東日本大震災を経験した防災士が伝える、本当に役立つアイテムと使い方

2022年3月11日、東日本大震災から11年目を迎えます。

東北に本社や拠点を置くアイリスオーヤマも、当時大きな被害を受けました。また、当社の社員の多くが被災しました。

今回は当時の経験を活かして商品企画に取り組む、防災用品担当の山崎さんに話を聞いてみました。

山崎さん_プロフィール

山崎 真優子 │ ハードライン事業
2018年に入社し、入社時から商品や販促の企画を行う事業部に所属。現在は防災用品の商品企画に取り組んでいます。
好きなアイリス商品:手回し充電ラジオライト、α化米、リンサークリーナー

今も覚えている、あの日のこと

震災当日

私は、当時中学3年生でした。震災当日は中学校の卒業式、そして、私の15歳の誕生日でもありました。3年間をともに過ごした友人や先生と門出を祝ったあと、家族と誕生日プレゼントを買いに行ったときのこと。

地震の揺れは、突然起こりました。今まで経験したことのない強い揺れで、何が起こったのか分かりませんでした。マンションに帰るとタンスや本棚などが全部崩れていて、「一体何があったんだ」とすぐに状況を受け入れられなかったことを覚えています。

マンションにいるのは危ない、ここで生活するのは難しい、ということで小学校の体育館に避難しました。数時間前までいた中学校の体育館は、ありとあらゆるものが散乱し、天井の照明なども落ちてたようで、避難所としては使用できなかったそうです。

避難生活は、とにかく空腹を我慢する時間が続きました。食事は、1回あたりアルファ米おにぎり1個や、バナナ半本など......。これでもまだ食料がある方で、そもそも配給できない状況の避難所もあることがわかりました。
この経験をしたことがきっかけで「避難時でも我慢せず食事をとれるようにしたい」と思うようになりました。その結果が、現在の防災セットに繋がったと考えています。

ちなみにですが、家族に誕生日プレゼントとして買ってもらう予定だったイヤホンは地震が起きたことにより買ってもらえませんでした......。
避難所に行く前に寄ったスーパーで、無料配布してくれていたロールケーキをもらい、家族に誕生日をお祝いしてもらいました。深夜の避難所で泣きながら食べたロールケーキの味は、今でも忘れられません。

情報源が少ない中での生活

当時、情報源はラジオのみでした。スマートフォンは、充電が切れて使えない状況。中には、区役所に何時間も並んで充電していた方もいました。

とにかく、友人の安否が心配でした。みんなの無事を祈りながら、不安を抱えて過ごす日々を送りました。県外の友達が心配して連絡してくれているかもしれないのに、「大丈夫だよ」の一言も伝えることができなかったことが精神的につらかったです。
今の仕事についてから手回し充電ラジオライトを大切にしているのは、この経験があったからこそなのかもしれません。情報はほんとうに大切です。

山形へ避難

避難所では3日間過ごしました。3日目の夜に祖父母が山形から迎えに来てくれて、祖父母宅へ避難しました。やっと仙台に戻ってくることができたのは、4月の半ばでした。

「被災企業だからこそ、
自分の経験を活かした社会貢献ができるはず!」

この経験をした彼女は2018年にアイリスオーヤマに入社しました。そして、「被災企業だからこそ、自身の経験を活かした社会貢献ができるはず!」という想いから、現在は当時の経験を活かして業務に努めています。

経験を活かすだけでなく、さらに商品を通して防災の大切さを伝えたいと、「防災士」「災害備蓄管理士」の2つの資格を取得しました。

この資格を取得した背景には、被災した経験を活かすだけでは独りよがりな商品になってしまうのではないかという想いもあります。きちんと客観的な根拠についても学び、私自身の経験を掛け合わせて活かすことで、"私だからこそ考えられる防災の大切さ"を伝えられるのではないか、と考えたのです。

実際に、防災士の資格を取ったことで、個人としてどう行動するか、避難所でどう過ごすか、避難生活では何が必要か、を明確に考え伝えられるようになりました。災害備蓄管理士の資格を取ったことで、個人の家だけでなく、企業としてもどのような災害対策や備蓄をしていくか、という知識が身に付きました。

防災士とは?
「自助」「共助」「協働」を原則とし、社会の様々な場で防災力を高める活動が期待され、そのための十分な意識と一定の知識・技能を修得したことを日本防災士機構が認証した資格。※1
災害備蓄管理士とは?
BCP(事業継続計画)の重要な柱として、緊急事態に備え社員や職員の安全・安心を守るために、防災担当者として社内の備蓄管理を行うための資格。※1

※1一般社団法人防災安全協会HPより一部抜粋

そんな私が伝えたいアイテムと、その理由についてご紹介します!

山崎さん_防災グッズ

自信を持ってオススメする3つのアイテム

非常の際には、日常生活を送る中では当たり前だと思っていることが当たり前ではなくなってしまうことが多くあります。しかし、災害時でもできるだけ「当たり前の生活」を送るために、オススメしたい3つのアイテムを紹介します。

アイテム①「防災食(α化米、長期保存レトルト食品)」

非常時でも「普段と同じような」食事を摂れることはとても大切です。「防災食」と聞くと、なんだかあまり美味しくなさそう……。ぼそぼそしてそう……。というマイナスイメージを抱かれるかもしれませんが、何と意外(!)にも、普段食べるご飯やおかずと同じくらい美味しいんです。

さらに、実際にお店をご覧いただくと、種類の多さにびっくりすると思います。非常時に食べるのはもちろんですが、普段の食事でも食べたくなるものが沢山あります! α化米(水またはお湯を入れるだけで食べられるお米)には「ドライカレー」「きのこ御飯」など、豊富な味のバリエーションがあります。アイリスの商品ではありませんが、手軽に食べられるようおにぎりの形状になっている物もあります。
また、長期保存レトルト食品には「肉じゃが」「筑前煮」「豚汁」「デザート」まで幅広く販売されています。ちなみにですが、アイリスフーズで販売している筑前煮は、野菜の食感もしっかりとあり、味付けも絶妙。非常時だけではなく、普段から食べたい味です。

アイテム②「多機能ラジオ(手回し充電ラジオライト)」

スマートフォンが普及した今、意外と忘れがちなアイテムです。
スマートフォンが一台あれば情報収集ができ懐中電灯としても使うことができますが、バッテリーがなくなってしまうと一切使えなくなってしまいます。また、スマートフォンが使えたとしても、非常時には通信が集中し、インターネットに接続しづらい状況になることも考えられます。多機能ラジオがあれば、懐中電灯災害時の情報収集、さらにはスマートフォンの充電もできます。
多機能ラジオを選ぶうえで大切なのは「バッテリー容量が十分か」、「使いたい機能が揃っているか」、「AM/FM両方聞こえるか」です。自分に合ったアイテムを選んで、非常時でもすぐ使えるよう、普段から日常的に使っていただきたいです。

アイテム③「ウォータータンク」

非常時に困ることは「ライフラインの停止」です。特に水の問題は深刻で、飲み水、生活用水の確保は必須です。給水車から水をもらっても、バケツやビニール袋に入れて運ぶと家に着くまでにこぼれてしまいます。またマンション等に住んでいる場合、階段で上まで持ち運ぶのも大変です。
ウォータータンクも種類が豊富です。コックが付いているもの、折りたたんでコンパクトになるもの、水を入れる口が広いもの(口が広い方が水を入れやすいです)、肩掛けのベルトが付いているもの、など。「水が満タンに入った状態で運べる重さか」を重視して選んでみてください。

最後に、伝えたいこと

ご紹介したアイテムは「絶対に必要!」というわけではありませんが、持っていると非常時も安心できます。また、非常時だけではなく日頃の生活の中でも使える物ばかりです。ぜひご自身やご家族で一度試していただきたいです。

例えば、手回しラジオであれば、アウトドアに出かけたときに。防災食なら普段のレトルト食品と同じように食べてみる、など。実際に試してみて、1人1人に合う防災アイテムを選んでいただければと思います。

防災と聞くと、なんだか難しい事のように思われがちですが、楽しみながら少しでも防災を身近なものとして考えていただければ嬉しいです!

商品やサービスに関するお問い合わせ、ご要望はこちらへお願いいたします。


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