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白熱のオーディション~『なつやすみの巨匠』製作秘話4

オーディションは地元福岡で

予算についての生々しい話はちょっと後回しにして、先にオーディションの方から話しましょう。

この映画は子供が主役です。知名度など二の次、リアルな博多弁が売りなので地元の子でなければなりません。よってオーディションの地元開催は必須でした。
福岡フィルムコミッションさんに掛け合い、在福の芸能事務所に片っ端から告知をしてもらいました。地方ではなかなかこういったオーディションも少ないため、それなりに反響はあったと思います。

しかしまだまだ告知が足りない。クラウドファンディング同様、オーディションというイベント自体が映画の宣伝になるため、事務所に所属していない一般の人にもガンガン応募して欲しかったのです。そこに原石が埋もれている可能性もありますし。
それ以前にオーディション会場も決まらず焦っていたところへ、高校の同級生だった三浦くんが声を掛けてくれました。
彼は地元テレビ局RKBに勤めており、すぐに上司に掛け合ってトントン拍子に話が進みました。当日は会議室が複数あるワンフロアを丸ごと貸してくれ、応募者のための控え室まで用意してくれました。このスピード感が福岡なんですよね。

さらに昼の情報番組でオーディションの告知までやってくれて、おかげで応募者が急増!さすがテレビ局。先方にとっても久々となる地元のエンタメニュースとあり、WinWinの関係が築けたと思います。RKBさんはその後、製作委員会に加わって下さいました。

地元の原石をさがして

オーディションには200名もの応募があり、書類審査で半数に絞らなければならないほどの盛況ぶりでした。
ほぼ完成していた映画の台本から2ページほどを抜粋し、その場で演技してもらうというやり方です。

さあ主人公シュンに相応しい原石は現れるのか……。せっかく地元で採用するのだから、変に大人の顔色を窺うような子ではなくギラギラした子がいいなあと思っていました。すると……



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いました!
イメージ通りの悪ガキっぽさ。野上天翔くん10歳。エネルギーの塊のような子でした。緊張という言葉を知らないのかというくらい物怖じしない性格で、主人公にぴったりだと確信しました。

さて、実のところ問題はヒロインでして。
物語の設定上、外国人とのハーフである必要がありました。
博多弁ネイティブでハーフで10歳前後の女の子。そんな子が本当にいるのか。もし見つからなければ物語の根本から設計し直さなければならず、内心ハラハラしていました。すると……



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いました!
ロシア人とのハーフ、村重マリアちゃん10歳。
他にもハーフの子は何人かいたのですが、現れた瞬間の華やかさが群を抜いていました。僕としてはヒロインは主人公より背が高いイメージだったのですが(10歳前後って女子の方が高かったりするので)、そんなことどうでも良くなるくらい役にハマっていました。

しかも後で知ったのですが、彼女は実はHKT48村重杏奈の妹だったのです。Yahoo!ニュースで見るまで僕も監督も全く知りませんでした。早速そのことが話題になり、これは追い風が吹いている!と思ったものです。

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残る二人のメインキャラ、タケちゃん役の東倫太朗くん(左)とノブ役の永江蓮くん(右)もイメージにぴったり。この4人が映画の「顔」になるわけです。

事前にワークショップを重ねる

とはいえ彼らは映像の仕事は未体験。いきなり大人のキャストに混ざって芝居をやらせるのは酷だろうと監督は考え、事前にワークショップを開催することにしました。9月のクランクインまでに実践を重ねることで演技に慣れてもらい、楽しさを知ってもらおうと。

我々は予算こそ少ないですが、掛けられる時間はたっぷりあります。そこが自主製作の強みでもあったりするわけです。子供と自主映画って意外と親和性が高いと思います。

イメージソングのMV撮影

7月には舞台となる能古島でイメージソングのMV撮影もしました。
和楽器バンドのヴォーカルとして活躍中の鈴華ゆう子さんが別ユニットの華風月で発表した「あの場所へ」という楽曲をイメージソングに使わせてもらっています。豪華!
さらに現在放送中の『仮面ライダーゼロワン』でバルキリー役を演じている井桁弘恵さんも出演しています。当時まだ高校生、実は後輩なんです。

興味のある方は下記リンクをご覧下さい。MVは完全に子供たち主導で作られたもので、今観てもグッとくるものがあります。

次回は大人キャストについて語ります。

【つづく】

よろしければサポートをお願いします。取材旅行等、今後の作品をより良いものにするための費用に充てたいと思います。