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「最近の若者は飲み会に参加しないね」と言ったから多分私はもうおばさん。

みなさん、最近飲み会行きましたか?私は行きました、職場の懇親会に。


梅雨の始まり

なかなか始まらなかった東京の、梅雨の始まりにふさわしい、重苦しい曇天と身体にまとわりつく湿気。
分厚い雲が、低く下がってきて、都会の高層ビル群を飲み込みそう。そのまま私のオフィスビルも飲み込んで、木っ端微塵にしてくれ。
オフィスに着いてもなおびしょびしょに濡れているロングスカートが、ふくらはぎにぴったり貼りついている不快感。
こんな天気、ただでさえ偏頭痛もひどくて気分も落ちこむって言うのに、懇親会て。いったい誰が懇親する気になるって言うの?そもそも懇親とは‥?
息を吐くように文句が口をついて出てくるこういう日は、一歩も外に出ず引きこもって在宅勤務してたかったんです。
だってオフィスに来てみたって誰もいないじゃないの。

スーパードライな私の職場

他のnote記事でも散々書いてますが、私は大学卒業後、職を転々とし、一時ブラック企業での社畜→1年間ニートという暗黒時代も経て、現在の安住の地にたどり着いたのですが、良くも悪くもとってもドライ。
自由に在宅勤務できるので、全然オフィスに来ない人もいる。もうしばらく顔を見てない人もいる。
私はというと、ずっと在宅勤務していると意識が自分自身に向かってしまって、ただでさえ低い自己肯定感が限りなくゼロに近づいてしまうので、頻繁に(と言っても週2~3日ですが)出社するようにしています。仕事帰りに銀座のデパ地下で流行りのスイーツを買って、都会のOLっぽさを演出しながら、観光客で混みあう銀座線に颯爽と乗り込むのが、出社する日の唯一の楽しみです。
職場の飲み会は無いです、基本的に。子育てしている女性が多い職場、というのもあるでしょうが、根本的に他人のプライベートに立ち入らない風潮があります。年齢とか結婚の有無とか、入社して2年弱経ちますが一度も聞かれたことがない。
だからこちらも推測でしかないけど、恐らく私と同年代か年下と思しき女性の同僚が2,3名いるんですが、彼女たち、頑なに飲み会に参加しない。
私、常々その理由を考えているんです。実は結婚してて子供がいるのかな、とか、すごいプライベートの予定が詰まってて、会社の飲み会に来ている暇が無いのかなとか、逆にお酒や飲み会の雰囲気が苦手なのかな、か。
まぁいつもたどり着く結論は、若人がほとんどおらず、おじさんとおばさんが大半を占めるこの職場の飲み会に行ったところで、たいして楽しくもなければワクワクするような出会いも無いし、飲み会に行かないことにより出世できないとかそういう仕事への支障も何も無いから、結局「なんとなく飲み会めんどくさい」が勝つのかな、と。

スーパーウェットだった銀行員時代

私は職を転々としてきましたが、社会人人生一発目の職場である銀行は、一応5年も勤めました。(ドヤァ)
私の社会人としての人格はそこで形成されたと言って過言ではないのですが、とにかくウェットでした。いわゆるJTC(ジャパニーズトラディショナルカンパニー)です。

高頻度で開催される飲み会は強制参加で、特に1年目は、みんなが座りたがらない上席の隣に着席し、お酌と昔語りの聞き手を担う。もしくは末席でほぼ店員のような動きで先輩たちに飲食物を供給する。もしくは内輪ネタに徹した漫才をする。のいずれかを強制されられていました。当時私はこれらの三役を「嬢」「店員」「芸人」と勝手に脳内で呼んでおり、私は主に「嬢」を得意としていました。
時代錯誤も甚だしいですが、社員旅行(笑)とかもありました。

当時はしんどいなと思っていた一方で、自分で言うのもなんですが清濁併せ呑むタイプの私は、それなりに役割をこなしていましたし、まぁ今となっては良い思い出です。

会社員としての人格形成がなされるであろう、社会人の最初の5年間をそのような環境で過ごしてきた私の辞書には、「誘われた飲み会を断る」という言葉は存在しません。

いわんや、現在の職場の飲み会では、会社からカンパが出るか、上司がほとんど支払ってくれるので、高確率で1銭も払わずに飲み食いできる。参加しない理由がどこにあるだろうか、いや、無い。と思わず高校生以来の漢文が飛び出しました。(正しいかはさておき)

いざ、懇親会

懇親会に話を戻しますが、結局オフィスには私しか出勤しませんでした。
いつもよりすこし早めに終業打刻をして、懇親会会場のある東京駅まで、ひとりトボトボ向かいます。雨上がりのアスファルトの上を、アホみたいにレインブーツのゴム底でキュッキュと踏みしめながら。あー、ダサ。知り合いに鉢合わせしませんように。
懇親会会場に一足早く到着していた同僚達に後から聞けば、「雨がひどかったから、夕方止むまで待ってから、直接会場まで来た」ということで、「今夜は飲み会だからオフィスに出社しよう!」と張り切って朝からオフィスに出社した自分の愚直さに、笑ってしまいました。もはやそんな自分が可愛くすら思えます。

一応「懇親会」と銘打っており、関連部署との合同開催ということで、どこかの部署の多分部長か何かの偉いおじさんが何か挨拶や来期の抱負などを語っていましたが、レストラン内の喧騒にかき消されてよく聞こえない。よく聞こえないもんだから、皆、近くの人との会話や目の前の食事に没頭している。
一応私はちゃんと食事の手を止めて、自分の正面をその話し手に向けて適度な相槌とアイコンタクトで「聞いてますよ」のポーズを取る。
これは銀行時代に習得した所作。いや、一般職の就活だったかな。「聞いてますよ」だけはいっちょ前に。それだけで人は私を勝手に「真面目」「誠実」って解釈してくれる。ま、別に誰も見てないだろうけど。

こんなこと言ったら怒られるかもしれないけど、女なんてそんなふうにしていれば大抵のことは上手くいくと、割と本気でそう思ってる。
でも私はむしろその「女としての上手な立ち回り」みたいなものにずっと嫌悪感を抱いてたから、結局全部中途半端で何も上手くいかなかったんだよね
?だってその「女としての上手な立ち回り」が適切に実行されていたら、今頃めでたく人妻じゃん?
知らないおじさんの言葉を馬耳東風と聞き流しながら、飲みの場の賑やかさと、飲み放題ということで威勢よく摂取したシャンパン(多分安物)でちょっとボーっとしている私は、そんな卑しい自問自答が頭を巡っていることに急に嫌気がさして、延々としゃべり続けるおじさんにくるっと背を向け、おもむろに目の前のナイフとフォークに手を伸ばしました。

帰路につき、独り言つ。

懇親会もお開きになり、東京駅まで一緒に歩いていた同僚と丸の内線の改札前で別れ、そこからいつものように脳内ひとり大反省会の開催です。
私のさっきの発言、失礼じゃなかったかな。さっきのAさんの発言、Bさんの目が笑ってなかったけど、何か気の利いたひと言でフォローすべきだっただろうか。まあでも総じて私の言動は及第点だったのではないだろうか。いや、もう少し私自身の話をしても良かったかな。でもCさんがいつも途中で自分の話に持っていっちゃって途中で遮られちゃうんだよな‥。とか。
これが床に就くまで延々と繰り広げられるのです。

基本的にコミュ障で人間が苦手だけど、だからこそ、人を選ばず、色んな人とコミュニケーションを図ることはとても大事なことだと、私はいつも自分に言い聞かせています。じゃないとどんどん社会とかけ離れて、余計に自分の殻にこもって偏屈になって、そのうち誰とも会話が合わなくなって、ついに本当のひとりぼっちになってしまうのでは、と不安に駆られるから。定期的に、自分の中のわずかな社交性のチューニングを世界と合わせる作業。

って私の心の闇の話になっちゃったから、話の軌道を修正しますが、ましてや職場の人となんて、仲良くなっておくに越したことはないの一言に尽きるのでは、と思っています。飲み会に参加して同僚と打ち解けることで普段の仕事を少しでも円滑に進められるのなら、いくらでも飲み会に参加する。人間社会がニガテだからこそ、必死に人間社会と繋がろうと頑張る。こんなこともはや私にとっては自明の理。

「なのに、最近の若者は飲み会に参加しないね」

えっ、私今「最近の若者は」って言った?
もう一回心の中で復唱してみた。私じゃなくて「ジジイ」という言葉を聞いて真っ先に頭ん中に思い浮かべるような絵に描いたようなジジイが発した言葉としか思えない、どう考えても。あぁ、なんて恐ろしい枕詞なの、「最近の若者は」ってやつは。

↑絵に描いたようなジジイ

しばらくの間、私は駅のホームで電車を待ちながらひとり静かにパニくっていました。

いやでも待てよ、飲み会に参加しない若者を非難する気持ちは一切ない。むしろ潔いとすら思っている。もはや憧れか‥?
「誘われた飲み会は断らない」が体にしみついて思考停止している私と、事情はよく知らないけど頑なに飲み会に参加しようとしない職場の彼女たち。
どちらが正しいとか、もはや私には分かりません。どっちも正しくて、どっちも間違っているようにも思います。
ただ一つ言えることは、いつの間にか価値観や生きている時代さえも私のそれとは明らかに違っていて、そんな"若者"と、"私"の間に、明確な境界線を引いて、分類しようとしている私が居ることに気づいたということです。

そういう分類という行為が、もうなんだか”おばさん”じみているように感じて、ハッとしました。

そこに寂しさとか悲しさ、妬みというネガティブな感情は一切無くて、しみじみと、「あぁ歳を取るということはこういうことか」と、国会議事堂前駅の長すぎる乗り換えをのんびり歩きながら、そう思いました。

明日も仕事頑張ります。おやすみなさい。


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