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友達を見送る時って こういう気持ちなんだ…|BL漫画『はじめて、はじめました。』


僕は27歳の高校生なんです

『はじめて、はじめました。』

通信制高校。
主人公である小石川 鴇は27歳にして高校に通い始めた。

鴇が11歳の時。
まだ母のお腹に末の弟たちがいる頃。
父が突然、帰らぬ人になった。

学生結婚で社会経験がなく、更に妊娠中である母と、その後生まれた弟たちを含む5人兄弟の生活は勿論楽なものではなく。

長男であった鴇は、中学卒業後、すぐに家族の為に働き始めたのだ。

変化が訪れたのは、鴇が働き始めて10年が経った頃。
母は、“小石川のおじさん”と再婚を決めた。

おじさんは両親の 大学時代からの友人で 父亡き後何かと我が家を支えてくれた人だった

『はじめて、はじめました。』

鴇が渡した、末の弟たちの学費を返し、泣きながら謝罪する母。

「ずっと… 今までごめんね
あなたにばかり甘えて寄りかかって 大事なもの沢山犠牲にさせてごめんなさい…」

『はじめて、はじめました。』

「これからはあなたの好きなように生きていいのよ」

好きなように生きる。

それまで家族の為に生きてきた鴇にとっては、あまりにも実感のない言葉だった。

失った時を取り戻すように通いはじめた通信制高校でも、27歳の鴇は周りとの年齢差が大きくなかなか友達も出来ない。

登校日に少し居心地悪く教科書を開いていると

「鴇ちゃん?」
「え…」
「ああ やっぱそうだ」

『はじめて、はじめました。』

声をかけてきたのは、俳優をしている弟・翠の友人、乃南尭良。

鴇は知らなかったが、彼も翠と同じく俳優をしているらしい。

尭良は翠から鴇のことを聞いて、知っていたらしく。

「翠の話しぶりで 兄弟仲良さそうだとは 思ってたけど 想像以上でやばい」

『はじめて、はじめました。』

一人っ子である、という尭良に鴇は

「僕でよければ お兄ちゃんのように頼ってもらっても…」

『はじめて、はじめました。』

しかし、尭良は

「俺 鴇ちゃんには 兄ちゃんより… 友達になって欲しいかも」

『はじめて、はじめました。』

そして、遅くなりながらも学生生活を始めた鴇に、初めて“友達”が出来た――。


配信作品数も多い、ベテランBL作家さんの作品

著者は 暮田マキネ
BL作品を中心に活動されている作家さんです。
私はこの作品が初読みでしたが、主に花丸で活動されている作家さんのようです。

出版社は 海王社

掲載誌・レーベルは GUSH COMICS

発売は 2023年07月
完結済。
尚、電子版の発売日は 2023年08月28日
(※シーモアでは先行で配信しています)


失った時間を取り戻していくラブストーリー

家族の為に早くから働かなければならなかった鴇。

母親の意向で子役として、幼い頃から働いてきた尭良。

2人が失った“当たり前の青春時代”を取り戻すことが、このストーリーの見どころだと思います。

どちらかと言えば、BL作品なのか……? と思うくらい要素は少なめ。

鴇は家族の為に頑張ってきた。
それは、ある意味、鴇の存在意義になっていた。
だけど。

「僕が 自分の犠牲になったって思ってるからかな」

『はじめて、はじめました。』

家族の誰もが。

しかし、突然、存在意義を失ってしまった鴇は何をしていいかわからなかった。
高校に行くことを決めたのも、次男の蒼が特に鴇が高校に行かなかったことに罪悪感を抱いているから。

「僕が家族以外の生きがい見つけたら みんなも安心できると思うから」

『はじめて、はじめました。』

一方の尭良も。
マネージャーである母親の行き過ぎた支配にずっと晒されてきた。

恋愛はおろか、友達と当たり前のように遊んだことすらない。

だから

「やったことないこと いっぱい色々試そうよ」

『はじめて、はじめました。』

純真無垢な鴇ちゃんが可愛い。
そして、これで終わりなの?! と思わなくない作品ではありますが、優しい雰囲気の読後感の良い作品でした。


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