇の道理を有しているように思える。
反対に時太郎は、マムシという蛇の姿をしているが、中身は人間に近い。

この2人の運命も気になるところ。

その他の登場人物を交えた、因縁のような、呪いのような関係や、種族を超えた不思議な夫婦。

何だか見てはいけないものを見ているような違和感が楽しい作品です。


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