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「犬の目」

「犬の目」

カメラをもって街を歩くとき、ぼくの目は犬の目となる。実際に体験したことはいないけれど、よく犬は画像を白黒でしか捉えることが出来ないと。ぼく自身、普段は色は見えているし、カメラを持っていたって色は見えているはずだけど、情報として色は記憶に残らないことが多い。カメラを持って歩いていると、自分が行く当てもなく彷徨っている犬のような気持ちになる。

「カラー写真と白黒写真」

ぼくは、あまり、色のバランス感覚に優れている方ではなく、写真を初めて間もない頃、カラーフィルムがカメラに入っていると思っただけで、緊張を通り越して、どうしていいか分からず、あたふたしてしまう。それとは対照的に、白黒が装填してあるときには、自信に満ちているように落ち着く。この違い一体なんなんだろうか。カラーというのは(色の)情報が限りなく溢れて、僕には十分に消化できない。いつもカラーの写真の出来上がりを見ると被写体が絞り切れていない感じの写真になってしまう。つまり、カラーは色情報の対応に追われて、構図どころではなくなって、ちょっとしたパニックに陥ってしまっていた。モノトーンの世界では形と光と影だけを考えればいいから、シンプルに写真と向き合える。

「色を覚えていない」

よく、白黒写真に写っている物を見ながら、色を聞かれることがあるのだが、写っている人の前後1,2秒の行動やその隣の建物の形なんかはよく覚えているのに、たいていの場合色は覚えていない。カラーは僕にとって便利だけど不便なもので、モノトーンは僕にとって不便だけど便利なもの。

この犬の目の感覚は、デジタルカメラで撮っている今でも続いている。

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