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正義というエンタテインメント|『世界はなぜ地獄になるのか』
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本書は、『言ってはいけない』シリーズで人気の著者・橘玲の最新刊である。
「リベラル」とは、「自由な」「自由主義の」「自由主義者」などを意味する英語で、1930年代以降のアメリカ合衆国から広がった用法で、社会的公正や多様性を重視する自由主義のことを言う。
それは本来、差別を無くし、誰もが人権を保障され、自分らしく生きられる社会へ向かっているはずなのに、なぜ、我々は毎日のように炎上(≒キャンセルカルチャー)している、というようなニュースを見ているのだろうか。
リベラルを自称するひとたちは多くの基本的なことを間違えているが、そのなかでももっとも大きな勘ちがいは、「リベラルな政策によって格差や生きづらさを解消できる」だろう。なぜなら、そのリベラル化によって格差が拡大し、社会が複雑化して生きづらくなっているのだから。
「わかりやすい敵」がいなくなると、「闘争」の標的は「無意識の偏見」や「隠蔽された差別」のような、「わかりにくい」ものへと拡張されていく。
成功ゲームでは、自分が成功者であるという証拠(ブランドものや豪邸)が必要になるし、支配ゲームでも、自分が支配する側だと相手に納得させる正統性(肩書など)が要求される。それに対して「美徳ゲーム」は、自分の方が相手よりも道徳的に優れていると誇示する戦略だ。
具体的な物や、他者の同意が必要な「成功ゲーム」や「支配ゲーム」に比べて、比較的明確なものが必要ない「美徳ゲーム」がSNSの進化によって過激になっていく。
不道徳な者を探し出し、「正義」を振りかざして叩くことで、自分の道徳的地位を相対的に引き上げ、美徳を誇示する戦略だ。
SNSはそれを匿名かつローコスト(ただ)で行なうことを可能にした。これで、「正義というエンタテインメント」を存分に楽しめる。 キャンセルカルチャーの社会的・生物学的な背景は、このようにまとめることができるだろう。
SNSは、評判そのものを数値によって可視化するというとてつもないイノベーションを実現した。
本書は、「だれもが自分らしく生きられる」という社会主義の運動がキャンセルカルチャーへと変わっていく現象を、私たちの人間としての習性や、性別、文化などを踏まえながら考察した1冊である。
この本は、あなたが漠然と思っている“何か”をはっきり明文化してくれている1冊かもしれない。
ヒットメーカーの最新刊
著者は 橘玲。
元宝島社の編集者で、作家。
『言ってはいけない―残酷すぎる真実―』が50万部を突破する大ヒット。(すいません、私は未読です)
他の著作の感想はこちら。
https://note.com/iroakg/n/n64fd37a1b7ed
出版社は 小学館
掲載誌・レーベルは 小学館新書
発売は 2023年08月
正直、感想が書きづらい本
正直ね。
書きづらいですよ。
前に進めば頭がぶつかり、後ろに下がれば背中が壁に当たるような本。
ただ、「そう!それちょっと思ってた!」みたいな上手いところを突いている本でもある。
正にインサイトを突かれた感じね。
何だか漠然と「ちょっと変じゃない?」と思っているところを、バッと正確に言葉にしている。
ただ、おすすめ出来るのは、ある程度自分の軸があって、距離感を持って読める方だけかもしれません。
私にとっては、いわゆる、“毒性の強い本”です。
刺激的で面白いけれど、世間の風潮とバランスが取れている内容ではないだろうから。
開けてはいけない扉を覗き込んでみたい方には、おすすめの1冊です。
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