記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

すべては、恋愛至上主義からの解放のために|ライトノベル『契約婚した相手が鬼宰相でしたが、この度宰相室専任補佐官に任命された地味文官(変装中)は私です。 』


スラン王国は“恋愛至上主義”の国だ。
元はと言えば、現国王が王太子の時に、当時の婚約者との婚約を破棄し、自身が見初めた平民の女性と結婚に至った、という経緯からである。

今では、政略結婚は時代遅れ、という認識が広がり、果ては「真実の愛を見つけた」と言えば、特段の罰則もないまま婚約破棄も離婚もする事が罷り通っている。

主人公・クリスティーヌの母親も、5年前に「運命の愛を見つけた」とやらで父とクリスティーヌを置いて家を出ている。

そして、クリスティーヌの婚約者・伯爵令息のフィリップも“真実の愛”を探す為に、見かける度に違う女性を連れ歩いている。

この時の私はフィリップやお父様、そしてこの国の現状に少しだけ・・・・・・ほんの少しだけ 反抗してやりたいと――ただ、そう思っていた。

『契約婚した相手が鬼宰相でしたが、この度宰相室専任補佐官に任命された地味文官(変装中)は私です。 』

気に入らない婚約者にも、この破綻した婚約を結んだままにしている父にも、その“真実の愛”とやらを見つけた! と言って婚約を破断にして一泡吹かせてやる!

と、クリスティーヌは少し大人びた装いで王都で一番の社交場へと赴いた。

そこで、クリスティーヌはカウンターで隣になった10歳くらい年上の銀髪の男・レオンに、酔った勢いで洗いざらい話してしまう。

婚約を破断にする為の、偽装の恋人を探していること。
本当は職業婦人としてバリバリ働くという夢があること。
そして、この国の恋愛至上主義には納得できていないこと。

その話を聞いたレオンは、クリスティーヌにこう持ちかけた。

「では――私と結婚しようか」

『契約婚した相手が鬼宰相でしたが、この度宰相室専任補佐官に任命された地味文官(変装中)は私です。 』

レオンが持ちかけたのは、恋愛結婚のフリをした偽装結婚。
好きな相手が出来たからと離縁するのはナシ。
異性関係じゃなければ好きなことをして過ごしていい。

こうして、価値観と利害が一致した2人は、結婚することに決めた。

そしてクリスティーヌの卒業前夜。
遂に作戦を決行する為に父と兄、そして婚約者のフィリップを集めた。
そしてレオンを招き入れたクリスティーヌは

「私の恋人、レオン様です。私、彼と結婚します!」

『契約婚した相手が鬼宰相でしたが、この度宰相室専任補佐官に任命された地味文官(変装中)は私です。 』

父と兄は驚愕の表情をしている。
――してやったり!と思っていたクリスティーヌだが、父から想像もしていなかった言葉が飛び出した。

「…………さ、宰相閣下っ!!」

『契約婚した相手が鬼宰相でしたが、この度宰相室専任補佐官に任命された地味文官(変装中)は私です。 』

ここで、クリスティーヌは初めて気がつく。
このレオンという男性が、この国で一番大きな領地を有するバスティーユ公爵であり、史上最年少で宰相に抜擢された「鬼の宰相パトリック」その人であることを。

騙された!と思った時には、もう遅い。
クリスティーヌには、この偽装結婚を続ける以外、道はなかったのである。


小説家になろう書籍化作品

著者は 月白セブン
作品は、本作の他、BL作品が1作品と、コミカライズ作品(少女漫画)が1作品が配信されています。
本作は小説家になろう掲載作品のコミカライズです。

出版社は KADOKAWA

掲載誌・レーベルは 角川ビーンズ文庫

発売は 2023年11月
既刊1巻。完結していると思われます。


ライトノベルで正解!だと思う作品

みんな大好き!偽装結婚!
彼のこと好きになっちゃったけど、ううん、あの人は私のことなんて何とも思ってないのよ!

までが1ターンの展開にみんなドキドキでしょ?!

って言いながら、この作品は結婚後、2人は1年近く顔を合わさない。

「お前とは形だけの結婚だ!今後一切、俺にかまうな!」バァン!(←扉を締めた音)

とかでもなく、円満に偽装結婚したはずなのに、全く会わない。

理由は。

忙しいから。

会わない、んじゃなくて会えない。

クリスティーヌも王宮で文官として働き出し、レオンも宰相としての仕事は多忙でロクに家にも帰れない。

そんな中、元々首席で学校を卒業するくらい優秀だったクリスティーヌは、仕事に没頭した結果、昇進して。

同じ家に住んでるはずの夫と再会する。

“宰相室専任補佐官”として。

クリスティーヌは、職場では身分を隠す為にミドルネームのシャルロット、そして母の旧姓であるミュラーを名乗っていた。

まさか1年前に数回しか会ったことのない妻の顔など忘れているだろう。

宰相の補佐官として働いていても、クリスティーヌにそのことを話題に上げないことからも、その推測が間違っていないと思っていた。

が、話題にはしないが、“パトリック宰相”は、やたらと“ミュラー補佐官”を構ってくる。

妻に隠れて、他の女性(実は妻だけど)と親しくしようとしているのか、そして自分を妻とは気が付かないのか、とモヤモヤするクリスティーヌ。

……という、ストーリー。
蓋を開けてみれば、「貴族の顔と名前を全て把握している宰相閣下が妻の顔もわからないなんて、そんなことあるわけないでしょ」って話なんだけど。

そこにクリスティーヌと一緒にモヤモヤ、ドキドキするのが楽しい。

元々、この作品、小説家になろう掲載時はムーンライトノベルズ(TL作品のレーベル)だったんですけど。書籍化に伴い、際どいシーンは削られて女性向けライトノベルとして販売しています(そんなにそういうシーンもないけど)。

ストーリーがしっかりしている作品なので、個人的にはどっぷり楽しめて嬉しい。

ところで、“真実の愛”を理由に罰則なしで婚約破棄してクリスティーヌと結婚したレオンだけど……結婚したら、法律が変わって簡単には離婚できなくなったよね……これは偶然なのかな……いや、まさかねぇ。


この記事が参加している募集

よろしければサポートをお願いします。