我々は見ている。存分に踠き苦しめ!!|漫画『図書館の大魔術師』
本を読むのは好きですか?
図書館の歴史は古く、日本図書館協会によると紀元前7世紀にはアッシリアに粘土板の図書館があったそうです。
ただし、その頃の図書館は、現在の私たちが知っている図書館ではなく、一部の人が利用する研究施設のようなものだったそうですが。
『図書館の大魔術師』の舞台は魔法があり、人ではない様々な異形の者がいる世界。
ここに出てくる、図書館は場所によって異なりますが、NASAみたいなエリートが集う場所。
“司書(カフナ)”と呼ばれる人たちも、本の管理だけではなく、知識を守護する戦闘もする人たち。
現実世界と同じなのは、主人公のシオという少年が“本を好きなこと”。
シオは貧しい村に産まれ、村の人たちとは違った見た目な為に虐げられていた。
でも、彼の唯一の家族である“姉”は彼を貧しいながらも学校に通えるように支えていた。
――彼が望んでいなかったとしても。
相変わらず学校は楽しいところではなかったけれど、成績は悪くなかった。
そんな時、村に、本の都アフツァックにある中央図書館の司書がやってきて、シオは司書・セドナと運命の出会いをする。
ずっと、物語の主人公が自分の運命を変えてくれると願っていたシオにセドナはこう、鼓舞する。
そして。
シオは。
いじけて、誰かの助けを待つ生き方をやめた。
自分も、あのセドナのような司書になる為に。
それは貧しい村の少年が目指すには、あまりにも無謀な挑戦だったけど。
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謎多き作者
作者は泉光。
配信中の作品は本作他2作。
2作はいずれもジャンプコミックス(『7thGARDEN』は休載中)。うち1作は『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』のコミカライズ(こちらは完結)。
本作は作者初の講談社での連載。
BookLiveのプロフィールは下記の通り。
尚、泉光のWikipediaでは、著作に『図書館の見習い司書』(集英社『ジャンプスクエア』2014年5月号)という作品があった。
ネットで読んだ方の感想を見る限り、本作の前身のような作品のようだ。
しかし、デビューして数年で集英社と講談社で連載、というのは、最近では珍しくないのだろうか。(特に集英社ジャンプは簡単に他社で描かせるイメージがない。レーベルによる? それとも時代が変わった?)
出版社は講談社。
掲載誌・レーベルはgood!アフタヌーン。
既刊6巻。連載中。
架空なんだけど、どこかで見た世界
この作品の魅力は、私の中では大きく2つ。
1、森薫並みの緻密な描き込み
2、舞台は架空だが、主人公・シオが直面する問題はどこか現実の問題を思い出させるものが多い。
あ、ちなみに原作の『風のカフナ』、それにまつわる著者、訳者は架空だそうです。
とにかく、描き込みがすごい。
細かいところまで描き込んでいる。
森薫も相当描き込む方だけど、この作者も物凄い描き込んでいる。
また、ストーリーは民族や、宗教、貧富、階級、男女と様々な問題が盛り込まれている。
特に、主人公・シオにとっては貧しい村で働きながら勉強をし、ただ本が好きで、その情熱だけで努力してきた“司書(カフナ)”だが、同世代の女子の受験者の中には、女子というだけで職業選択の自由がなく、好き嫌い以前に自分の能力で得られる1番上位の仕事が“司書(カフナ)”だった、というエピソードはよく考えられている。
“司書(カフナ)”は憧れの職業でもあるが、女性にとっては“司書(カフナ)”にしかなれない、という妥協の職業でもある。
その1つ1つに、ベストではないかもしれないけれど、ベターな答えを求めるシオの行動に手に汗握るのだ。
6巻まで、息つく暇なく一気に読めます。
心配なのは、講談社青年漫画あるあるで、設定が細かい+連載が長期でストーリーを見失うことです……
いや、でも、面白い。
何者なんだろう。泉光。
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