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神よ!あなたは神ではないのか?|漫画『百億の昼と千億の夜 完全版』



理想郷でありながら、最後は悲劇的に海に没してしまったアトランティス。

アテナイに住む哲学者・プラトンはアトランティスに心惹かれ、アトランティスの子孫が住むというエルカシアという村へと旅に出た。

村へ着くと、プラトンが訪れることを“知っていた”という村民たちに出迎えられ、プラトンはそこでアテナイにはない、ガラス、純度の高い油、暗くなると自動で付く灯り等、高度な文明の品々を目の当たりにする。

そして、夜。
長老の娘・ユメが宗主の元へ案内する、とやって来た。

「あなたこそが わたしたち アトランティスの子孫が また 宗主が長い間 待っていた人なのです」

『百億の昼と千億の夜 完全版』 

そして、数多の灯り、オリハルコンに囲まれた宗主の塔に招き入れられたプラトンは、ユメの身体を介して、そこにある窓の中にいると言われる宗主の啓示を受ける。

「あなたは長く旅をする 長く―― 長く―― 長――く―― 一つは過去へ のちには未来へも……」
「過去と未来?!」
「今より過去の旅へあなたをいざなう だが未来へは一人で行け そこで戦士をさがせ」

『百億の昼と千億の夜 完全版』

手を。

宗主の塔の周りを、いつの間にか集まってきた村民たちが手をつなぎ取り囲む。

手を。

差し出されたユメの手をプラトンが取った。

その瞬間。

何かの衝撃がプラトンを襲い、意識を失った。
そして、目覚めた時には。

プラトンは、司政官オリナリエとして。
アトランティスの地に立っていた。

それは、それは長い長い旅の始まり。

シュメール……
モヘンジョダロ――
神よ―― われわれは あなたのしもべ
あなたが この宇宙 この大地を つくられたときより
この先 これからに なにを お望みなのでしょう
(これは抗いがたい運命ですか?)
(もうとりかえしが つきませんか?)
(では来世は? 最後の審判はいつ?)
われわれの 長い祈りを 願いを
お聞きください 神よ………
神よ――
そこにおいでですか――?
――そこに?

『百億の昼と千億の夜 完全版』

萩尾望都による1977年の作品

著者は 萩尾望都。
今更説明が必要な方ではないと思うが本書のプロフィールを引用しておく。

漫画家。1949年、福岡県生まれ。1969年デビュー。
SFやファンタジーなどを巧みに取り入れた唯一無二の世界観を表現し続け、あらゆる方面から圧倒的なリスペクトを受けている。
1976 年「ポーの一族」「11人いる!」で第2回小学館漫画賞 1997年 「残酷な神が支配する」で第1回手塚治虫文化賞マンガ優秀賞、2006年「バルバラ異界」で第27回日本SF大賞、2011年に第40回日本漫画家協会賞・文部科学大臣賞、2017年に朝日賞など受賞歴多数。2012年に少女漫画家として初の。2019年には文化功労者とした。

『百億の昼と千億の夜 完全版』作者プロフィール

どの作品も有名なのだろうけど、私も例に漏れず『トーマの心臓』や『ポーの一族』、『マージナル』などを読み漁った時期があります。(世代的にリアルタイムではないので)。
ちなみに、私は『11人いる!』が大好きです。

原作は 光瀬龍
本作は光瀬龍の同名小説のコミカライズ。
(私は未読です)

小説家。1928年、東京都生まれ。1962年デビュー。
歴史SF 「征東都督府」、歴史小説「平家物語」、 生物学の知識を活かしたエッセイ「ロン先生の虫眼鏡」など、幅広い分野に健筆をった。
「百億の昼と千億の夜」 「喪われた都市の記録』などの長編は東洋的無常観を基調にした壮大なスケールの宇宙叙事詩として高い評価を得た。
1999年逝去。 没後、それまでの功績に対して第20回日本SF大賞が贈られた。

『百億の昼と千億の夜 完全版』作者プロフィール

出版社 河出書房新社
元々の連載は秋田書店 週刊少年チャンピオン

発売日 2022年07月
元々は1977年の作品。
完結済。


壮大なストーリーで読み応えのある作品

正直に言って。
私が、今、この時点でこの作品を理解するのは難しいような気がするんですよ。

生まれる前の作品だしね。
それくらい前になってしまうと、今の感覚で読んでしまって正しく理解出来る可能性が下がる。

この年代の漫画らしく、読み手の読解力も物凄く求めてくるし。

いや、それだけ時間を経ても、充分楽しめるし、面白かったけれども。

SF作品らしい、壮大なストーリーで読み応えがある。
冒頭では、プラトンにしか触れなかったけど、プラトンはやがて戦士――シッタータと阿修羅と共に旅をするようになる。

神と思っていた存在は神ではないのか?
“救い”は本当にあるのか?
我々の存在の意味は?

そんな壮大なテーマを追いながら、主役はプラトンからシッタータ、阿修羅へと流れるように移り変わる。

最後は、何となく、漫画版『風の谷のナウシカ』っぽい印象を受けた。

いや、『百億の昼と千億の夜』の完結が1978年で、『風の谷のナウシカ』の完結が1994年だから、『風の谷のナウシカ』の結末が『百億の昼と千億の夜』の結末に似てる、って言うべきなのかしら。

個人的に“似てる”と思っただけで、影響を受けてるとかはわからないけど。

あ、そもそも読むきっかけは、CLAMPの『聖伝』の阿修羅が、この作品の阿修羅が元だったと聞いたからだけど

似てる。
ストーリーは違うけど、キャラクターはとても似てる。
でも、まあ、わかる。『百億の昼と千億の夜』の阿修羅、カッコいいもんね。
そして、とても印象に残るキャラクターだし。

1回読んだくらいじゃ到底わからない。
2回読んでもわかったか半信半疑な作品ですが。

この壮大なストーリーを描く力量はさすが萩尾望都!な作品です。

価格が高いんですけどね(私はBookLiveで半額クーポン引当てた時に買いました)。それだけの価値は返してくれる作品だと思います。


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