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8月28日(金) ~シュンのひみつ日記

 水無瀬駿、完全復活!
 父ちゃんのおかげだ。その父ちゃんも、またがんばって仕事さがしするらしい。きのうの晩ご飯で、みんなの前で言った。
「この歳になるまで、自分が何に向いとうか考えたこともなかった。漁師になるとが当たり前やったけんね。やけんくさ、ちょっと時間ばくれ。ぜったい次の仕事、見つけるけん。これならやれる、やりたい、っちゅう仕事ば」
 それを聞いた母ちゃんが、陽気に笑った。
「あせらんでもよかよ。その間、私がパートでも何でもやるけん。任せとき」
 父ちゃんが顔を手で隠した。ウソ、泣いてる? 蓮姉も少し泣いてた。

 家族っておもしろいな。いつだっけ、母ちゃんに聞いたことがあった。「家族って何なん?」
 そしたら母ちゃんはこう答えた。
「うんちのにおいが同じになること」
 よく分からんけど、なんかいかにも母ちゃんらしい。

 朝ご飯のあと、蓮姉が部屋に来た。
「佐古さん、きょう退院ってよ」
「ホント!?」
 そういえば蓮姉、ザコ兄とLINEこうかんしてたな。それでか。
 早く行かなきゃ。ちゃんとあやまらなきゃ。二回目も家族がいたのでちゃんとあやまれなかったし。

 母ちゃんにこづかいをもらって、ザコ兄の病院に行った。もう一人でも行ける。廊下を走ってたら、向こうからまつばづえのザコ兄が歩いてきた。
「ザコ兄!」
「おお、シュンやないか」
 足はまだ包帯がぐるぐる巻きになっていたけど、もう歩けるらしい。
「退院できたと?」
「おう。出るのも出すのも早いけんな、おれは」
 よく分からん。
「でもホント良かった。ごめんね、ザコ兄」
「それよりシュン、能古島行くぜ」
「え?」

 そのまま島へ戻ることになった。ザコ兄がまっさきに向かったのは、海鮮料理の店「ざっこ」だった。
「海鮮丼、二つ!」
 ザコ兄はうまそうに海鮮丼を食べ始めた。そんなつもりじゃなかったのに、ぼくまでおごってもらった。
「こればいこれ! よく親と食いよったっちゃん」
 ザコ兄がしょっちゅう島に来てたのは、これを食べるためだったらしい。
「ねえザコ兄、蓮姉とうまく行きようと?」
 ぼくが聞くと、ザコ兄はご飯をふきだした。
「お前、あいつとはまだそげな……」
「まだ?」
「けど、いつかお前、おれの弟になるかもしれんばい」
「ぼくが? ザコ兄の?」
 無理だと思うけど、もしそうなったら楽しいだろうな。そしたら、戸がガラガラと開いて、誰かと思ったら蓮姉だった。
「れ、蓮!」
「え、何でおるとよ」
「こ、ここの海鮮丼がぜっぴんで」
「知っとう。やけん来たっちゃない」
「こら運命ばい! ほら、こっち座って」
 ザコ兄はなんかこうふんしている。蓮姉は仕方なさそうにぼくの横に座った。

「あんた、何おごってもらいようとよ?」
 ひどい。何も言ってないのに、決めつけだ。まあそうなんだけど。
「ここは私が出すよ。ちゃんとおわびもしとらんかったし」
「蓮……!」
 ザコ兄は感げきした顔で、
「いらん! おわびげな、そんなんいらん! けど、たまにはほら、デートとか」
「は?」
「おいシュン、早よ食え!」
 ちゃんと味わいたかったけど、ぼくは海鮮丼をかきこんでさっさと店を出た。それくらいの気づかいはできる。がんばれよ、ザコ兄。

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 ついでに、西の浜に行ってみた。
 きのうの夜から、何となく考えてることがある。ここで、上映会とかできないかな、って。プロジェクターは公民館から借りてくればいい。スクリーンのわくは、木材で組み立てる。無職の父ちゃんに頼めば何とかなるだろう。問題は、スクリーンだ。ただの白い布じゃ意味がない。何かないかな。

「あれ? シュン?」
 ふり向いたら、ノブが立っていた。ちゃんと会うのは、こないだタケちゃんとケンカしたとき以来だ。前の日記を見たら、12日だった。もうだいぶ会ってなかった。
 ノブは前より日焼けしていた。ハワイなんか行ってたんだっけ。ここだって福岡のハワイなのに。
「なんか久しぶりやな」
「ねえ、まだタケちゃんと仲直りしとらんと?」
 仲直りも何も、連絡も取り合ってないし。
「明日、会おうよ。このまま気まずいまんまで新学期来たら、よけいしゃべりにくくなるよ?」
 何だこいつ。急に大人びてきたな。
「それじゃあね。ぜったいやけんね?」

 うーん。正直言うと、ぼくが100パー悪い。「いじめられよったっちゃろ?」とか言ってしまったし。あやまりたい気持ちはある。けど、問題は、素直になれるかどうかだ!

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明日のにっき

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