夕と白雪

写真を撮ろうと思っていたのに、てのひらが冷気に押されてポケットに戻ってしまった

冬は沈黙が一番うつくしく歌う

重力の片隅でおどる白は視界を甘く満たすのに

口に吸い込んだとたん、咽をひっかいて咳をさそう

とおく、彼らの故郷に

いとしい人のおもかげのような朱がさす

「ああ、君らは春からきたんだね」

その奥に冬をかくした、甘く、やわらかなかたちに

薄紅をのせて

夕は春の夢をみせる


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