自殺の礼儀作法について
この一節はアダルトゲーム『さよならを教えて -comment te dire adieu-』の歌詞であるが、わたしはこの一節を聴いたときに違和感を覚えた。
「なぜいまから自殺するのに上履きをそろえる必要があるのだろう」と思ったのだ。もうこの世とはおさらばするのに、礼儀良くする必要なんてないのに……。
思うに、自殺とはこの世からあの世へと向かう際の儀式であり、自殺する者は自殺を通過儀礼(イニシエーション)として捉えているのではないか。
イニシエーションとは……
であり、あの世の集団や社会において正式な成員として承認されたい、この世で承認されなかった”生”をやり直したいという輪廻思想が表れていると思う。
言い換えれば、「あの世ではいい人生を送りたい」という想いを持っていると思われる。
屋上にそろえた白い上履き
きれいに結ばれた縄
まっすぐな切り傷
多くの空き瓶
どうかあの世ではいい人生を送って欲しいと思う。
斯くいうわたしもこの世で承認されなかった人間だ。希死念慮が強まるとゴミだらけの部屋を片付けはじめるのは、きっとわたしも死に対して特別なものを感じているからだろう。でも結局、部屋を片付けるとスッキリしてしまい希死念慮が薄らいでいくのだが……。
わたしが死ぬとき、どのようなかたちで死にゆくのだろう。
どうか、あの世で上手くやっていけるように礼儀正しく、美しく逝けたらと思う。
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