「また 会ったね」|漫画『環と周』
ある日。
環は、中学生の一人娘・朱里が女の子とキスをしているところを目撃してしまう。
家に帰り、その事を夫・周に相談する。
娘の相手は、去年くらいから仲良くしている則本さんという同級生。
家庭にも少し問題があるようだし、最近は朱里の遊びに行く先や服装の変化はその友人が関係しているのか、と暗に口にする環。
しかし、周には妻には言えない秘密があった。
今は、娘を刺激せず様子を見よう。
そう結論付けた夫婦。
だが、思春期の娘と洗濯のことで口論になり、環は則本さんのことを口に出してしまう。
娘との関係は、なんとか修復出来たものの、環は自分の言動を悔んだ。
これからは、そう思って娘を見守る。
そう言った妻を周は抱きしめた。
それは、どこにでもいるような普通の夫婦。
しかし、本人たちも知らない、長い長い時間の中で。
“環”と“周”は、時に友達として、時に人生に深く関わった隣人として、時に戦友として、時に結ばれなかった幼馴染として、その関係を変えながら、共に歩んできた存在だった。
よしながふみによる、オムニバス作品
著者は よしながふみ
本作は、『大奥』完結後の新作。
下記は、講談社モーニングHPの著者紹介ページより。(プロフィールは『大奥』連載中の時のもの。現在は完結)
出版社は 集英社
掲載誌・レーベルは ココハナ
発売は 2023年10月
環と周は輪廻転生なのか?
正直、冒頭のあらすじは「これで合ってるのかなぁ」って感じ。
そもそも、オムニバス形式で、各話時代も関係も違うけど人生に深く関わる“環”と“周”のストーリーなんですけど。
根本的なとこで、「この2人は輪廻転生をしているのか」というところの解釈に自信がない。
冒頭のあらすじは、輪廻転生をしている前提で書いたけど。
名前だけを引き継いで、輪廻転生をしているわけではないのかもしれない。
「また会ったね」を強調しているあたりから輪廻転生している、と解釈したけど。
どう思います?
本作は、よしながふみの同系統の作品としては、『愛すべき娘たち』と同じカテゴリーになりそうな作品ですが(BLではない女性向け作品という意味で)
私は、よしながふみ作品の中でも、この『愛すべき娘たち』が苦手だったので(何と言うか、女の人生のえげつないとこ切り取った感じが凄くて。作品として凄いとは思うものの……って感じ)、この『環と周』の方が好きでした。
が、これは完全な私の好みの問題で。
逆の感想を持たれた方もいます(笑)
でも、私もこの作品で印象に残ったのは、明治時代の女学生のお友達同士である“周”と“環”でした。
こういうパターンのストーリーは、他の作家さんでもよく見るものだけど。
あれなんでしょうね。
「妻」が今のように“立場”ではなく“職業”だった時代の。
(自分では選ぶことの出来ない)配偶者によって女性の人生が暗転も好転もする、というのはドラマチックに仕上がるんでしょうね。
実際に、女学生時代は洋食屋の娘で婿(しかもイケメン)を取る裕福な娘である環と、どうも傾いている気配のする華族の周だったけど。
結婚を経て。最終的に幸せを得ているのは周の方だったりする。
うろ覚えだけど、林真理子の『ウーマンズ・アイランド』に似たような印象の話があった気がする。
西炯子の『初恋の世界』も系統的には同じかも。
本作は、その他も様々な時代で、様々な関係で、深く関わっていく環と周のストーリーが楽しめる、オムニバス作品です。
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