メイ

初夏
すべらかな白い二の腕をはしる
幼い溜息が屋根の上にのぼって
ミント・グリーンを街に降らせた
静寂ほど騒がしいものは他になく
サンダルに溜まった透明を濁らせる
ゆれる白昼夢
そう思っていたものこそが世界
かつて誰かに背中を刺された人が、愛に名前をつけた
そのときからずっと私の幻肢痛は消えない
唇に拒まれたままの声は
死にかけの昆虫のように脊髄の周りを回っている
足裏を青が脈打つ
生命は皆、何かを裏切っている
薄めた夜を今日と呼んで
知らない人間を思い出と呼んで

そして、朝を迎える

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